01 細胞増殖/細胞毒性測定用試薬

Amino Acid Uptake Assay Kit

Amino Acid Uptake Assay Kit

アミノ酸取り込み検出キット

  • アミノ酸取り込み能力を簡便に検出できる
  • 蛍光顕微鏡、プレートリーダー、フローサイトメーターを用いて検出が可能
  • 製品コード
    UP04  Amino Acid Uptake Assay Kit
容 量 メーカー希望
小売価格
富士フイルム
和光純薬
20 tests ¥17,100 346-09891
100 tests ¥48,200 342-09893

<使用回数の目安> 100 testsあたり、35 mm dish 10枚、96-well plate 1枚

 使用するマイクロプレートの種類によっては測定できない場合があります。
推奨のマイクロプレートの種類と、 結果への影響については FAQ をご参照ください。

キット内容
20 tests BPA Solution
BPA Dilution Buffer
Probe Solution 
35 ×l×1
35 ×l×1
15 ×l×1
100 tests BPA Solution
BPA Dilution Buffer
Probe Solution 
175 ×l×1
175 ×l×1
75 ×l×1

性質

増殖が活発ながん細胞において、アミノ酸はタンパク質や核酸の合成に必須な栄養素です。また、がん細胞では解糖系からのアセチルCoAの供給が低下するため、TCA サイクルの栄養源としてアミノ酸を積極的に利用しています。そのため、がん細胞ではアミノ酸トランスポーターLAT1(L-type amino acid transporter 1) の発現量を増やして、多くのアミノ酸を取り込んでいることが明らかとなっており、新しい創薬ターゲットとして期待されています。
また、がん免疫治療の分野においては、がん細胞の代謝変化だけでなく、免疫細胞の代謝変化も治療の効果に影響を与えると考えられています。例えば、免疫細胞が老化すると代謝系が変化し、がん細胞を攻撃する免疫能力が低下します。そのため、免疫細胞の栄養素取込みを制御し、がん免疫治療の効果を改善する研究も行われています。
アミノ酸類似体(BPA)がアミノ酸トランスポーターを介して細胞内に取り込まれた後、検出用プローブ(Probe)が細胞膜を透過してアミノ酸類似体と結合して蛍光(λex=360 nm, λem=460 nm)を発します。本キットは、蛍光イメージング、プレートリーダー測定、フローサイトメトリーに対応しているため、細胞のアミノ酸取り込み能力を可視化、数値化することが可能であり、アミノ酸取り込み能力の評価やアミノ酸トランスポーター阻害剤のスクリーニングに有用です。

本キットは大阪府立大学の切畑光統先生から技術指導および情報提供をいただき開発した製品です。

 

30秒解説:グルコース取り込み検出キット

再生すると音声が流れます

本解説動画では、グルコース取り込み検出の目的から、従来測定法との比較・実験例を交え本製品の特徴を解説します。

技術情報

この製品でできること

アミノ酸の取り込みを阻害する薬剤を抗がん剤としてスクリーニングしたり、正常細胞とがん細胞の取り込み能力を比較することができます。

既存法との比較

これまで、アミノ酸の取り込みや代謝物の解析に使用されている、RI測定やメタボローム測定と比較して、操作時間を大幅に短縮することができます。

測定方法 装置 実験時間 特徴

Amino Acid Uptake Assay Kit

蛍光顕微鏡
プレートリーダー
フローサイトメーター

60分

アミノ酸類似体で簡便に取り込みを見ることが出来る。

RI測定

液体シンチレーションカウンター 2日

任意のアミノ酸取り込みを見ることが出来るが、使用規制がある。

メタボローム測定 LC/MS 3時間 一度に複数のアミノ酸を測定することができるが、結果解析が困難。

 

キットの操作は3 step

操作は前処理、BPAの取り込み、Probeの取り込みの3 stepで、簡便に測定できます。

分岐鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acid: BCAA)と疾患との関り

がんや老化、糖尿病、肥満などの様々な疾患に分岐鎖アミノ酸(BCAA)の細胞内代謝が関与していることが明らかとなっており、BCAAは主に中性アミノ酸トランスポーター(LAT)を介して細胞内に取り込まれす。本キットに使用しているアミノ酸類似体(BPA)もBCAAと同様にLATを介して取り込まれることが確認されており、本キットを用いてBCAAの細胞内取り込みを評価することが可能です。

がん細胞

近年の研究より、乳癌細胞がLAT1を介してBCAA の一つであるロイシンを大量に取り込むことが明らかになっています。BCAAを取り込むトランスポーターLAT1は、新たな乳癌治療薬のターゲットになることが期待されています。
Saito, Y., Li, L., Coyaud, E. et al., ”LLGL2 rescues nutrient stress by promoting leucine uptake in ER+ breast cancer.”, Nature2019, 569, 275.

 

細胞老化

細胞はX線照射により、DNAダメージやROSの発生を介して細胞老化することが知られています。がん細胞にX照射とLAT1阻害剤を併用すると細胞老化を促進することが明らかになりました。細胞老化において、BCAAの重要性が示唆されています。
Tomoki Bo et al.,”LAT1 inhibitor JPH203 sensitizes cancer cells to radiation by enhancing radiation-induced cellular senescence”, Translational Oncology, 2021, 14, 101212.

 

脂肪細胞

寒冷曝露時における褐色脂肪組織(BAT)では、BCAAを取り込み熱産生に利用しています。細胞内に取り込まれたBCAAはミトコンドリア内で酸化され、BATの熱産生に寄与していることが明らかとなっています。
Yoneshiro T et al., “BCAA catabolism in brown fat controls energy homeostasis through SLC25A44”, Nature2019572, 614.

 

 

実験例 アミノ酸トランスポーター阻害剤(BCH)による評価

アミノ酸トランスポーター阻害剤である、BCH(2-Aminobicyclo[2.2.1]heptane-2-carboxylic acid)存在下で、本キットの取り込み実験を行い、アミノ酸取り込み能力を比較しました。
コントロールと比較すると、BCH存在下では、色素の蛍光強度が低下し、BCHによってアミノ酸取り込み能力が阻害されたことが示されました(左図)。
また、プレートリーダーでもBCH存在下では、色素の蛍光強度が低下し、アミノ酸取り込み能力が阻害されたことが示されました(右図)。

<測定条件>
細胞:HeLa cells
使用培地:MEM (5.5 mmol/l Glucose)
培養条件:1 mmol/l BCH/HBSS (Hanks' Balanced Salt Solution), 37℃, 30 min
検出装置:蛍光顕微鏡 (Ex=340-380 nm, Em=435-485 nm)
検出装置:プレートリーダー (Ex=360 nm, Em=460 nm)

 

さらに、フローサイトメーターでも、コントロール(緑)と比較して、BCH存在下(赤)では、色素の蛍光強度が低下し、
アミノ酸取り込み能力が阻害されていることが示されました。

<測定条件>
細胞:HeLa cells
使用培地:MEM (5.5 mmol/l Glucose)
培養条件:1 mmol/l BCH/HBSS (Hanks' Balanced Salt Solution), 37℃, 30 min
検出装置:フローサイトメーター (Ex=405 nm, Em=425-475 nm)

実験例 アミノ酸トランスポーター阻害剤(T3)による評価

LAT1阻害剤であるT3を添加することによってBPAの細胞内への取り込みは濃度依存的に抑制されました。

使用細胞: ヒト子宮頸がん細胞, HeLa
阻害薬剤: LAT1阻害剤T3 (3,3′,5-Triiodo-L-thyronine)

実験例 分岐鎖アミノ酸 BCAA (ロイシン)による評価

BCAAの一つであるL-Leucine及びLAT1阻害剤であるBCHを添加することで、BPAが細胞内へ取り込まれることが抑制されました。

使用細胞: ヒト子宮頸がん細胞, HeLa
阻害薬剤: LAT1阻害剤BCH (2-Aminobicyclo[2.2.1]heptane-2-carboxylic acid) および L-Leucine

実験例 アミノ酸トランスポーター過剰発現細胞による評価

齊藤康弘先生(慶應義塾大学先端生命科学研究所)よりご提供
LAT-1過剰発現MCF7細胞のアミノ酸取り込みが、野生型に比べ大きく増加しました。

 

参考文献

参考文献を表示する

 
文献No. 対象サンプル 装置    引用(リンク)
1 細胞
SCC7 Cell (マウス扁平上皮癌細胞)
フローサイトメーター

T. Watanabe, Y. Sanada, Y. Hattori, and M. Suzuki, "Correlation between the expression of LAT1 in cancer cells and the potential efficacy of boron neutron capture therapy", 2022, J. Radiat. Res., doi:10.1093/jrr/rrac077.

2 細胞
CD4+ Cells
フローサイトメーター

W. Zhang, X. Cao, X. Zhong, H. Wu, Y. Shi, M. Feng, Y.C. Wang, D. Ann, Y. Gwack, Y.C. Yuan, W. Shang and Z. Sun , "SRC2 controls CD4+ T cell activation via stimulating c-Myc-mediated upregulation of amino acid transporter Slc7a5", 2023, PNAS, doi:10.1073/pnas.2221352120.

よくある質問

Q

推奨する蛍光測定用のマイクロプレートを教えてください。

A

推奨するマイクロプレートは下記の通りです。

社名 製品名 Cat No.
ibidi μPlate 96 well ibiTreat black S 15 ib89626
AGC techno glass EZVIEW Glass Bottom Culture Plate LB 96well 5866-096
Thermo Fisher 96 Well Black/Clear Bottom Plate, TC Surface, Pack of 10 165305

※プレートの種類による結果への影響は、FAQ マイクロプレートの種類は結果に影響しますか? をご参照ください。

Q

マイクロプレートの種類は結果に影響しますか?

A

はい。マイクロプレートの種類によっては測定できない場合があります(参考データ参照)。本キットの使用には、下記のプレートを推奨します。

社名 製品名 Cat No.
ibidi μPlate 96 well ibiTreat black S 15 ib89626
AGC techno glass EZVIEW Glass Bottom Culture Plate LB 96well 5866-096
Thermo Fisher 96 Well Black/Clear Bottom Plate, TC Surface, Pack of 10 165305


<参考:プレート間の比較>

Ibidi 製のプレートと他社メーカーのプレートを用い、アミノ酸トランスポーター阻害剤である、BCH(2-Aminobicyclo[2.2.1]heptane-2-carboxylic acid)存在下で、 HeLa細胞のアミノ酸取り込み能力を検出しました。この結果、推奨するIbidi製の プレートよりも、他メーカーの プレートはバックグラウンドが高く、BCHによる取り込みの阻害を確認することができませんでした。

 

蛍光顕微鏡観察
 


プレートリーダーよる検出

 

Q

BPAはどのトランスポーターを介して取り込まれるのでしょうか?

A

BPAは、LAT1, LAT2, ATB0,+を介して取り込まれることが報告されています(Wongthai P et al., “Boronophenylalanine, a boron delivery agent for boron neutron capture therapy, is transported by ATB0,+, LAT1 and LAT2”, Cancer Sci., 2015, Mar;106(3):279-86)。また、小社では、LAT1の阻害剤BCHや、LAT1の基質であるleucineなどの競合阻害実験でBPAの取り込みが阻害されることを確認しています。

Q

使用実績のある細胞種を教えて下さい。

A

付着細胞(HeLa, A549, HepG2, MCF-7, C2C12, MEF, U251), 浮遊細胞(MOLT4)

Q

BPAは細胞内に取り込まれた後、分解・代謝されるのでしょうか?

A

BPAは安定な構造を有しているため、実験操作内において分解されることはございません。

Q

BPAを生細胞へ取り込ませた後、細胞を固定することは可能でしょうか?

A

プローブが細胞内から漏出するため、染色後の細胞を固定することはできません。

Q

蛍光シグナルの変化が観察されない場合、どうすればいいですか?

A

2点原因が考えられるため、以下のようにすると改善される可能性があります。
①BPA uptake solutionの取り込み量が少ない可能性があります。その場合は、BPA Solutionの希釈倍率を下げてご検討ください。(5~50倍希釈)
②Working solutionが劣化している可能性があります。再度、Working solutionを調製してください。

Q

BPAは細胞内での局在性はありますか?

A

取り込まれたBPAは細胞内に均一に存在します。

Q

BPA uptake solution, Working solutionは保存可能でしょうか?

A

BPA uptake solution, Working solutionは保存できません。

Q

バックグラウンドが高い場合、どうすればいいですか?

A

細胞に取り込まれなかったBPAがウェル内に残存している可能性があります。
HBSSによる洗浄を繰り返してください。

Q

BPAの定量はできますか?

A

取り込まれたBPAの定量を行う事はできません。本キットは、アミノ酸取り込み能力の増減を確認するためのキットとなります。

取扱条件

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保存条件: 冷凍
危険・有害
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