PlasMem Bright Red
細胞膜染色試薬 Red
- 生細胞で使用できる、染色後に固定化できる
- 低毒性で試薬の滞留性が高い
- 培地に試薬を加えるだけ
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製品コードP505 PlasMem Bright Red
容 量 | メーカー希望 小売価格 |
富士フイルム 和光純薬 |
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100 μl | ¥28,700 | 346-09771 |
<使用回数の目安> 100 μl あたり、35 mm dish 10 枚、μ-Slide 8 well 10 枚
性質
細胞膜は細胞の内外を隔てる役割を担っており、細胞の移動や伸張、神経シグナル伝達などの細胞機能に関係しています。
そのため、細胞膜の異常は細胞の状態やチャネル病のような様々な疾患と密接に関連しており、非常に重要なバイオマーカーの一つとして考えられています。
細胞膜染色の手法として、低分子色素を用いる方法は、簡便な操作方法かつ生細胞で使用できるため、最も広く使われていますが、細胞膜への滞留性や水溶性低下等課題があります。
PlasMem Bright色素はこれまでの既存の低分子色素の課題を克服した製品です。PlasMem Bright色素を用いて細胞膜の観察を行った場合、染色後一日以上細胞膜を染色し続けることが可能です。
参考文献)Masataka Takahashi et al., "Amphipathic Fluorescent Dyes for Sensitive and Long-Term Monitoring of Plasma Membranes".bioRxiv., 2020, doi:10.1101/2020.11.16.379206.
マニュアル
技術情報
他社品との比較
PlasMem Bright シリーズでは、既存の膜染色試薬の課題(細胞毒性、滞留性、実験系を選ばない使い勝手)を大幅に改善しました。
また色素のラインナップにより、多重染色時の色素選択が容易に行えるようになりました。
※1 各染色試薬で染色後、神経細胞の形態変化(軸索の凝集)を比較した場合。 |
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細胞膜への長期滞留性
各細胞膜染色試薬で染色したHeLa 細胞を24 時間培養したのち、それぞれの蛍光画像を比較しました。
結果、 PlasMem Bright シリーズは他社製品と比較して長時間、膜に滞留することが確認されました。
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実験例:浮遊細胞を用いた温度依存的なエンドサイトーシス変化の観察
Jurkat細胞の温度依存的なエンドサイトーシスの変化をECGreen-Endocytosis Detection (製品コード: E296)とPlasMem Bright Redを用いて可視化しました。
(スケールバー: 10 µm)
<測定条件>
エンドソーム(ECGreen、緑): Ex. 405 nm / Em. 500 - 560 nm
細胞膜(PlasMem Bright Red、赤):Ex. 561 nm / Em. 560 - 700 nm
<実験操作>
(1) Jurkat 細胞の懸濁液(10% FBS, RPMI)をサンプルチューブに入れ、4 ℃もしくは37 ℃にて30 分間インキュベート
(2) (1) の懸濁液を用いてECGreen 溶液 を1000 倍希釈
(3) 4 ℃もしくは 37 ℃にて30 分間インキュベート
(4) HBSSを用いて、細胞を2回洗浄
(5) PlasMem Bright Red (100倍希釈濃度)を含む培地を添加し、細胞を懸濁
(6) 懸濁液をイメージングプレートに移し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて細胞を観察
実験例:神経細胞の形態と軸索内のミトコンドリア局在観察
神経芽細胞種SH-SY5Y細胞より分化誘導した神経細胞をPlasMem Bright Red(赤)、MitoBright LT Green(緑)ならびにHoechst 33342(青)で染色したところ、神経細胞の形状と軸索内のミトコンドリアの局在が鮮明に観察されました。
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<観察条件>
細胞膜(PlasMem Bright Red、赤): Ex. 561 nm / Em. 560 - 700 nm
ミトコンドリア(MitoBright LT Green、緑):Ex. 488 nm / Em. 500 - 560 nm
核(Hoechst 33342、青):Ex. 405 nm / Em. 400 - 450 nm
<実験操作>
(1) 神経芽細胞(SH-SY5Y)を神経細胞に分化誘導
(2) 上澄みを除去し、培地で調製した PlasMem Bright Red(100倍希釈)、Hoechst 33342(終濃度:5 µg/ml)および MitoBright LT Green(終濃度:0.1 µmol/l)を添加
(3) 30分間インキュベート
(4) 上澄みを除去し、HBSSを添加
(5) 蛍光顕微鏡で観察
実験例:マクロファージ細胞へのエクソソーム取り込み
ヒト歯肉組織由来間葉系幹細胞(GMSC)由来エクソソームをMagCapture™ エクソソームアイソレーションキット PS(富士フイルム和光純薬株式会社)を用いて精製し、ExoSparkler Exosome Membrane Labeling Kit-Green (コード:EX01)で染色しました。その後、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)から分化したヒトマクロファージ細胞に添加し、PlasMem Bright Redでマクロファージ細胞を染色しました。
(九州大学病院 口腔機能修復科 福田隆男 先生よりご提供)
<測定条件>
エクソソーム(Mem Dye - Green、緑):Ex 488 nm / Em 490 - 540 nm
細胞膜(PlasMem Bright Red、赤): Ex. 561 nm / Em. 560 - 700 nm
核(DAPI、青):Ex. 345 nm / Em. 455 nm
<実験操作>
1. 24 well plateに乗せたPLLコートスライドグラス上でPBMC-Mfの分化を誘導(7days)
2. エクソソーム10 µgをExoSparkler Exosome Membrane Labeling Kit-Greenのプロトコールに従い染色
3. 24 well plateにエクソソーム1 µg/mL添加し、3h培養
4. PBSで1回洗浄
5. 培地で調整したPlasMem Bright Red(1/100希釈)を添加し、CO2インキュベーター内で15分静置
6. PBSで3回洗浄
7. 4% PFAを用いて室温、15分間固定
8. PBSで3回洗浄
9. DAPI含有マウント剤(Invitrogen社:ProLong™ Gold Antifade Mountant with DAPI)で封入
10. 共焦点顕微鏡LSM 700 confocal microscope (Carl Zeiss) で撮影
参考文献
文献No. | 対象サンプル | 装置 | 引用(リンク) |
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1) | 細胞 (マクロファージ) |
蛍光顕微鏡 |
Y. Nakao, T. Fukuda, Q. Zhang, T. Sanui, T. Shinjo, X. Kou, C. Chen, D. Liu, Y. Watanabe, C. Hayashi, H. Yamato, K. Yotsumoto, U. Tanaka, T. Taketomi, T. Uchiumi, A. D. Le, S. Shi, F. Nishiura, "Exosomes from TNF-α-treated human gingiva-derived MSCs enhance M2 macrophage polarization and inhibit periodontal bone loss", Acta Biomater., 2020, doi:10.1016/j.actbio.2020.12.046. |
2) | 細胞 (HeLa) |
蛍光顕微鏡 | K. Qiu, R. Seino, G. Han, M. Ishiyama, Y. Ueno, Z. Tian, Y. Sun, J. Diao, "De Novo Design of A Membrane-Anchored Probe for Multidimensional Quantification of Endocytic Dynamics", Adv. Healthcare Mater., 2022, doi:10.1002/adhm.202102185. |
3) | 細胞 (繊維芽細胞) |
蛍光顕微鏡 | A. Katiyar, J. Zhang, J. D. Antani, Y. Yu, K. L. Scott, P. P. Lele, C. A. Reinhart-King, N. J. Sniadecki, K. J. Roux, R. B. Dickinson and T. P. Lele, "The Nucleus Bypasses Obstacles by Deforming Like a Drop with Surface Tension Mediated by Lamin A/C", 2022, doi:10.1002/advs.202201248. |
よくある質問
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Q
細胞の固定化はできますか?
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A
4% PFAでの固定化が可能です。
ただし、蛍光が消失する原因となりますので膜透過処理を行わないでください。
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Q
タイムラプスイメージングは可能ですか?
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A
可能です。
注意点として、励起光を最低限に抑え、検出感度を上げてください。細胞への断続的な励起光の照射は、細胞へのダメージと色素の分解を引き起こす可能性がございますので、インターバルの時間などもご検討ください。
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Q
Working solutionを調製する際、血清無しの培地やバッファーで希釈することは可能ですか?
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A
血清無しの培地やバッファーでの希釈も可能です。
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Q
染色後の細胞の洗浄にはどのようなものが使用できますか?
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A
無血清培地もしくはPBS, HBSSの様なバッファーがご利用いただけます。
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Q
Working solution添加後、すぐに観察が可能ですか?
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A
添加直後から観察は可能です。なお、小社プロトコルでは試薬を添加して5分間インキュベートした後に観察することを推奨しています。
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Q
細胞膜以外にも染まっている箇所があります。どのような理由が考えられますか?
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A
細胞膜以外が染まっているように見える理由として以下の2点が考えられます。
① 細胞膜に滞留している試薬の一部は、時間経過とともにエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれます。
本製品ページ内「技術情報:細胞膜への長期滞留性」にあります、小社製品の染色後24時間後の図をご参照ください。② 撮像時の焦点が底面(細胞底部の接着面)にあっていると下図Aのように観察される場合があります。
撮像時のZ軸の高さを下図Bのように調製してください。
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Q
PlasMem Bright Redの溶液内に析出物が見えましたが、使用できますか?
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A
問題なくご使用いただけます。
析出物はチューブを直接37℃で加温することで、再溶解することが出来ます。
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Q
PlasMem Bright Greenで染色した細胞とPlasMem Bright Redで染色した細胞を共培養し、細胞を染め分けることはできますか?
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A
細胞同士が接触すると色素がもう一方の細胞へ移動するため、染め分けることはできません。