これからはじめる フェロトーシス検出

フェロトーシスによる細胞死の機構

フェロトーシスは、膜リン脂質中の多価不飽和脂肪酸(PUFA)が酸化した脂質過酸化物の蓄積を特徴としており、この脂質過酸化に鉄の関与が示唆されています。細胞内のグルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)は、抗酸化物質である還元型グルタチオン(GSH)を利用して、活性酸素種(Reactive Oxygen Species:ROS)により生成した過酸化脂質* を還元します。しかし、GPX4の障害やGSHの枯渇により、過酸化脂質が蓄積するとフェロトーシスが引き起こされます。

*フェロトーシス研究の第一人者Stockwellらはフェロトーシスの阻害剤や誘導剤、検出指標を下記総説でまとめており、その中の脂質過酸化物検出にLiperfluoが紹介されています。

B. R. Stockwell, et al., "Ferroptosis: A Regulated Cell Death Nexus Linking Metabolism, Redox Biology, and Disease.", Cell, 2017, 171, 273.

フェロトーシス研究の重要性

フェロトーシスの検出は、アルツハイマー病やパーキンソン病などの疾患における神経細胞の喪失に役割を果たすため、その神経変性疾患やがんへの影響を解明に重要とされており、悪性腫瘍における潜在的な治療標的としても位置付けられています。フェロトーシスの正確な検出は、疾患の進行を遅らせる神経保護戦略の開発を支援し、治療抵抗性腫瘍におけるフェロトーシスによる細胞死を促進することで、がん治療アプローチの改善にも寄与しています。

  フェロトーシスの概要と主要な調節因子
      
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エラスチンによるフェロトーシス誘導

フェロトーシスの誘導剤として知られるErastinは、シスチントランスポーター(xCT)を阻害することで、GSHの原料となるシスチンの取り込みを阻害し、GSH量を減少させます。結果として、脂質過酸化物が増加しフェロトーシスを誘導します。下記の実験例では、Erastin刺激による各指標の変化を小社試薬を用いて確認した事例をご紹介します。

<実験例>

Erastin処理したA549細胞を用いて、細胞内のFe2+、ROS、脂質過酸化物、グルタチオン、細胞外へ放出されたグルタミン酸放出量、更にはシスチンの細胞内取込み量を測定しました。結果、Erastin処理によるxCT阻害によってグルタミン酸の放出量が減少し、シスチンの取り込みが阻害され細胞内グルタチオンの量が減少、更には細胞内のFe2+、ROS、脂質過酸化物の増大が確認されました。

①シスチン取込み

Cystine Uptake Assay Kit

②グルタミン酸放出量

Glutamate Assay Kit-WST

③細胞内グルタチオン量

GSSG/GSH Quantification Kit

④細胞内Fe2+

FerroOrange

⑤細胞内ROS

ROS Assay Kit -Highly Sensitive DCFH-DA-

⑥細胞内脂質過酸化物

Liperfluo

 

関連疾患の研究

非アルコール性脂肪肝炎(MASH)

フェロトーシスによる肝炎抑制

MASHモデルマウスの肝臓を用いた研究で脂肪肝の発症時にネクローシスがアポトーシスよりも先におこっていることを確認。更に詳細な実験でネクローシスの中でもフェロトーシスが脂肪性肝炎の引き金として関与していること、またフェロトーシスの阻害実験において肝炎の発症をほぼ完全に抑制できたことを報告。

Minoru Tanaka, et al., "Hepatic ferroptosis plays an important role as the trigger for initiating inflammation in nonalcoholic steatohepatitis", Cell Death & Disease201910, 449.

関連記事:MASHに関連する細胞内指標の変化

MASHモデルを用い代謝や細胞老化など各指標の変化および報告論文を掲載。

リンク先の"MASH"タブをクリックください)

 


実験例:MASHモデル組織の細胞内代謝の測定例

高脂肪食処理した1型糖尿病モデルマウスの肝臓組織を用い、組織内のATPα-KGNAD量を測定。(リンク先の各製品HPに掲載)

 

神経変性疾患

リソソーム障害とフェロトーシスの関連性を確認

ヒト神経細胞を用いた実験で、リソソームタンパク質のプロサポシンをノックダウンすると、老化の特徴であるリポフスチン形成の誘発や活性酸素の発生に伴いフェロトーシスを誘導することを確認。

Martin Kampmann, et al., "Genome-wide CRISPRi/a screens in human neurons link lysosomal failure to ferroptosis", Nature Neuroscience, 2021, 24, 1020

がん

フェロトーシスによるがん免疫の制御

免疫療法で活性化したCD8+T細胞は、脂質過酸化を促進しフェロトーシスを引き起こすことで抗腫瘍効果に寄与していることが判明。免疫療法によりシスチン取り込みを阻害し、腫瘍細胞の脂質過酸化を促進することをメカニズムとして考察。

Weiping Zou, et al, "CD8+ T cells regulate tumour ferroptosis during cancer immunotherapy", Nature, 2019, 569, 270

地球上の生命体の活動や疾患における鉄の重要性の再認識

フェロトーシスと深く関与している鉄研究のReview。鉄のダイナミクスや過剰鉄による発がん、フェロートーシスに関する内容を掲載。

名古屋大学大学院医学系研究科 病理病態学講座 生体反応病理学・分子病理診断学 教授 豊國 伸哉, Dojin News, 2017, 162, 1

フェロトーシス研究用試薬の選択ガイド

過酸化脂質と特異的に反応するLiperfluoの他、フェロトーシス研究の関連製品を揃えています。また、シスチントランスポーター(xCT)阻害剤のエラスチンを用いる実験では、xCT阻害を評価するためにグルタミン酸の測定が行われますが、Cystine Uptake Assay Kitを用いることでRI標識試薬や設備を用いず、よりxCT阻害の効果を反映した測定を行うことができます。

品名 Liperfluo Lipid Peroxidation Probe
-BDP 581/591 C11-
MitoPeDPP Lyso-FerroRed Mito-FerroGreen FerroOrange

指標

 脂質過酸化

脂質過酸化 脂質過酸化 鉄イオン(Fe2+) 鉄イオン(Fe2+) 鉄イオン(Fe2+)

局在

細胞内

細胞内 ミトコンドリア リソソーム ミトコンドリア 細胞内

検出
(蛍光:Ex/Em)

蛍光
(524 nm/535 nm)

蛍光
(Green:488 nm/510-550nm
Red: 561 nm/600-630nm)
蛍光
(452 nm/470 nm)
蛍光
(551 nm/571 nm)
蛍光
(505 nm/535 nm)
蛍光
(543 nm/580 nm)

装置

蛍光顕微鏡
フローサイトメーター

蛍光顕微鏡
フローサイトメーター
プレートリーダー

蛍光顕微鏡
フローサイトメーター
蛍光顕微鏡
フローサイトメーター
プレートリーダー
蛍光顕微鏡

蛍光顕微鏡
プレートリーダー

サンプル

生細胞

生細胞 生細胞 生細胞 生細胞 生細胞

 

品名 Iron Assay Kit -Colorimetric- ROS Assay Kit
-Highly Sensitive DCFH-DA-/-Photo-oxidation Resistant DCFH-DA-
MDA Assay Kit GSSG/GSH Quantification Kit II Cystine Uptake Assay Kit Glutamate Assay Kit-WST

指標

鉄イオン(Fe2+)

 ROS (Reactive oxygen species)

マロンジアルデヒド グルタチオン(酸化型/還元型) シスチン取り込み能力 グルタミン酸

局在

細胞内

細胞内 細胞内 - 細胞内/細胞外

検出
(蛍光:Ex/Em)

比色:593 nm

蛍光
(505 nm/525 nm)

蛍光(540 nm/590 nm)
比色:532 nm
比色:412 nm 蛍光
(490 nm/535 nm)
比色:450 nm

装置

プレートリーダー

蛍光顕微鏡
フローサイトメーター
プレートリーダー

プレートリーダー プレートリーダー 蛍光顕微鏡
フローサイトメーター
プレートリーダー

サンプル

組織

生細胞

細胞、組織 細胞、組織、血漿、赤血球 生細胞 細胞、細胞培養液

 

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