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Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST を使用した細胞傷害性試験

株式会社同仁化学研究所 緒方 秀樹

 1960 年 Nachlas らにより遊離 LDH (乳酸脱水素酵素)を指標とした細胞傷害性試験が行われて以降、細胞の状態を確認する手法の一つとして LDH アッセイは今なお世界中で論文数は増え続けている(文末の参考図)。様々な研究分野で使用されている LDH アッセイは、主に細胞傷害性の裏付けデータとして測定されている。今回は近年発表されている論文の中から 4 報を紹介する。

 Watanabe らは膜たんぱく質であるアクアポリン(AQP)の機能と疾患への関連を研究している 1。 AQP は細胞内への水の取り込みに関係していることが知られているが、水以外にもグリセロール、 H2O2 などの低分子も透過させることが明らかになってきており、細胞の増殖や遊走などにも関与していると考えられている。Watanabe らは、 AQP-9 が H2O2 の透過に関与していることを確認するため、 siRNA により AQP-9 をノックダウンした HepG2 細胞を用い、細胞外から細胞内への H2O2 取り込み抑制については、 H2O2 検出蛍光プローブ(CM-H2DCFDA)によって確認している。その際、 H2O2 の取り込みが抑制されたことによる細胞傷害性の変化を Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST を用いた遊離 LDH の測定によって確認している。コントロール細胞では、 H2O2 取り込みにより CM-H2DCFDA の蛍光が確認され、同時に遊離 LDH の測定により細胞傷害性も確認されている。一方、 AQP-9 をノックダウンした細胞では、細胞内で H2O2 は確認されず、また細胞傷害性もないことが遊離 LDH 測定による裏付けデータで確認されている(図 1:イメージ)。

 また、Shu-fang Jin らは突発性肺線維症治療薬として承認されている Pirfenidone (図 2)の作用機序を研究しており、その中で Cell Counting Kit-8Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST を併用して評価を行っている 2。マウス線維芽細胞 C3H10T1/2 における Pirfenidone の抗増殖性および抗線維化作用とキナーゼ阻害剤である XL413(図 2)の Pirfenidone のエンハンサー効果が調査されている。 Cell Counting Kit-8 を使用し Pirfenidone 単独よりも XL413 を加えることにより、 Pirfenidone の抗増殖性が有意に増強されていることが示された。また、この抗増殖性の増強が XL413 による細胞毒性によるものではないことが Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST を用いて確認されている。

 これらの研究の他にも Liping Wu らは、初代ヒト上皮細胞(HEECs)を弱酸により刺激し、その際の ATP 放出を調査しているが、その際に ATP の放出だけではなく遊離 LDH の増大がないことを確認している 3)
 また、Wakatsuki らは、初代培養の神経細胞において 6-hydroxydopamine によってアポトーシスを誘導し、それを確認するマーカーとして、caspase3、annexin V そして遊離 LDH を測定して確認している 4
 このように細胞傷害性については測定原理の異なる複数の指標を用いることで実験の裏付けを行うことができる。小社でも細胞増殖 / 細胞毒性測定用の試薬、細胞染色用色素など各種取り揃えており、これらの試薬を組み合わせて使用することで細胞内メカニズムの解明に役立てていただきたい。

 

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[参考文献]

1) S. Watanabe, et al., Biochem. Biophys. Res. Com, 2016, 471, 191.
2) S. Jin, et al., Exp. Cell. Res, 2015, 339, 289.
3) L. Wu, et al., Am. J. Physiol. Gastroinest. Liver Physiol, 2015, 309, G695.
4) S. Wakatsuki, et al., J. Cell. Biol., 2015, 211, 881.

[参考図]

遊離 LDH 測定と生細胞測定(MTT 法や WST 法など)を併用した論文数の推移(小社調べ)

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