活性化マクロファージにおけるROS産生のライブセルハイコンテントイメージング
免疫細胞は、炎症反応により異物を分解して体を正常に保つ役割を果たしています。一方で、過剰な炎症は様々な疾病を引き起こす要因となることから、ミトコンドリアで生産されるROS (Reactive Oxygen Species)を指標にして抗炎症薬のスクリーニングが行われています。ここでは、小社製品を使ったROS産生のライブセルハイコンテントイメージングのアプリケーションをご紹介します。
<実験>
Lipopolysaccharide (LPS)刺激によって誘発されるROS産生を評価しました。ROSの検出には、ROS Assay Kit -Photo-oxidation Resistant DCFH-DA-(メーカーコード:R253)を用い、ニコン倒立顕微鏡(Ti2-E)にて細胞の形態とROSの産生、細胞あたりのROSの変化を経時的に測定しました。
<結果>
・細胞形態の観察と細胞数の測定
LPS刺激により細胞あたりの細胞面積が増加しました(図1A)。また、コントロール細胞よりも細胞数の増加が抑制される結果が得られました(図1B)
・ROSの検出
視野全体の細胞数を測定し細胞あたりの蛍光強度を算出すると、21時間後ではLPS濃度が高いほど細胞あたりのROS産生量が増加しました※。さらにタイムラプス画像による解析では、細胞分裂による細胞数の増加、マクロファージの貪食による細胞数の減少や ROSの増加を確認しました(図2)。
既存の試薬では励起光による色素の自動酸化や再現性に課題がありましたが、小社キットではこれらの課題を解決することで、長時間(48時間)にわたるROSの経時的な検出が可能となり、低いバックグラウンドで細胞内に色素が結合するため精度の高く再現性の高い解析が可能になりました。
LPS 500ng/ml を添加したウェルのタイムラプス画像。緑:ROS,Scale bar:10μm。Cell2はアポトーシスを起こし(B)、1時間後に死細胞の形態を示した(C)。Cell1は死滅したCell2とCell3を貪食し、ROSを増加させた(C-F)
<使用装置>
ハイコンテンツアナリシス(HCA)顕微鏡システム (株式会社ニコン)
※染色操作と解析法の詳細は、株式会社ニコン「APPLICATION NOTE :活性化マクロファージにおけるROS生産のライブセルハイコンテントイメージング」よりご覧いただけます。