はじめに
近年、硫化水素 (H2S)が血管拡張や細胞保護、インスリン分泌や神経伝達調節など様々な生理活性を示すことが明らかにされ、一酸化窒素 (NO) や一酸化炭素 (CO) に続く重要なシグナル分子として注目されています。硫化水素は、NOやCOと同様にガス状分子として認知されていますが、そのpKaは約7であり生理的pHでは約80%が硫化水素イオン (HS-)の状態で存在します。また、硫化水素イオンは、生体内で様々な結合形態や構造をとるため、その作用機序の詳細に関しては未だ不明であり、硫化水素を中心とした硫黄の生体内機能の解明が待ち望まれています。
-SulfoBiotics- HSip-1は、硫化水素と反応し強い蛍光(λex 491 nm, λem 516 nm)を生じます。
HSip-1
(MW: 719.22)
図1 HSip-1の構造
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- λex : 491 nm
λem : 516 nm
<推奨フィルター>
励起:470 ~ 500 nm
蛍光:500 ~ 550 nm
内容
1 mg | x 1 |
保存条件
冷暗所にて保存してください。
必要なもの
- 超純水
- PBS
- マイクロピペット
溶液調製
10 mmol/l HSip-1 stock solutionの調製
HSip-1 1 mgを含むチューブに超純水139 μlを添加し、ピペッティングにより溶解する。
- 溶解後は、-20 ℃以下で保存してください。調製後は1ヶ月間安定です。
実験例
HSip-1を用いた硫化水素の検出
- 調製した10 mmol/l HSip-1 stock solutionをPBSで希釈し、200 μmol/l HSip-1 working solutionを調製した。
- 硫化ナトリウム(-SulfoBiotics- Sodium Sulfide(Na2S))を7.8 mg秤量し、超純水 (窒素バブリング処理済) 1 mlを添加して溶解し、100 mmol/l Na2S水溶液を調製した。
- 100 mmol/l Na2S水溶液20 μlに、超純水980 μlを添加して2 mmol/l Na2Sを調製した。
- 3.で調製した溶液100 μlに、超純水900 μlを添加して200 μmol/l Na2S 溶液を調製した。
- 4.で調製した溶液を順次2倍希釈し、Na2S標準液(200, 100, 50, 25, 12.5, 6.3, 3.2, 0 μmol/l)を調製した。
- 調製したNa2S標準液300 μlに、200 μmol/l HSip-1 working solution 350 μlを添加し、ボルテックスにより混合した (全量 650 μl)。
- 30分間室温でインキュベートした後、96穴マイクロプレートに各溶液を200 μlずつ添加した。
- マイクロプレートリーダーで、516 nmの蛍光強度(Ex: 491 nm)を測定した。
図3 硫化水素濃度に依存した516 nmの蛍光強度変化
- HeLa細胞を用いた実験例を本製品ページ(SB21)にて紹介しています。
本製品は、東京大学大学院 薬学系研究科 長野哲雄先生、花岡健二郎先生のご指導の下、製品化しました。
参考文献
- K. Sasakura, K. Hanaoka, N. Shibuya, Y. Mikami, Y. Kimura, T. Komatsu, T. Ueno, T. Terai, H. Kimura, and T. Nagano, “Development of a Highly Selective Fluorescence Probe for Hydrogen Sulfide”, J. Am. Chem. Soc., 2011, 133, 18003.
よくある質問/参考文献
SB21: -SulfoBiotics- HSip-1
Revised Nov., 16, 2023