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ボナールキット ABS (PONAL KIT®-ABS) とは

合成洗剤の成分の一つとしてABS (アルキルベンゼンスルホン酸系) などの陰イオン界面活性剤が大量に使用されています。これらは河川、湖沼を汚染するため、飲料水源や環境生物への影響 が懸念されています。

これまで合成洗剤の有無、 あるいは量を確認するために公定分析法であるメチレンブルー法 (MB法) が用いられてきました。 MB法は抽出操作を2回繰り返し、抽出相の洗浄操作を必要とすることなど操作が煩雑で測定時間も長くかかります。
ボナールキット ABSは、 陰イオン界面活性剤測定用として理想的な性能を持った試薬である「Co-5-CI-PADAP」を錠剤化し、操作を簡便にしています。そのため、化学分析の経験がない方でも、水中の陰イオン界面活性剤を迅速に測定できるキットになっています。

主な特長

  1. キットの薬品は発色試薬錠と抽出液であり、取り扱いが簡単です。
  2. 測定操作が簡単であり、化学分析経験がない方でも迅速に測定できます。
  3. 発色感度が高いので、極低濃度の陰イオン界面活性剤でも十分測定可能です。目視法による測定で0, 0.03, 0.05, 0.1, 0.2および0.3ppmの6段階の測定ができます。これはJIS法に規定されている同濃度におけるメチレンブルー法による発色感度より、はるかにすぐれています。
  4. 抽出液に有害なベンゼンを使用しておりません。

測定原理

親水性の試薬であるCo-5-Cl-PADAPが陰イオン界面活性剤と定量的に結合することで疎水性のイオン対化合物が生成されます。この化合物が有機溶媒に抽出されると有機相が着色し、この有機相の着色度から陰イオン界面活性剤の濃度を求められます。

標準操作方法

  1. 検水を添付の52mlメスフラスコの下の標線まで入れる。
  2. 発色試薬錠を1錠加え、栓をして転倒混和し溶解する。
  3. 抽出液をメスフラスコの上の標線まで加え(2ml)、栓をして30秒間よく振り混ぜる。
  4. 5分間静置した後、有機相の色の濃さを標準色と比較し、最も近い濃度のppm値を読み取る。
図1 ABS測定標準操作法

*注:ご覧になるモニターにより、実際の色合いとは異なる場合がございます。あくまで目安としてご覧下さい。

操作上の注意点

  1. 本キットは主に河川・湖沼水中の極低濃度の陰イオン界面活性剤を測定対象としています。0.3 ppm以上の検水は超純水で希釈して測定してください。
  2. 検水のpHが3~9より外れているときはpH7付近まで中和して測定してください。
  3. 測定器具を洗剤で洗った場合は、十分にすすぎを行ってください。
  4. 抽出液の瓶を開封する際は、抽出液が飛び出さないようにゆっくり開封してください。万が一、抽出液が手に付着した場合は、直ちに水道水で洗い流してください。
  5. 標準色は、ドデシル硫酸ナトリウムを基準として作成しています。

共存物の影響

本キットは通常の検水に共存する可能性が高い成分の影響が低くなるように調整しています。下表に主な共存物の影響を示します。

表1 共存物の影響

(注1)NaClOが共存すると正常時の発色に比べ、濃い紫色を呈する。
(注2)NaClOが10 ppm共存すると妨害が大きく発色しなくなるが、Na2SO3を約5 mg加えると正常な発色が得られる。

 

応用ーより精密に測定したい場合ー

本キットによる陰イオン界面活性剤の測定では前記「標準操作法」に示した方法により大部分が満足な結果が得られます。しかし、より精密に測定したい場合は「標準操作法」に準じて発色させた後、分光光度計を用いて有機相の吸光度を測定することを推奨いたします。例として、発色体の吸収スペクトルを図2に、SDSの検量線を図3に示します。

ただし、これらの図は「標準操作法」において100mlメスフラスコを用い、発色試薬錠を2錠、抽出液を4ml添加し測定したものです。抽出液変更前後でのスペクトルおよび感度に大きな変化はありません。


図2本法による発色体の吸収スペクトル


図3 抽出液変更前後における検量線の比較

PK01: ポナールキット-ABS
Revised Apr., 03, 2024