はじめに
QCM(Quartz Crystal Microbalance)やSPR(Surface Plasmon Resonance)等の基板にSAMs を形成し、タンパク 質を固定化する方法のひとつに、Ni2+ 配位NTA(nickel-chelated nitrilotriacetic acid)を用い、そこへヒスチジンを付加したタンパク質(His-tag タンパク質)を固定化する方法があります。
タンパク質固定化法には、他にも、末端にカルボキシル基を有するSAMを用いる方法や、ビオチン化 SAM を用いてビオチンーアビジン法で結合する方法があります。それらと比べて、His-tag タンパク質固定化法の利点として、①Histag を介してタンパク質を固定化するためタンパク質が変性しにくいこと、②His-tagとNi-NTA 間の相互作用をイミダゾールや EDTA などで解消することでタンパク質を外すことができ、基板の再利用が可能であること、の2点があげられます。
本製品は、一定量のエタノールに溶解させるだけで、金基板上に簡便に NTA-SAM を作製するための溶液を調製することができ、形成されたNi-NTA-SAM は、His-tag タンパク質を効率的に固定化することが可能です。
図 1 NTA-SAM Formation Reagent を用いたバイオセンサー作成の模式図
内容
3 本
使用上の注意
内容物は白色から淡黄色固体で微量のため、確認しづらい場合がございます。 輸送中の振動等により、内容物がチューブ壁面やキャップ裏面に付着している場合がありますので、遠心してからご使用ください。
保存条件
0 ~ 5℃で保存してください。
NTA-SAM 調製法
- 本試薬 1チューブにエタノール1 mlを添加してピペッティングにより溶解し2 mmol/l NTA-SAM溶液とする※1。さらに、 この溶液をエタノールで 10 倍希釈し、操作 2)に使用する。
- Piranha 溶液※2 等で洗浄した金基板を、操作 1) で調製した溶液に浸漬し、終夜室温で静置する。
- この基板をエタノール、超純水の順で数回洗浄する ※3。
- 溶解しにくい場合は、超音波照射あるいはボルテックスにかけて溶解してください。エタノール溶解後はすぐにご使用ください。
- 濃硫酸:過酸化水素水= 3:1 の混合溶液です。腐食性が非常に強いため、取り扱いには十分ご注意ください。
- 作製した NTA-SAM 基板は、密閉性の高いガラス瓶等に入れ、窒素置換して冷蔵 (0 ~ 5℃ ) にて保存してください。
実験例
QCM 基板上への His-tag 化タンパク質の固定化
- 本試薬を用いてNTA-SAM を形成した基板 (QCM 用)を 1 mmol/l NaOH 溶液で洗浄した。
- 40 mmol/l NiSO4 ※水溶液に室温で 1 時間浸漬したあと、基板を150 mmol/l NaCl 溶液で洗浄した。
- 基板をQCMに装着し、HBS(10 mmol/l HEPES-buffered saline, pH7.5) 450 μlを添加して約30分間平衡化した。
- 平衡化後、5 mg/ml His-tag化Protein AのHBS 溶液を10 μl添加し、振動数変化を測定した。
- NiSO4 は本製品に含まれておりません。
図 2 Ni-NTA への His-tag 化 Protein A の結合 (A)
(A) Ni-NTA-SAM 表面への His-tag 化 Protein A の結合により、振動数が変化した。
SPR 基板上への His-tag 化タンパク質の固定化および性能確認
- 本試薬を用いて NTA-SAM表面を作製した基板 (SPR 用)をSPRに装着し、0.05% Tween 20含有 HBS を流速0.1 ml/minで約30分間通液した。
- 40 mmol/l NiSO4※水溶液を 5 分間通液した後、0.05% Tween 20 含有 HBS(10 mmol/l HEPES-buffered saline, pH7.5)を通液し置換した。
- 0.1 mg/ml His-tag 化 Protein Aの0.05% Tween 20含有HBS 溶液を1分間通液し、Ni-NTA 表面へのHis-tag 化 Protein Aの固定化量を測定した。その後、0.05% Tween 20含有HBSを通液し置換した。
- 0.1 mg/ml Rabbit IgGの 0.05% Tween 20含有 HBS 溶液を1分間通液し、His-tag化 Protein AへのRabbit IgGの固定化量を測定した。その後、0.05% Tween 20含有HBSを通液し置換した。
- NiSO4 は本製品に含まれておりません。
図 3 Ni-NTA と His-tag 化 Protein A の結合 (A) および His-tag 化 Protein A と IgG の結合 (B)
(A) Ni-NTA-SAM表面へのHis-tag化Protein Aの結合により、シグナルが上昇した。
(B) His-tag 化 Protein A への Rabbit IgG の固定化により、シグナルが上昇した。
よくある質問/参考文献
N475: NTA-SAM Formation Reagent
Revised Dec., 05, 2023