※印刷が必要ない項目は、タイトルバーを閉じるを押して省略できます。

はじめに

 フェロトーシスは、鉄イオンに依存した脂質過酸化物の異常な蓄積によって引き起こされる細胞死の一種です。脂質過酸化の進行過程では、脂質の酸化反応に伴って脂質ラジカルが生成されるため、フェロトーシスの発生を正確に評価するには、脂質過酸化反応や脂質過酸化物だけでなく脂質ラジカルを検出することが重要です1)
 NBD‑Penは細胞内の脂質ラジカルと選択的に反応する蛍光色素です。Lyso‑NBD‑Pen (品コード:L271)とは異なり特定のオルガネラへの局在性がないため、細胞全体の脂質ラジカルの検出が可能です。NBD-Penは細胞膜を透過し、脂質ラジカルとの反応により蛍光シグナルを発します。

内容

Lipid Radical Probe -NBD-Pen- 10 nmol × 1
Lipid Radical Probe -NBD-Pen- 10 nmol × 5

 

 

 

 

 

保存条件

 冷暗所にて保存してください。

必要なもの

– 蛍光顕微鏡、もしくはフローサイトメーター

– インキュベーター(37℃)  

– マイクロピペット(100–1000 µl, 20–200 µl, 1–10 µl)

– コニカルチューブ

– 培地またはHBSS (Hanks' balanced salt solution)

使用上のご注意

・輸送中の振動等により、内容物がマイクロチューブ壁面やキャップ裏面に付着している場合がありますので、開封

 前に内容物を底面に落としてからご使用ください。

・検出器毎の推奨測定波長は表1を参照してください。

検出器 蛍光顕微鏡 フローサイトメーター
測定波長

・共焦点レーザー顕微鏡

EX/Em: 488/490–600 nm

・落射型顕微鏡

GFPフィルター

FITCフィルター

          表1  検出器別の推奨測定波長

 

溶液調製

1 mmol/l NBD-Pen DMSO stock solutionの調製

NBD-Pen 10 nmolを含むチューブに10 μlのDMSOを加えピペッティングにより溶解し、1 mmol/l DMSO stock solutionを調製する。

  • 調製後は遮光し、-20 °Cで保存して下さい (1ヶ月間安定)。

1 µmol/l NBD-Pen working solutionの調製

NBD-Penを血清入り培地で1000倍希釈し、1 µmol/l working solutionを調製する。

  • working solutionは保存できません。調製したその日の内にご使用ください。
  • 容器別のworking solution量は表2を参考にして下さい。
容器 35-mm dish ibidi 8-well plate 96-well black plate (clear bottom)
必要量 2 ml 200 μl/well 100 μl/well

        表2  容器別working solutionの推奨使用量  

 

操作

  1. 細胞をディッシュに播種し、5% CO2存在下、37°Cで一晩培養する。
  2. 培地を取り除き、培地を用いて1回洗浄する。
  3. 上清除去後、表2を参考に、適切な量の1 µmol/l NBD-Pen working solutionを添加し、5% CO2インキュベーター内に37°Cで30分インキュベートとする。
  4. Working solutionを吸引除去し、培地で細胞を2回洗浄する。
  5. 薬剤等を含んだ培地で適切な時間処理する。
  6. 上清を吸引除去し、HBSSで細胞を2回洗浄する。
  7. 各蛍光検出器で検出する。

実験例1

Cumene hydroperoxide処理により脂質ラジカルを発生させたHeLa細胞の蛍光顕微鏡での脂質ラジカル検出

  1. ibidi 8-well plateに3×104 cells/wellの濃度でHeLa細胞 (MEM, 10% fetal bovine serum,1% penicillin-streptomycin)を播種し、インキュベーター内 (37°C、5% CO2存在下)で一晩培養した。
  2. 上清を取り除き血清入り培地で細胞を1回洗浄後、1 µmol/l NBD-Pen working solutionを200 µl/well添加し、インキュベーター内 (37°C、 5% CO2存在下)で30分間インキュベートした。
  3. 上清除去後、HBSSを用いて細胞を2回洗浄し、200 µmol/lのCumene hydroperoxide/HBSS溶液を加え、インキュベーター内 (37°C、5% CO2存在下)で1時間インキュベートした。
  4. 上清除去後、HBSSで細胞を2回洗浄し、容器をHBSSで満たした。
  5. 蛍光顕微鏡で細胞を観察した。

 

 

 

検出器: 共焦点レーザー顕微鏡
Ex/Em: 488/490–600 nm
Scalebar: 20 µm

図1 共焦点レーザー顕微鏡におけるHeLa細胞の脂質ラジカルの検出

実験例2

Cumene hydroperoxide処理により脂質ラジカルを発生させたHeLa細胞のフローサイトメーターでの脂質ラジカル検出

  1. 6-well plateに3×105 cells/wellの濃度でHeLa細胞 (MEM, 10% fetal bovine serum,1% penicillin-streptomycin)を播種し、インキュベーター内 (37°C、5% CO2存在下)で一晩培養した。
  2. 上清を取り除き血清入り培地で細胞を1回洗浄後、1 µmol/l NBD-Pen working solutionを2 ml/well添加し、インキュベーター内 (37°C、 5% CO2存在下)で30分間インキュベートした。
  3. working solutionを除去し、血清入り培地を用いて細胞を2回洗浄後200 µmol/lのCumene hydroperoxide/HBSS溶液を加え、インキュベーター内 (37°C、5% CO2存在下)で1時間インキュベートした。
  4. 上清除去後、HBSSで細胞を1回洗浄し、0.25% トリプシン-EDTAを用いて細胞を剥離した。
  5. 剥離した細胞を血清入り培地で1.5 mlチューブに回収し、300×gで5分間遠心した。
  6. 上澄みを除去し、PBSを1 ml加え細胞を再懸濁後、300 x g で 5 分間遠心した。
  7. 上澄みを除去し、PBSを1 ml加え細胞を再懸濁した。
  8. サンプルをフローサイトメーター測定用のセルストレーナーに通しフローサイトメーターにて測定した。

 

 

 

 

 

 

 

検出器: フローサイトメーター
FITCフィルター

図2 フローサイトメーターにおけるHeLa細胞の脂質ラジカルの検出

参考文献

1) K. Yamada et al., Nature Communications, 2025, 16, 2554.

L272: Lipid Radical Probe -NBD-Pen-
Revised Apr., 13, 2026