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はじめに

 リソソームは細胞内小器官の一つで生体膜に囲まれた酸性小胞であり、様々な分解酵素を内包しております。リソソームは不要な物質を分解することで生体内恒常性の維持に寄与しています。リソソームの機能不全は神経変性疾患等の発症・進展に深く関与していることから、リソソームを詳細に解析することが病態の解明や治療薬の開発に有用であると考えられております。
 本キットは、リソソームpHに依存的なpHLys Greenと、非依存的なLysoPrime Deep Redで構成されています。pHLys Greenは、リソソーム機能の低下によってリソソームのpHが中性化すると蛍光強度が減少します。一方、LysoPrime Deep Redは、リソソームのpH変化に非依存性があるため、蛍光強度が変化しません。そのため、正確なリソソーム量の解析を可能とします。リソソームのpHに依存的もしくは非依存的な集積性を示す2種類の色素を組み合わせることで、リソソームpHとリソソーム量を測定し、正確なリソソームpHの変化を検出できます。


図1. pHLys Green及びLysoPrime Deep Redによるリソソーム染色について

蛍光特性

pHLys GreenとLysoPrime Deep Redの蛍光特性

pHLys Green

λex: 440 nm
λem: 539 nm

<観察条件>
Ex: 488 nm
Em: 500–600 nm

LysoPrime Deep Red

λex: 656 nm
λem: 682 nm

<観察条件>
Ex: 633 nm
Em: 640–700 nm

内容

- pHLys Green x 1
- LysoPrime Deep Red x 1
- Bafilomycin A1 x 1
  • Bafilomycin A1は極少量であるため、内容物が見え難くなっております。取扱いにご注意下さい。

保存条件

遮光、-20oCにて保存してください。

必要なもの

  • Dimethyl sulfoxide (DMSO)
  • 培地
  • Hanks’ Balanced Salt Solution (HBSS) または無血清培地
  • マイクロピペット
  • マイクロチューブ

溶液調製

pHLys Green DMSO stock solution の調製

pHLys Greenを含むチューブに 20 μlのDMSOを加え、ボルテックスミキサーにより溶解し、DMSO stock solutionを調製する。

  • 調製後は-20℃で保存して下さい。調製後1ヶ月間安定です。
  • pHLys Greenの性質上、保管や輸送の条件により色素がチューブに沈着する場合がありますが、キットの性能や結果には影響を与えませんのでそのままお使い下さい。

LysoPrime Deep Red DMSO stock solution の調製

LysoPrime Deep Redを含むチューブに 20 μlのDMSOを加え、ボルテックスミキサーにより溶解し、DMSO stock solutionを調製する。

  • 調製後は-20℃で保存してください。調製後1ヶ月間安定です。

Bafilomycin A1 DMSO stock solutionの調製

Bafilomycin A1を含むチューブにDMSO 24 μlを加え、ピペッティングにより溶解する。

  • 調製後は-20℃で保存して下さい。調製後1ヶ月間安定です。

Bafilomycin A1 working solutionの調製

Bafilomycin A1 DMSO stock solutionを培地またはHBSSで2,000倍希釈する。

  • 細胞種によって最適濃度が異なります。はじめてご使用される際には最適条件をご検討ください。 (推奨希釈域: 1,000 – 10,000倍)
  • Bafilomycin A1 working solutionは保存できません。調製したその日のうちに、ご使用ください。

同時に染色する場合

pHLys Green/LysoPrime Deep Red working solution の調製

pHLys Green DMSO stock solution と LysoPrime Deep Red DMSO stock solution を無血清培地またはHBSSで1,000 倍希釈し、pHLys Green/LysoPrime Deep Red working solutionを調製する。

  • 細胞種によって最適濃度が異なります。はじめてご使用される際には最適条件をご検討ください。 (pHLys Green 推奨希釈域: 250 – 2,000倍、LysoPrime Deep Red 推奨希釈域: 500 – 5,000倍)
  • pHLys Green/LysoPrime Deep Red working solutionは保存できません。調製したその日のうちに、ご使用ください。
  • LysoPrime Deep Redは血清成分の影響を受けるため、血清不含培地またはHBSSで希釈してください。

別々に染色する場合

pHLys Green working solution の調製

pHLys Green DMSO stock solutionを培地またはHBSSで1,000 倍希釈し、pHLys Green working solutionを調製する。

  • 細胞種によって最適濃度が異なります。はじめてご使用される際には最適条件をご検討ください。 (推奨希釈域: 250 – 2,000倍)
  • pHLys Green working solutionは保存できません。調製したその日のうちに、ご使用ください。

LysoPrime Deep Red working solution の調製

LysoPrime Deep Red DMSO stock solutionをHBSSまたは無血清培地で1,000 倍希釈し、LysoPrime Deep Red working solutionを調製する。

  • 細胞種によって最適濃度が異なります。はじめてご使用される際には最適条件をご検討ください。 (推奨希釈域: 500 – 5,000倍)
  • 本色素は血清成分の影響を受けるため、血清不含培地またはHBSSで希釈してください。
  • LysoPrime Deep Red working solutionは保存できません。調製したその日のうちにご使用ください。

 

操作

同時に染色する場合

  1. 細胞をディッシュに播種し、5% CO2存在下、37oCで培養する。
  2. 培地を取り除き、HBSSもしくは無血清培地を用いて細胞を2回洗浄する。
  3. pHLys Green/LysoPrime Deep Red working solutionを加え、5% CO2存在下、37oCで30分インキュベートする。※1
  4. 上澄みを取り除き、HBSSを用いて細胞を2回洗浄する。※2
  5. 培地を加え、蛍光顕微鏡で観察する。
  1. working solutionを用いた染色は、必ず薬剤刺激前に行ってください。
  2. Bafilomycin A1 (リソソーム酸性阻害剤) を用いた刺激方法は、pHLys Green/LysoPrime Deep Red working solutionで染色後にBafilomycin A1で刺激を行ってください。

別々に染色する場合

  1. 細胞をディッシュに播種し、5% CO2存在下、37oCで培養する。
  2. 培地を取り除き、HBSSもしくは無血清培地を用いて細胞を2回洗浄する。
  3. LysoPrime Deep Red working solutionを加え、5% CO2存在下、37oCで30分インキュベートする。※1
  4. 上澄みを取り除き、HBSSを用いて細胞を2回洗浄する。
  5. pHLys Green working solution (HBSS) を加え、37oCで 30 分インキュベー トする。※2
  6. 上澄みを取り除き、HBSSもしくは培地を用いて2回洗浄する。
  7. 培地を加え、蛍光顕微鏡で観察する。
  1. LysoPrime Deep Redの染色は、必ず薬剤刺激前に行ってください。
  2. Bafilomycin A1 (リソソーム酸性阻害剤) を用いた刺激方法は、pHLys Green working solutionにBafilomycin A1を添加し染色と刺激を同時に行うか、pHLys Green working solutionで染色後にBafilomycin A1で刺激を行ってください。

実験例

共焦点蛍光顕微鏡を用いたリソソームpH変化の観察

  1. μ-slide 8 well plate (ibidi社) にHeLa細胞 (1.0 x 104 cells/well) を播種し、5% CO2存在下、37で一晩培養した。
  2. HBSSで2回洗浄後、HBSSで希釈したLysoPrime Deep Red working solution (1,000倍希釈) をwellに200 μl加え、37で30分インキュベートした。
  3. 上澄みを取り除き、細胞をHBSSで2回洗浄した。
  4. HBSSで希釈した±Bafilomycin A1 (Baf. A1: リソソーム酸性化阻害剤) (2,000倍希釈) を含んだpHLys Green working solution (1,000倍希釈) をwellに200 μl加え、37 で30分インキュベートした。
  5. 上澄みを取り除き、細胞をHBSSで2回洗浄した。
  6. 新しい10% FBS含有MEM培地をwellに200 μl加え、共焦点蛍光顕微鏡で観察した。


図2. Bafilomycin A1によるリソソームpHへの影響

CTRL: 通常培養条件、Baf. A1: リソソーム酸性化阻害条件
pHLys Green 検出波長: 488 nm (Ex), 500–600 nm (Em)
LysoPrime Deep Red 検出波長: 633 nm (Ex), 640–700 nm (Em)

L268: Lysosomal Acidic pH Detection Kit-Green/Deep Red
Revised Sep., 26, 2023