はじめに
リソソームは細胞内小器官の一つで生体膜に囲まれた酸性小胞であり、様々な分解酵素を内包しております。 リソソームは不要な物質を分解することで生体内恒常性の維持に寄与しています。リソソームの機能不全は神経変性疾患等の発症・進展に深く関与していることから、リソソームを詳細に解析することが病態の解明や治療薬の開発に有用であると考えられております。
リソソームの生細胞解析では低分子蛍光色素を用いたライブイメージングが汎用されてきましたが特異性やpH変化による染色能の低下が課題として挙げられてきました。本製品はよりリソソーム特異性が高くpH変化に抵抗性の低分子蛍光色素であり、より正確なリソソームの生細胞解析を可能とします。また、滞留性が高いため長期間のイメージングが必要な実験系にも適応可能です。
1. LysoPrime Greenと従来の蛍光色素との違いについて
蛍光特性
LysoPrime Greenの蛍光特性
λex: 456 nm λem: 540 nm <観察条件> Ex : 400 – 490 nm, Em : 500 – 600 nm |
内容
LysoPrime Green | 10 μl x 1(35 mm dish 10枚分) 10 μl x 3(35 mm dish 30枚分) |
保存条件
-80 ℃にて保存してください。
- 短期間の保存温度の違い(室温、4℃、 -20℃、-80℃)による染色能への影響は小社webサイトの製品ページ(品コード:L261)のFAQに掲載しております。
必要なもの
- 培地
- Hanks’ Balanced Salt Solution (HBSS) または無血清培地
- マイクロピペット
- マイクロチューブ
溶液調製
LysoPrime Green working solution の調製
LysoPrime Green溶液を培地で2000 倍希釈し、LysoPrime Green working solutionを調製する。
- 細胞種によって最適濃度が異なります。はじめてご使用される際には最適条件をご検討ください。(推奨希釈域: 1000 - 4000倍)
- 本色素は血清成分の影響を受けるため、血清不含培地またはHBSSで希釈してください。
- Working solutionは保存できません。調製したその日のうちに、ご使用ください。
操作
- 細胞をディッシュに播種し、5% CO2存在下、37 ℃で培養する。
- 培地を取り除き、HBSSもしくは無血清培地を用いて1回洗浄する。
- LysoPrime Green working solutionを加え、5% CO2存在下、37 ℃で30分インキュベートする。
- 上澄みを取り除き、HBSSもしくは無血清培地を用いて2回洗浄する。
- 培地を加え、蛍光顕微鏡で観察する。
実験例
共焦点蛍光顕微鏡を用いたリソソーム中pH変化の観察
- μ-slide 8 well plate (ibidi社) にHeLa細胞(1.0 x 104 cells/well)を播種し、5%CO2存在下、37℃で一晩培養した。
- HBSSで1回洗浄後、100 nmol/l LysoTracker Red (LTR: pH依存性リソソーム染色色素)を含んだLysoPrime Green working solution (2000倍希釈)をwellに200 μl加え、37 ℃で30分インキュベートした。
- 上澄みを取り除き、PBSで2回洗浄した。
- HBSSで調製した100 nmol/l Bafilomycin (リソソーム酸性化阻害剤)をwellに200 μl加え、37 ℃で30分インキュベートした。
- 上澄みを取り除き、PBSで2回洗浄した。
- 新しい10% FBS含有MEM培地をwellに200 μl加え、共焦点蛍光顕微鏡で観察した。
図2. Bafilomycin A1によるリソソームpHへの影響
CTRL: 通常培養条件、Bafilomycin A1: リソソーム酸性化阻害条件 LysoPrime Green 検出波長 : 488 nm (Ex), 500 – 570 nm (Em) LysoTracker Red (LTR) 検出波長 : 548 nm (Ex), 550 – 650 nm (Em) |
よくある質問/参考文献
L261: LysoPrime Green- High Specificity and pH Resistance
Revised Mar., 17, 2023