はじめに
Liperfluoは過酸化脂質検出用の試薬であり、過酸化脂質で特異的に酸化されエタノール等の有機溶媒中で強い蛍光を発します。Liperfluo酸化体の励起波長および蛍光波長はそれぞれ524 nm、535 nmで、測定試料への光によるダメージや試料由来の自家蛍光の影響を軽減できます。本試薬は、ジイソキノリン環の片方にテトラエチレングリコール基が導入されたもので、Spy-LHPよりも水系バッファー中での分散性が向上しています。Liperfluo酸化体は水中ではほとんど蛍光を発しませんが、細胞膜等の脂溶性の高い部位では蛍光性となることから、容易に蛍光顕微鏡による生細胞の過酸化脂質のイメージングやフローサイトメトリーによる細胞の過酸化脂質の分析に使用することができます。
内容
Liperfluo | 50 μg × 5 |
保存条件
遮光、0-5℃で保存して下さい。
溶液調製
1 mmol/l Liperfluo DMSO solutionの調製
- Liperfluo を含むマイクロチューブに60 μlのDMSOを加える。
- マイクロチューブをアルミホイル等で包んで遮光し、約 2 分間ボルテックスをする。
- 調製後は遮光して、その日のうちにご使用ください。
左:溶解できている状態
右:溶け残りがある状態
- Liperfluoの固体物が底面にある場合は、ボルテックスを延長してください。
Liperfluo 使用溶液の調製
Liperfluoの最適な染色濃度は実験条件によって異なるため、以下の手順に従って調製する。
蛍光顕微鏡観察
1 mmol/l Liperfluo DMSO溶液を無血清培地等で希釈したWorking solutionを使用する。
フローサイトメトリー
1 mmol/l Liperfluo DMSO溶液を測定試料の細胞懸濁液に直接加える。
操作
- 細胞をディッシュ等に播種し培養する。
- 培地を除去後、無血清培地で1回洗浄する。
- 適当な濃度に調製したLiperfluo溶液を添加し、37°C、30分間インキュベートする。
- 実験条件等によりLiperfluoの最適濃度が異なります。最適条件をご検討ください。
- 上澄みを除去後、無血清培地で2回洗浄する。
- 蛍光顕微鏡またはフローサイトメトリーにて測定する。
実験例1
HeLa細胞を用いた共焦点蛍光顕微鏡による観察
- HeLa細胞(3.0×104 cells/well 、血清入りMEM培地)をμ-スライド8ウェル(ibidi社製)に播種し、37°C、5%CO2インキュベーター内で一晩培養した。
- 培地を取り除き、細胞を無血清MEM培地で1回洗浄した。
- 無血清MEM培地で希釈した1 μmol/lのLiperfluo溶液200 μlをウェルに加え、37°C、5%CO2インキュベーター内で30分間静置した。
- 溶液を取り除き、HBSS 200 μlで2回洗浄した。
- HBSSで希釈した500 μmol/lのt-BHP -(tert-buthyl hydroperoxide)溶液をウェルに200 μl添加し、37°C、5%CO2インキュベーター内で60分間静置した。
- 共焦点蛍光顕微鏡で観察した(励起波長:488 nm、蛍光波長:500-550 nm)
Hela細胞における過酸化脂質のイメージング
実験例2
HeLa細胞を用いたフローサイトメーターによる測定
- HeLa細胞(1.0×105 cells/well 、血清入りMEM培地を6ウェルプレート(Thermo社製)に播種し、37°C、5%CO2インキュベーター内で一晩培養した。
- 培地を取り除き、細胞を無血清MEM培地で1回洗浄した。
- 無血清MEM培地で希釈した1 μmol/lのLiperfluo溶液2 mlをウェルに加え、37°C、5%CO2インキュベーター内で30分間静置した。
- 溶液を取り除き、HBSS 2 mlで2回洗浄した。
- HBSSで希釈した500 μmol/lのt-BHP -(tert-buthyl hydroperoxide)溶液をウェルに2 ml添加し、37°C、5%CO2インキュベーター内で60分間静置した。
- トリプシン処理により細胞をはがした後、血清入りMEM培地でマイクロチューブに回収しHBSSに置換した。
- フローサイトメーターで測定した。 ( 励起波長:488 nm、蛍光波長:515-545 nm)
Liperfluo を用いた過酸化脂質の定量
実験例3
Erastinを用いてフェロトーシスを誘導した細胞での蛍光イメージング
- A549細胞(1.0×105 cells/well 、血清入DMEM培地)をμ-スライド8ウェル(ibidi社製)に播種し、37°C、5%CO2インキュベーター内で一晩培養した。
- 培地を取り除き、無血清DMEM培地で希釈した50 μmol/lのErastin溶液200 μlをウェルに加え、37°C、5%CO2インキュベーター内で一晩静置した。
- 培地を取り除き、HBSS 200 μlで2回洗浄した。
- HBSSを取り除き、HBSSで希釈した5 μmol/lのLiperfluoL溶液200 μlをウェルに加え、37°C、5%CO2インキュベーター内で30分間静置した。
- 溶液を取り除き、HBSS 200 μlで2回洗浄した。
- 共焦点蛍光顕微鏡で観察した(励起波長:488 nm、蛍光波長:500-550 nm) 。
A549 細胞における Erastin刺激による過酸化脂質のイメージング
シスチントランスポーター阻害剤である Erastin で処理することによりフェロトーシスを誘導した細胞内の過酸化脂質が増加することを確認した。
蛍光特性
過酸化脂質による Liperfluo の励起および蛍光スペクトル変化 (エタノール溶媒中)
よくある質問/参考文献
L248: Liperfluo
Revised Mar., 01, 2024