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はじめに

鉄は生体内において最も重要な金属元素の一つです。近年、鉄依存性の細胞死 ”フェロトーシス” が提唱され、細胞内鉄イオンの研究が注目を集めております。Iron Assay Kit-Colorimetricは、試料の前処理から鉄イオン濃度の測定まで約2時間でデータを取得することが可能得です。組織溶解液に鉄イオンプローブFerene Sを添加し、その吸光度を測定することにより組織試料中の二価鉄量を算出することができます。さらに、キット付属の還元剤を用いて試料中の鉄イオンをすべて二価鉄に還元することで濃度を測定し、二価鉄量を差し引くことで試料中の三価鉄量を算出することが可能です。

 

図1. Iron Assay Kitの測定原理

キット内容

 

  50 tests
Probe Solution 7 ml× 1
Assay Buffer  20 ml× 1
Standard (黄色キャップ)  150 μl (1 mmol/l)× 1
Reducer (青色キャップ) × 1

 

                                            1kitで 測定可能なサンプル数(n=3)

 

保存条件

遮光し0–5℃で保存してください。

必要なもの (キット以外)

- ホモジナイザー or 乳棒/すり鉢
- 20–200 µlのマルチチャンネルピペット
- 100–1000 µl、20–200 µlマイクロピペット
- 1.5 mlマイクロチューブ
- PBS (-)
- 氷浴
- 遠心分離機
- マイクロプレートリーダー (593 nm)
- 96穴マイクロプレート
- 超音波洗浄機

使用上の注意

- キットの中の試薬は、室温に戻してからご使用ください。
- 輸送中の振動等により、内容物がチューブ壁面やキャップ裏面に付着している場合がありますので、内容物を底面に落とした後に開封して下さい。
- 正確な実験結果を得るため、できるだけ新鮮な組織を使用し、サンプルの調製中はサンプルを氷浴上に置くようにしてください。
- 正確な測定値を得るため、1つの測定試料につき複数 (n=3 以上) のウェルをご使用下さい。
- 鉄含有量の多いサンプルは、最終濃度が標準曲線の範囲内に入るようにAssay Bufferで希釈してご使用ください。

溶液調製

Reducer solutionの調製

1.  ReducerにAssay Buffer 300 µlを加え、超音波照射 (約1分間)により完全に溶解する。

  • reducer solutionは冷蔵 (0–5℃)で2ヶ月間保存可能です。

 

組織試料の調製

1. 新鮮な組織サンプルを1.5 mlマイクロチューブに秤量する。(例: 100 mg)
2. 冷えたPBS (-)を加えピペッティングにて洗浄し、16,000×gで4分間遠心した後、上清を除去する。
3. Assay Buffer 1.3 mlを加え氷浴上でホモジナイズする。
4. 試料を含むマイクロチューブを5分間超音波照射する (試料の温度を一定に保つため、1分間の超音波照射後に20秒ずつ氷浴上で冷却する)。
5. 16,000×gで10分間遠心し、上清を新しい1.5 mlマイクロチューブに回収する。
6. 回収した上清を400 μlずつ1.5 mlマイクロチューブに移し、二価鉄サンプル溶液、総鉄サンプル溶液、およびサンプルブランク溶液を調製する。

 

Standard solutionの調製

1. Standard(1 mmol/l)100 μlを、Assay Buffer 900 μlを含む1.5 mlマイクロチューブに加え、100 μmol/l standard solutionを調製する。
2. 図2のように各1.5 mlマイクロチューブにAssay Buffer 400 µlを添加しておき、100 µmol/l standard solution 400 µlを加え混合した後、400 µlを次のチューブに移す。この操作を繰り返し、standard solution(50, 25,12.5, 6.25, 3.125, 1.563, 0.781, 0 μmol/l)を調製する。

図2. Standard solutionの調製

操作

1. Standard solutionにreducer solutionを5%の体積で加える。 ( 50–1.563, 0 μmol/l standard solution 400 µlにreducer solutionを各20 μl、0.781 μmol/l standard solution 800 µlにreducer solution 40 μl添加する)。

2. 二価鉄サンプル溶液、サンプルブランク溶液にそれぞれ5%体積のAssay Bufferを加える。例:二価鉄サンプル溶液およびサンプルブランク溶液400 µlにAssay Buffer 20 µlを添加する。

3. 総鉄サンプル溶液に5%体積のreducer solutionを加える。例:総鉄サンプル溶液400 µlにreducer solution 20 µlを添加する。

4. すべてのstandard solution、二価鉄サンプル溶液、総鉄サンプル溶液およびサンプルブランク溶液をインキュベーター (37℃)に入れ、15分間インキュベートする。

5. 操作4で調製した溶液を105 µlずつ96穴プレートの各ウェルに加える (表1および表2を参照)。

6. Standard solution、二価鉄サンプル溶液および総鉄サンプル溶液の各ウェルにそれぞれProbe Solution 100 µlを加える。サンプルブランク溶液のウェルにAssay Buffer 100 µlを加える.

7. 37℃で1時間インキュベートする。

8. プレートリーダー (593 nm) で吸光度を測定する。

9. 測定試料中の二価鉄、総鉄および三価鉄濃度を検量線から算出する。

 ※三価鉄濃度は、総鉄濃度から二価鉄濃度を差し引くことで算出することができます。

表1. Standard solution、二価鉄サンプル溶液、総鉄サンプル溶液およびサンプルブランク溶液の各ウェルに加える溶液

 

表2. 96穴プレートレイアウト例 (n= 3)

 

 

実験例

マウス由来肝臓組織中の二価鉄と三価鉄の測定

1. 肝臓組織100 mgを1.5 mlマイクロチューブに秤量した。

2. 冷えたPBS (-) 1 mlを加え、組織表面をピペッティングによりPBSで20回洗浄し、ボルテックスで10秒間攪拌後、16,000×gで4分間遠心し、上清を除去した。

3. 組織サンプルをすり鉢に移した後、液体窒素を添加しサンプルを凍結した。十分に乳棒ですりつぶして粉末状にした後、1.5 mlマイクロチューブに回収し、Assay Buffer 1.3 mlを加えた。

4. 試料を含むマイクロチューブを超音波水浴中に5分間浸漬した。(試料の温度上昇を防ぐため、1分ごとに20秒間氷浴上に置いた。)

5. 16,000 gで10分間遠心分離し、上清を新しい1.5 mlマイクロチューブに回収する。

6. 回収した上清を400 μlずつ1.5 mlマイクロチューブに移し、二価鉄サンプル溶液、総鉄サンプル溶液、およびサンプルブランク溶液を調製した。

7. Standard solutionを調整した(Standard solutionの調整参照)

8. Standard solutionと総鉄サンプル溶液にreducer solution 20 µl、 二価鉄サンプル溶液とサンプルブランク溶液にAssay Buffer 20 µlを加えた。

9. すべての調整試料を37℃ で15分間インキュベートした。

10. 表1と表2を参考に、96穴プレートに試料と試薬を205 µl添加し、37℃で1時間インキュベートした。

11. インキュベート後、プレートリーダー (593 nm) で吸光度を測定し、試料中の二価鉄と三価鉄の濃度を検量線から算出した。 

図3. 標準曲線

図4. 本キットを用いた肝臓組織中の二価鉄と三価鉄濃度の測定

I291: Iron Assay Kit -Colorimetric-
Revised Sep., 10, 2025