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はじめに

 細胞が分泌する細胞外小胞(Extracellular vesicles: EVs)の一種であるエクソソームは、様々なタンパク質や核酸などを内包しており、エクソソームを介して内包物質が伝達されることで、受け手側の細胞に様々な影響を与えることが明らかとなっています1)。近年ではエクソソームに関する多くの研究が報告されており、がん研究分野におけるがんの悪性化や転移、間葉系幹細胞由来エクソソームを応用した治療研究、エクソソームの内包物質を分析対象とする診断研究など、多くの研究に関わる非常に重要な研究ツールです。

 ExoIsolator Ⅱ DirectSpin は、超遠心法よりも高い回収効率で細胞培養上清由来のエクソソームを得ることができるエクソソーム精製キットです。本製品は、カップ内にあらかじめフィルターがセットされており、細胞培養上清を本フィルターカップ内に添加して遠心操作を行うだけでフィルター上にエクソソームを捕捉できます。複雑な操作を必要とせず、簡便にエクソソームの回収が可能です。

 

図1 精製の原理

 

キット内容

3 tests:  ExoIsolatorⅡ DirectSpin x3
10 tests:  ExoIsolatorⅡ DirectSpin x10
30 tests:  ExoIsolatorⅡ DirectSpin x30

 

保存条件

常温で保存してください。

必要なもの (キット以外)

  • 0.22 μm 滅菌ろ過フィルター
    • 細胞培養上清を前処理し、夾雑物を減らす目的で使用します。
  • マイクロピペット
  • 50 ml コニカルチューブ
  • PBS (-)
  • 遠心機
    • 50 ml コニカルチューブ用アングルローター対応
    • 温度設定可能な機種を推奨

使用上のご注意

  •  本製品はディスポーザブル(使い捨て)です。一度使用したフィルターカップを洗浄して再利用することは避けてください。
  • メンブレンフィルター部位は非常に薄く破れやすいため、取扱いにご注意ください。
  • 本キットの推奨サンプル量は 1–10 ml です。サンプルの種類により精製に要する時間は異なります。
  • サンプルの前処理に孔径が 0.22 μm より大きい(例: 0.45 μm など)滅菌ろ過フィルターを用いると、夾雑物による目詰まりでその後の遠心操作に時間がかかる場合があります。

前準備

Step 1

実験に応じた細胞の培養上清を準備する。

Step 2

培養上清を 0.22 μm 滅菌ろ過フィルターに通し、ろ過を⾏う (サンプルの前処理)。

操作

  1. 50 ml コニカルチューブに ExoIsolator Ⅱ DirectSpin (精製デバイス)をセットし、サンプル溶液を 1-10 ml 添加して、キャップを優しく締める。
    • メンブレンフィルターに直接添加するのは避け、デバイスの壁面に当てるように添加してください。キャップを過度に締め付けると破損する恐れがあります。止まる位置まで軽く締めてください。
  2. アングルローターを使用し、3,000 × g  (4,200 rpm) 、4 ℃で約2~8時間遠心する(濃縮操作)。
    • サンプルにより遠心時間は変動します。初めて検討するサンプルの場合、1時間 おきに液量を確認し、液量が200–400 μl 程度になるまで遠心してください。精製デバイスを1本しか使用しない場合は、サンプルを含む50mlコニカルチューブと同じ重量(水を添加して重量を調整)のバランス用コニカルチューブを準備し、対称になるように遠心機にセットして遠心してください。
  3. 遠心完了後、PBS 1 ml をデバイスの壁面に当てるように添加する。
    • 本操作を翌日行う場合は、サンプルを含む50mlコニカルチューブごと冷蔵庫(4 ℃)で一晩保管してください。
  4. アングルローターを使用し、3,000 × g  (4,200 rpm) 、4 ℃ で約0.5~2時間遠心する(精製操作1回目)。
    • サンプルにより遠心時間は変動します。液量が200–400 μl 程度になるまで遠心してください。
  5. 遠心完了後、再度 PBS 1 ml をデバイスの壁面に当てるように加える。
  6. アングルローターを使用し、3,000 × g  (4,200 rpm) 、4 ℃で約0.5~2時間遠心する(精製操作2回目)。
    • サンプルにより遠心時間は変動します。液量が200–400 μl 程度になるまで遠心してください。
  7. 遠心完了後、マイクロピペットを使用して、デバイス内に残った溶液をフィルター表面に吹き付けて洗い流し(フラッシング)、フィルター上のエクソソームを懸濁させる(約20回)。
    • ピペットチップがフィルターに直接触れないようご注意ください。
  8. 懸濁したエクソソーム溶液(約200–400 μl)を新しい 1.5 ml マイクロチューブに移す。
    • 回収したエクソソーム溶液の量を確認してください。
  9. 新しい PBS をフィルター表面に添加した後、再度フラッシングを行い、フィルター上のエクソソームを懸濁させる(約20回)。
    • 添加する PBS の液量は、操作8で確認した溶液量と合わせて合計 500 μl になるよう調整してください。
       例:操作8で 回収した溶液量が300 μl の場合、添加する PBS の液量は 200 μl になります。
  10. 懸濁したエクソソーム溶液を全量回収し、操作8で使用した 1.5 ml マイクロチューブに移して全量500μlのエクソソーム懸濁液とする。
※1  細胞培養上清サンプルにより遠心時間は変わります
操作図

 

実験例

HEK293S 細胞の培養上清由来エクソソームの回収

  1. HEK293S 細胞を無血清培地で 5 × 10cells/ml となるように調製し、125 ml バッフル付三角フラスコに 30 ml 入れ、インキュベーター(37 ℃、5% CO2存在下)で2日間振盪培養した(振盪速度: 155 rpm)。
  2. 培養懸濁液を 50 ml コニカルチューブに回収し、1,500 rpm で 5 分間 遠心した後、培養上清を新しい 50 ml コニカルチューブに回収し、4 ℃ で保存した(培養上清①)。
  3. 細胞のペレットを新しい無血清培地 30 ml に懸濁し、125 ml バッフル付三角フラスコに入れて同条件でさらに 2日間振盪培養した。
  4. 培養懸濁液を 50 ml コニカルチューブに回収し、1,500 rpm で 5分間 遠心した後、培養上清を新しい 50 ml コニカルチューブに回収し、4 ℃で保存した(培養上清②)。
  5. 操作2と4で回収した培養上清を合わせ、0.22 μm のフィルターでろ過した(前処理サンプル)。
  6. 50 ml コニカルチューブに ExoIsolator Ⅱ DirectSpin をセットした後、前処理サンプルを 10 ml 添加し、キャップを優しく締めた。
  7. アングルローターを使用し、 3,000 × g  (4,200 rpm) 、4℃で 4.5時間遠心した(約300 μl 残存)。 
  8. 遠心完了後、サンプルを含む50mlコニカルチューブごと冷蔵庫(4 ℃)で一晩保管した。
  9. 翌日、PBS 1 ml をデバイスの壁面に当てるように添加した後、アングルローターを使用し、3,000 × g  (4,200 rpm) 、4 ℃で2時間 遠心した(約300 μl 残存)。
  10. さらに PBS 1 ml をデバイスの壁面に当てるように添加した後、 3,000 × g  (4,200 rpm)、4 ℃で2時間遠心した(約300 μl 残存)。
  11. デバイス内に残った溶液をフィルター表面に吹き付けて洗い流し(フラッシング)、フィルター上のエクソソームを懸濁させた(約20回)後、懸濁したエクソソーム溶液300 μlを1.5 ml マイクロチューブに移した。
  12. 新しい PBS 200 µl をフィルター表面に添加した後、再度フラッシングを行い、フィルター上のエクソソームを懸濁させた(約20回)。
  13. 懸濁したエクソソーム溶液を全量回収し、操作11で使用した 1.5 ml マイクロチューブに移して全量500 μlのエクソソーム懸濁液とした。
  14. 得られたエクソソームをNTA(ナノ粒子トラッキング解析)法およびウェスタンブロットによって解析した。

[NTA法]

エクソソームの粒子数は、Nanosight NS300 (Quantum Design, camera level 13, detect threshold 5) にて測定した。

[ウエスタンブロッティング]

  1. 精製したエクソソームを還元剤を含まないsample buffer と混ぜ、95 ℃で5分間インキュベートした。
  2. 調製したサンプルの SDS-PAGE を行い(SuperSep Ace, 10-20%, 13well, Wako)、続いてPVDF膜(Trans-Blot Turbo Transfer System Transfer Pack, Bio-Rad)に転写した。
  3. 次の表に示す抗体を使い、エクソソームのマーカーであるCD63、CD9との抗原抗体反応を行った。
      一次抗体 二次次抗体
    CD63 Monoclonal mouse anti-CD63 antibody
    (diluted 1:1000, cat. no. MEX002-3, MBL)
    Polyclonal goat anti-mouse antibody conjugated with
    HRP (diluted 1:2000, cat. no. ab205719, abcam)
    CD9 Monoclonal rabbit anti-CD9 antibody
    (diluted 1:1000, cat. no. ab236630, abcam)
    Polyclonal goat anti-rabbit antibody conjugated with
    HRP (diluted 1:2000, cat. no. ab97051, abcam)
  4. PVDF膜を SuperSignal West Pico PLUS Chemiluminescent Substrate (Thermo Fisher Scientific) で処理した。
  5. PVDF膜状のバンドをSyngene Pxi (Syngene)を用いて検出した。

 

図2 回収エクソソームの粒度分布
 
図3 精製前後の総粒子数と回収率 図4 精製前後のエクソソームマーカーの発現量の比較

参考文献

  1. Kalluri, R.; LeBleu, V. S. The biology, function, and biomedical applications of exosomes. Science. 2020,367(6478).

EX12: ExoIsolator II DirectSpin
Revised Apr., 29, 2026