はじめに
細胞内の不要なタンパク質や細胞小器官は、再利用または代謝するための分解過程が存在し、オートファジーと呼ばれています。この過程において、二重膜で構成される隔離膜は次第に伸長し、不要物を覆いオートファゴソームを形成します。内容物は、オートファゴソームとリソソームが融合したオートリソソームの段階で消化酵素により分解を受けます。この細胞機能はパーキンソン病などの神経変性疾患、老化に関りがあることが分かってきており盛んに研究されています。
本色素は、疎水性および酸性環境で蛍光発光する特性を有します。そのため、オートファゴソームがリソソームと融合したオートリソソームを検出します。低分子のため細胞への導入も容易であり、遺伝子導入などの必要はありません。本色素を細胞へ導入後は、蛍光顕微鏡下でのライブセルイメージングやフローサイトメトリーによる定量が可能です。
図1 DALGreen によるオートファジー検出
内容
DALGreen - Autophagy Detection | 20 nmol x 1 |
保存条件
遮光、-20oC にて保存してください。
必要なもの
- Dimethyl sulfoxide (DMSO)
- 培養培地
- Hanks’ HEPES buffer またはフェノールレッド不含培地
- Micropipettes
溶液調製
1 mmol/l DALGreen DMSO stock solution の調製
DALGreen 20 nmol を含むチューブに20 μl のDMSO を加えピペッティングにより溶解する。
- 調製後は-20℃で保存してください。調製後1 か月間安定です。
DALGreen working solution の調製
最終濃度が0.1-1.0 μmol/l になるようにDALGreen DMSO stock solution を培養培地で希釈する。
- 細胞種により最適濃度が異なります。最適条件をご検討ください。
操作
- 細胞をディッシュに播種し培養する。
- 培地を除去後、培養培地で1 回洗浄する。
- 調製したDALGreen working solution を添加し、37oC で30 分間インキュベートする。
- 上澄みを除去後、培養培地で2 回洗浄する。
- オートファジー誘導刺激剤を含む培地を加え37oC でインキュベートする。
- オートファジー誘導条件に応じてインキュベート時間を設定して下さい。
- 蛍光顕微鏡またはフローサイトメトリーにて測定する。
実験例
共焦点レーザー顕微鏡による観察
μ-slide 8 well (Ibidi) にHeLa 細胞を播種し37oC、CO2 インキュベーターにて一晩培養した。培養培地で1 回洗浄後、1 μmol/l DALGreen working solution を添加し30 分インキュベートした。培養培地で2 回洗浄後、培養培地またはアミノ酸不含培地(富士フイルム和光純薬, 製品コード:048-33575)で6 時間培養した。Hanks’ HEPES buffer で1 回洗浄後、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。
図2 様々なオートファジー誘導条件による共焦点レーザー顕微鏡画像
DALGreen 添加後、A) 培養培地で6 時間培養した細胞、B) アミノ酸不含培地で6 時間培養した細胞。
検出波長: 488 nm (Ex)、500- 563 nm (Em)
スケールバー: 20 μm
フローサイトメトリーによる検出
24 well プレートにHeLa 細胞を播種し37oC、CO2 インキュベーターにて一晩培養した。培養培地で1 回洗浄後、1μmol/l DALGreen working solution を添加し30 分インキュベートした。培養培地で2 回洗浄後、培養培地またはアミノ酸不含培地で20 時間培養した。PBS で1 回洗浄後、トリプシンで細胞を剥離し遠心にて細胞を回収した。Hanks’ HEPES buffer に懸濁させ、フローサイトメトリーで測定した。
図3 フローサイトメトリーを用いた検出
DALGreen 添加後、a) 培養培地で20 時間培養した細胞、b) アミノ酸不含培地で20 時間培養した細胞。
検出波長: 405 nm (Ex)、485- 535 nm (Em)
蛍光特性
DALGreen の励起、蛍光スペクトル
![]() |
λex : 405 nm
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よくある質問/参考文献
D675: DALGreen - Autophagy Detection
Revised Jul., 12, 2023