はじめに
解糖系、クエン酸回路などの代謝系における酵素活性や代謝産物を定量する際、得られた測定値を細胞数で補正することが望まれます(図1参照)。Cell Count Normalization Kitは核酸染色試薬(Hoechst 33342)を用い、得られた蛍光強度により細胞数の補正を行うため、目視カウントのような煩雑さがありません。また、タンパク質やATP量で定量する方法のように細胞溶解操作を必要としないため、細胞数の補正を簡便に行うことができます。細胞種や測定方法など、実験系に応じた最適な測定方法を選択いただけます。
図1 細胞数補正の必要性
キット内容
200 tests | 1000 tests | |
Staining Solution | 50 μL x 1 | 250 μL x 1 |
Dilution Buffer | 10 mL x 4 | 100 mL x 2 |
Quenching Buffer | 10 mL x 2 | 100 mL x 1 |
保存条件
0-5 °Cで保存して下さい。
キット以外に必要なもの
- プレートリーダー(Ex: 350 nm, Em: 461 nm)
- 96穴ブラックマイクロプレート(透明底)
- インキュベーター(37 °C、5%CO2)
- マイクロチューブ(浮遊細胞をご使用の場合)
測定方法の選択
下記2つの方法から実験に応じた測定手法を選択いただけます。
-
1. 直接添加法
洗浄操作がないため、剥がれやすい細胞をご使用の場合におすすめです。
<手順>
- Working solutionの添加
- 30分間のインキュベーション(染色)
- 蛍光測定
- 測定には下方励起・下方蛍光測定が可能なプレー トリーダーをご使用ください。
-
2. 培地交換法
上方・下方測定どちらでも測定可能です。
<手順>
- Working solutionの添加
- 30分間のインキュベーション(染色)
- 上清の置換
- 蛍光測定
注意事項
- 細胞種や培養条件によって測定可能な細胞数が異なります。初めて実験する際は、段階希釈した細胞をプレートに播種後、目的の実験と同様の条件で培養後本キットにて評価して下さい。得られた蛍光強度を用いて検量線(X軸:細胞数、Y軸:蛍光強度)を作成し直線性がある細胞数範囲内で評価して下さい。
- 96穴マイクロプレートを用いる場合、以下の播種細胞数の目安をご参照下さい。
付着細胞(HeLa細胞):1000-10000 cells/well 浮遊細胞(Jurkat細胞): 5000-60000 cells/well - 試薬ブランクを測定する場合は、細胞を播種していないウェルで培地交換法または直接添加法と同様の操作を行いブランクを作成して下さい。
目的の実験が蛍光法の場合、本キットとの同時測定はお勧めしません。目的の実験の測定後、本キットにて測定下さい。
溶液調製
Working solution の調製
1. 直接添加法
Staining Solution をQuenching Buffer で500 倍希釈しWorking solution を作成する。
- Working solution は保存できません。その日のうちにお使いください。
- 96 穴プレートをご使用の場合、1 ウェルあたり100 μL のWorking solution が必要です。
2. 培地交換法
Staining Solution をDilution Buffer で500 倍希釈しWorking solution を作成する。
- Working solution は保存できません。その日のうちにお使いください。
- 96 穴プレートをご使用の場合、1 ウェルあたり100 μL のWorking solution が必要です。
測定法
直接添加法(付着細胞のみ)
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- 細胞をプレートに播種し、目的の実験を行う。
- Working Solutionを各wellに100 μLずつ添加する。
- 37 °C、5% CO2インキュベーターで30分間インキュベートする。
- 蛍光プレートリーダーで測定する。(下方励起,下方蛍光測定、Ex: 350 nm, Em: 461 nm)
-
図2 直接添加法により作成した検量線
培地交換法
<付着細胞>
- 細胞をプレートに播種し、目的の実験を行う。
- Working solutionを各ウェルに100 μLずつ添加する。
- 37 °C、5% CO2インキュベーターで30分間インキュベートする。
- 上清全量を取り除き、各ウェルにDilution Bufferを100 μLずつ添加する。
- 蛍光プレートリーダーで測定する。(Ex: 350 nm, Em: 461 nm)
<浮遊細胞>
- 細胞をプレートに播種し、目的の実験を行う。
- Working solutionを各ウェルに100 μLずつ添加する。
- 37 °C、5% CO2インキュベーターで30分間インキュベートする。
- 各ウェルの細胞をマイクロチューブに回収、5分間遠心(300×g)した後、Dilution Buffer を100 μLずつ添加する。
- プレート用遠心機をお持ちの場合、マイクロチューブへの細胞の回収は不要です。プレートをそのまま5分間遠心(300×g)し、注意深く上清を除去後、Dilution Buffer 100 μLで置換して下さい。
- 蛍光プレートリーダーで測定する。(Ex: 350 nm, Em: 461 nm)
図3 培地交換法により作成した検量線
実験例
2-Deoxy-D-glucose(2-DG)による解糖系阻害評価(Lactate Assay Kit-WST[L256]との併用)
- HeLa細胞(5,000 cell/well)を96穴ブラックプレート(透明底)に播種し、37 °C、5%CO2インキュベーターで 一晩培養した。
- 培地を吸引除去し、培地で目的の濃度に調製した2-DG溶液100 μLを加え、37 °C、5%CO2インキュベーターで一晩培養した。
- Lactate Assay Kit-WSTの測定方法に従い上清中のLactate量(mmol/L)を測定した。
- 求めたLactate量を本キットの培地交換法により得られた蛍光強度で補正した。
図4 L256により求めたLactate量(Cell Count Normalization Kitによる補正後)
よくある質問/参考文献
C544: Cell Count Normalization Kit
Revised May., 19, 2023