開催後記 第35回フォーラム・イン・ドージン
第35回フォーラム・イン・ドージン
「フェロトーシス研究の進化と展望~フェロトーシスが語る細胞の運命を握る鉄の力~」
第2回 Dojindo Forum in China
「Mitochondrial Physiology and Function」
第35回フォーラム・イン・ドージン
2012年にコロンビア大学のStockwell教授らにより提唱されたフェロトーシス(鉄に依存した細胞死)が心筋梗塞や脳卒中などの虚血性疾患、アルツハイマー病やパーキンソン病、ALSなどの神経変性疾患、がんや肝炎など様々な疾患との関連性が明らかとなり、近年注目を集めている。昨年、日本に先んじてこのフェロトーシスをテーマとして第1回Dojindo Forum in Chinaを開催し大盛況であった。今年は舞台を日本に移し、第35回フォーラム・イン・ドージンのテーマ(「フェロトーシス研究の進化と展望~フェロトーシスが語る細胞の運命を握る鉄の力~」)として10月24日に開催した。フェロトーシスの提唱者であるStockwell教授にアメリカからウェブ配信にて、また国内のフェロトーシス研究のトップランナー6名の先生方には熊本にお越しいただき、ご講演頂いた。講演はウェブ配信され、当日の聴講者は300名を超えた。座長は例年通り、熊本大学富澤一仁教授、三隅将吾教授に務めて頂いた。以下講演タイトルと演者の先生方を記す(講演プログラム順)。
「Ferroptosis and Metabolism: Mechanisms and Therapeutic Implications」
Brent R. Stockwell 教授(コロンビア大学)
「フェロトーシスとリポキシトーシス-脂質酸化の鉄依存性と細胞死経路の違い-」
今井 浩孝 教授(北里大学)
「フェロトーシス研究を加速する二価鉄蛍光イメージングプローブの開発」
平山 祐 教授(岐阜薬科大学)
「細胞の鉄動態とフェロトーシス感受性」
諸石 寿朗 教授(東京科学大学)
「細胞内鉄ダイナミクスが制御する細胞運命」
築取 いずみ 講師(京都大学)
「心血管病におけるフェロトーシス」
池田 昌隆 特任助教(九州大学病院別府病院)
「がん研究におけるフェロトーシスの意義」
豊國 伸哉 教授(名古屋大学)
今回は近年注目されているフェロトーシス研究がテーマということもあり、基礎研究から臨床分野に至る幅広い議論が活発に行われ、大盛況のうちにフォーラムを終えることができた。フェロトーシスは多くの疾病に関与していることが明らかとなっており、今後はその詳細なメカニズム解明とフェロトーシスをターゲットとした治療法の開発が待ち望まれる。
第2回Dojindo Forum in China
近年、中国ではライフサイエンス分野の研究が目覚ましい進展を遂げており、世界的にも注目を集めている。特に、ゲノム編集技術やバイオ医薬品の開発、人工知能を活用した創薬などの領域で、革新的な成果が次々と生まれている。第2回目となる今年は、ミトコンドリア研究にフォーカスし、「Mitochondrial Physiology and Function」というタイトルで11月1日に上海にあるOkura Garden Hotelで開催した。中国国内外から5名の先生をお招きし、最新の研究内容を発表していただいた。講演は日本と同様オンライン形式により配信された。聴講者は4100名を超え、ミトコンドリア研究の熱さを感じた。
大阪大学石原直忠教授によるミトコンドリア研究のオバービューのご講演からスタートした。以下講演タイトルと演者の先生方を記す(講演プログラム順)。
「Dynamics of mitochondrial membranes and genome: Protection against mitochondrial dysfunction」
石原 直忠 教授(大阪大学)
「Novel regulatory mechanisms of mitophagy by targeting PINK1」
Hanming Shen 教授(University of Macau)
「The mitochondrial permeability transition pore: past, present and future」
Paolo Bernardi 教授(University of Padova)
「The mitochondrial relay with the nucleus: form and function」
Michelangelo Campanella 教授(Queen Mary University of London)
「Mitochondrial quality and the quality of life」
Xu-Dong Liao 教授(Nankai University)
今回の講演では、ミトコンドリアはエネルギー産生だけではなく、融合と分裂によりその機能と品質を動的に管理していることが示された。そして、損傷したミトコンドリアは「マイトファジー」という仕組みで除去され、細胞の健康を維持している。この恒常性維持システムの破綻は、神経変性疾患やがんなど多くの疾患に関与するため、重要な治療標的とされていることが示された。
(大内雄也、石山宗孝)
