トップページ > ドージンニュース > Vol.179 > Commercial 10 : 【技術紹介】抗原の新規高感度蛍光検出法(CLAMP 法)

【技術紹介】抗原の新規高感度蛍光検出法(CLAMP 法)

 近年、細胞表面抗原を標的としたがん治療や診断が注目され、がんの早期発見や治療等のためにがん細胞や免疫細胞などの細胞表面抗原の研究が活発化しています。しかしながら、細胞表面タンパク質には発現量が少ないものも多く、従来技術では検出及び解析が困難なものが多いです。細胞表面タンパク質の特異的な検出方法として、蛍光標識抗体を用いた蛍光検出法が広く知られています(蛍光免疫染色法)。しかし、感度が低く、適用対象が限られるという問題が存在します。
 そこで、今回我々はこれらの課題を解決するために、新たに CLAMP 法(quinone methide-based catalyzed signal amplification)を開発しました。本手法では、一次抗体、β-Galactosidase 標識二次抗体と新たに開発した蛍光色素(MUGF)を用い、特定の細胞表面タンパク質を発現する細胞を選択的かつ高感度に蛍光染色することが可能です。具体的には、細胞膜非透過性のMUGF は、β-Galactosidase と反応し細胞膜透過性のキノンメチドに変換されます。細胞膜を透過したキノンメチドは、細胞内に存在するアミノ基やチオール基と結合し、細胞内に固定され青色蛍光を発します。このように色素が抗原の量に依存して、細胞内に蓄積するため、高感度に抗原を検出することが可能となります(図 1)。
CLAMP 法には、以下の特長があります。
・蛍光免疫染色法に比べて 10-100 倍高感度である
・生細胞、PFA 固定細胞、FFPE 組織切片などのサンプルに適用が可能
・抗原を有する細胞を選択的に染色が可能である

CLAMP 法での実験例を 3 つ紹介します。
 1 つ目は、A549 細胞表面に存在する CD44 抗原の検出を蛍光免疫染色法と比較した例です。図 2 に示す通り、蛍光標識抗体法ではほとんど蛍光を確認することができませんが、CLAMP 法を用いた場合は明瞭に蛍光を確認することができました。蛍光画像から強度を定量したところ、CLAMP 法は蛍光標識法に比べて約 10 倍程度高く、高感度であることを確認しました。

 2 つ目は、インターフェロンγ(INFγ)処理により細胞表面に発現する PD-L1 を検出した例です。事前に CFSE で緑色蛍光ラベル化した INFγ 未処理の HepG2 細胞と INFγ 処理 HepG2 細胞を混合培養し、CLAMP 法により PD-L1 発現細胞の検出を行いました。その結果、青色と緑色の蛍光は重ならず、PD-L1 発現細胞のみを特異的に検出できることを確認しました(図 3)。

 3 つ目は、がん免疫の分野でよく測定される低発現の PD-1 抗原を CLAMP 法または蛍光免疫染色法で染色し、フローサイトメトリーで測定した例です。この実験では、フローサイトメーターの 405 nm 励起に最適化した β-Galactosidase の蛍光基質である MUGF3 を用いました。その結果、蛍光免疫染色法に比べ、CLAMP 法で高い蛍光シグナルが得られることを確認しました(図 4)。

 以上のように、CLAMP 法は既存法に比べて高感度かつ選択的に蛍光染色できることが分かりました。新規な抗原の探索や有用な微量抗原を利用した診断法の確立などに利用されることが今後の発展とともに期待されます。

[参考文献]
1) K. Noguchi et al., “β-Galactosidase-Catalyzed Fluorescent Reporter Labeling of Living Cells for Sensitive Detection of Cell Surface Antigens”, Bioconjugate Chem., 2020, 31(7), 1740-1744.

 

 本技術にご興味がございましたら、小社 HP よりお問い合わせください。
  お問合わせ先はこちら

 

 

ページの上部へ戻る