02 酸化ストレス関連試薬

-SulfoBiotics- PEG-PCMal

-<i>SulfoBiotics</i>- PEG-PCMal

生体硫黄解析用試薬

  • 製品コード
    SB20  -SulfoBiotics- PEG-PCMal
  • 分子式・分子量
    2736.19
容 量 メーカー希望
小売価格
富士フイルム
和光純薬
1 mg ¥10,200 340-91981

性質

タンパク質のチオール基修飾は、代表的な翻訳後修飾の一つであり、生体内のレドックス変化に応答して生じる。チオール基の翻訳後修飾によるタンパク質の機能制御を理解するためには、個々のチオール基の酸化還元状態を検出することが必要不可欠となる。
 チオール基の酸化還元状態を検出する手法の一つに、チオール基と反応する高分子マレイミド試薬を用いてゲル電気泳動によるゲルシフトアッセイ法が利用されているが、この手法を用いることでタンパク質中のフリーのチオール基数を可視化することができる。高分子マレイミド試薬である-SulfoBiotics- PEG-PCMalを用いた場合、タンパク質中のチオール基数に応じた数のPEG-PCMalが結合するが、1分子のPEG-PCMalが結合することで、そのタンパク質は分子質量約5 kDa増加したバンドとして分離・検出される。
 また、従来よりPEG鎖の片方の末端にマレイミド基を有するPEG-マレイミド試薬が、上記のゲルシフトアッセイ法に用いられているが、ウエスタンブロットを行う際、PEG鎖が結合したタンパク質は結合していないタンパク質と比べて、ゲルからメンブレンへの転写効率が低くなる、また、抗体認識能が低くなる、という課題がある。-SulfoBiotics- PEG-PCMalは、PEG鎖とマレイミド基の間のリンカー内に光切断(Photo Cleavable)部位を導入した試薬で、電気泳動後のゲルにUV光を照射するとPEG鎖がラベル化されたタンパク質からPEG鎖が切り離される。これによって、このタンパク質はウエスタンブロットの操作においてPEG鎖の影響を受けることなく解析することができる。なお、本品は1 mg小分け品であることから、細胞や植物など試料に応じて試薬の使用量を設定することができる。
検出可能なチオール数の目安についてはこちらを参照ください

開発元 Dojindo Molecular Technologies, Inc.

技術情報

PEG-PCMalの構造

PEG-PCMalによるチオールの修飾および分離・転写イメージ

PEG鎖の片方にマレイミド基を有するPEG-PCMal(上図)は、タンパク質中のチオール基と結合する。PEG-PCMalでラベル化したタンパク質を電気泳動した後、ゲルにUV光を照射するとPEG鎖がタンパク質からPEG鎖が切り離され、ウエスタンブロットの転写効率を損なわず解析することができる(下図)。

電気泳動によるタンパク質チオール基数の可視化

タンパク質中のチオール基数に応じた数のPEG-PCMalが結合すると、1分子のPEG-PCMalの結合に応じて、PEG-PCMalラベル化タンパク質は分子質量が約5 kDa増加したバンドとして分離される。これによって、タンパク質中のチオール基数を検出することができる。

測定操作

実験例① マウス肝臓に含まれるチオレドキシン検出

マウス肝臓に含まれるチオレドキシンを検出するため、組織を凍結粉砕しPEG-PCMalを用いてSH基にラベル化した。抗チオレドキシン抗体によるWestern Blottingにより、SH x 4に相当するバンドを検出された。

実験例② HeLa細胞中TRX(Thioredoxin)のレドックス状態の解析

Lane 1. TRX
Lane 2. TRX, ラベル化
Primary sntibody:Rabbit anti-TRX antibody
Secondary antibody:Goat anti-Rabbit antibody-POD conjugated
Chemiluminescence detection

HeLa細胞に細胞溶解液で調製したPEG-PCMal溶液を加えて、細胞中のタンパク質を
ラベル化した。ラベル化後のサンプルをゲル電気泳動した後、ゲルにUV光を照射して
、ウエスタンブロット解析を行なった。
(左図: CBB染色, 右図: 抗TRX抗体を用いたウエスタンブロット)

実験例③ シロイヌナズナの葉に含まれる光応答性タンパク質(ATP合成酵素γサブユニット)のレドックス状態の解析

シロイヌナズナの葉を用いてPEG-PCMalで試料中のタンパク質をラベル化して後処理をした後、電気泳動を行った。電気泳動後のゲルに光切断のためUV光を照射してウエスタンブロットにより解析した。汎用されている低分子ラベル化剤 AMS(4-acetamido-4’-maleimidylstilbene-2,2’-disulfonic acid)[写真左]と比較して、PEG-PCMalで標識したタンパク質はバンドシフトが大きく、より分離されることを確認した[写真右]。


[技術指導]
東京工業大学科学技術創成研究院化学生命科学研究所: 久堀徹 教授, 吉田啓亮 助教
東京工業大学生命理工学院: 原怜 助教

チオール数が異なるタンパク質の測定例

GAPDH(左:チオール数 3個)、TRX(中央:チオール数 5個)、ETHE1(右:チオール数 9個)
標識試薬:Protein-SHifter Plus (製品:Protein Redox State Monitoring Kit Plus, Code: SB12)
染色試薬:CBB

ラベル化されたタンパク質の電気泳動のバンドが、チオール数に応じてより高分子側にシフトすることが確認された。
タンパク質中に10個以上のチオールが存在する場合、電気泳動のバンドが複雑になり解析が困難になる可能性があるため、タンパク質中のチオール数として1~9個を目安に使用いただきたい。

参考文献

参考文献を表示する

種々の試料中に含まれるタンパク質のチオール解析に適用される。汎用されているPEG-Maleimideを用いた参考文献を各試料ごとに示した。
 参考文献 1): 精製タンパク質
 参考文献 2): 細胞
 参考文献 3): 組織
 参考文献 4): 菌

1) L. Makmura, M. Hamann, A. Areopagita, S. Furuta, A. Munoz and J. Momand. , "Development of a sensitive assay to detect reversibly oxidized protein cysteine sulfhydryl groups"Antioxid Redox Signal., 2001, 3, (6), 1105. (精製タンパク質)
2) HH Wu, J.A. Thomas and J. Momand, "p53 protein oxidation in cultured cells in response to pyrrolidine dithiocarbamate: a novel method for relating the amount of p53 oxidation in vivo to the regulation of p53-responsive genes"Biochem J., 2000, 351, 87. (細胞)
3) JR. Burgoyne, O. Oviosu and P. Eaton., "The PEG-switch assay: A fast semi-quantitative method to determine protein reversible cysteine oxidation"J Pharmacol Toxicol Methods., 2013, 68, (3), 297. (組織)
4) L. JTetsch, C. Koller, A. Donhofer and K. Jung, "Detection and function of an intramolecular disulfide bond in the pH-responsive CadC of Escherichia coli"BMC Microbiol., 2011, doi: 10.1186/1471-2180-11-74. (菌)
5) Kazuyoshi Yamauchi, "Redox status of serum apolipoprotein E and its impact on HDL cholesterol levels", Clinical Biochemistry., 2017.

よくある質問

Q

PEG-PCMalの光安定性を教えて下さい。

A

光による分解が起こります。蛍光灯下で遮光しない状態(アルミラミジップからPEG-PCMalの入ったチューブを取り出した状態)では数時間(5時間程度)安定ですが、使用しない時はアルミラミジップに入れて保管してください。

Q

DMSO溶液をStock Solutionとした場合の安定性を教えて下さい。

A

DMSOに溶解後、遮光条件下では室温で2週間程度安定ですが、遮光なしの状態では数時間経過すると徐々に劣化します。なお、DMSO溶液を-20℃(冷凍)で保存した場合は、約1ヶ月間安定です。

Q

ラベル化から電気泳動の工程は遮光して行う必要はありますか?

A

PEG-PCMalは、アルミラミジップから取り出した後も蛍光灯下で数時間安定なため、ラベル化から電気泳動の工程で遮光をする必要はありません。なお、使用しなかった試薬を保存する場合は、速やかにアルミラミジップに戻して保存してください。
また、直射日光等の強い光が当たる場所での使用は避けて下さい。

Q

検出可能なタンパク質中のチオール数の目安はありますか。

A

小社にて、チオール数が9個のタンパク質(ETHE1: ethylmalonic encephalopathy)に適用した実績があります(写真右)。その他、GAPDH(チオール数3個: 写真左)、およびTRX(チオール数5個: 写真中)の測定例は以下の通りです。タンパク質中に10個以上のチオールが存在する場合、電気泳動のバンドが複雑になることで解析が困難になる可能性があるため、タンパク質中のチオール数として1~9個の範囲を目安に使用することをお勧めします。

 標識試薬:Protein-SHifter Plus (製品:Protein Redox State Monitoring Kit Plus, Code: SB12)
 染色試薬:CBB

Q

検出実績のあるサンプルを教えて下さい。

A

ヒト由来のGlyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase(36k, SH基数3)、ヒト由来のThioredoxin(14k, SH基数5)の精製タンパク質の検出実績があります。また、細胞(HeLa)や植物(シロイヌナズナ)中のタンパク質を解析した実績もあります。

Q

切断に使用可能な機器情報はありますか?

A

弊社で光切断実績のある機器は下記の2種類です。実際の光切断は画像を参考ください。

トランスイルミネーター (メーカー:UVP、型番:NTM-15、切断条件:302nm 15Wで10分)
ハンディUVランプ     (メーカー:アズワン、型番:SLUV-4、切断条件:365nm 4Wで30分)

また、254 nmの光照射(ハンディUVランプまたはクリーンベンチの殺菌灯など)では、十分な光切断ができません。


例) 光切断時のゲルの置き方
   * ゲルが作業中に乾燥しないようガラス板に挟んだ状態で光切断を行ってください。
   * 光源と直接接触させて切断操作を行ってください。

 

    UVトランスイルミネーター

           ハンディUVランプ

取扱条件

規格
性状: 本品は、微黄色~淡黄褐色粉末又は固体である。
性能試験: 試験適合
取扱条件
保存条件: 冷蔵,遮光
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