15 比色試薬/金属指示薬

o-Phenanthroline

<i>o</i>-Phenanthroline

比色試薬/金属指示薬

  • 製品コード
    P007  o-Phenanthroline
  • CAS番号
    5144-89-8
  • 化学名
    1,10-Phenanthroline, monohydrate
  • 分子式・分子量
    C12H8N2・H2O=198.22
容 量 メーカー希望
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和光純薬
5 g ¥4,700 346-02191
25 g ¥17,900 344-02192

性質

o-フェナントロリンは早くから知られている鉄(II)の比色試薬である。感度面ではバソフェナントロリン、TPTS、Nitroso-PSAPよりも低い。o-フェナントロリン-鉄錯体は陰イオン対として有機溶媒に抽出されることより、陰イオンの間接的定量に用いられる。また、近年は有機合成法の触媒として知られるルテニウム錯体の配位子にも用いられる。
1水塩は融点 98~100℃、無水物は融点 117℃である。水(3.3 g/L, 室温)、およびベンゼン(14 g/L, 室温)にはわずかしか溶けないが、アルコール(540 g/L)、アセトン、希鉱酸にはよく溶ける。酸解離定数はpKa1=0.70,pKa2=4.98(μ=0.1, 25℃)である。 Fe2+と1:3の組成の赤色キレート(安定度定数log β3=21.1(μ=0.1, 20℃), λmax=510 nm, ε=1.11×104)を作るが、このキレートは有機溶媒では抽出されにくい。1.0 mol/L H2SO4水溶液中 FeL32+⇔FeL33+(L:フェナントロリン)の標準酸化還元電位は1.06 Vで、赤⇔淡青色(ほとんど無色)の変色をする。また、Cu, Ni, Coなどとは有色の、Cd, Znなどとは無色のキレートを作るので、それらの金属の比色試薬あるいはキレート滴定におけるマスキング剤として利用できる。また、FeL32+は種々の陰イオンの沈殿検出[例えば Ksp (ClO4-)=8×10-4 mol/L]に用いられるほか、抽出定量法が開発された。

技術情報

応用可能な対象物

マスキング剤として:Cd, Zn
比色試薬として:Ag, Fe
酸化還元指示薬として:Ce
陰イオン抽出比色試薬として:ハロゲン,ClO4, PtCl62-, ReO4, HCrO4, SCN,AuCl4,Ag(CN)2,Sn(C2O4)32-, リンモリブデン酸
各種有機酸イオン:トリクロル酢酸,デヒドロ酢酸,サイクラミン酸,サッカリン,サリチル酸,アルキルベンゼンスルホン酸,マレイン酸,ペンタクロルフェノール,カリボール,クロラニル酸

比色条件

多くのJISが, 本品による Fe2+の比色を採用している。Fe2+(510 nm, ε=1.11×104,0.8 ppm), Cu+(435 nm, ε=7.0 ×10 3), Ru2+(448 nm, ε=1.85×104)

応用例

(1)Fe 比色試薬として
JIS 法として広く利用されているからその詳細は省略するが、Fe(III)→Fe(II)の還元、 pH4~5で510~515 nmで比色する基本操作には変りがない。各種金属の中のFeの定量に関しては、Vydraの総説が詳しい。

(2)酸化還元試薬として
Fe-o-フェナントロリンの酸化還元電位は+1.06 Vであり、その誘導体のそれも大体この近くにあり、3,8-ジブロモ誘導体が+1.28 Vと最も高い。 Brandtおよび Smithの単行本を参照。

(3)抽出試薬として
Fe(II) キレートは水溶性であるが、結合する陰イオン次第では有機溶媒に抽出できる。山本らは、Fe(II)キレートによる陰イオンの抽出定量法を次々と開拓し、多くの微量の陰イオンI,ClO4,PtCl62-,AuCl42-などの無機イオンや, ペンタクロロフェノール, サイクラミン酸, サリチル酸などの定量を可能にした。

(4)蛍光比色試薬として
Ruは強い蛍光を発するので1 μg/ml程度の RuをOs 共存のまま定量できる。また、Euは他の希土類の共存下0.001 μg/mlでも検出でき、1 μg/ml程度なら定量も可能である。また、TTAとの混合キレートを利用すれば Sm を、 Rose Bengal 混合キレートとすれば0.001 μg/mlのCuも蛍光定量できる。

(5)キレート滴定におけるマスキング剤として
Cd, Znとよく反応するがそのキレートは無色であり、pH5ではCd, Zn の EDTA キレートより安定度定数が大きい。一方、Pb はキレートを作らないので、低融点合金(Bi, Cd, Sn, Cd)の場合、硝酸に溶解、煮沸して Sn を沈殿分離後、 Cd を o-フェナントロリンでマスキングすれば、滴定にかかるのは Bi, Pb のみとなるが、BiはpH1~2で XO を用いて滴定でき、このpHでは Pb は滴定にかからない。理論的な考察については、Pribil の報告を参照。

(6)その他
Agの比色試薬はあまりすぐれたものがないが、o-フェナントロリンとPRあるいはBPRの組合せの混合キレートを用いると0.1 μg/ml程度の Agも 比色定量でき、更にこの方法を利用して0.3~3 μg/mlのCNが、同様に微量のS2-(0~1.8 μg/ml)も定量できる。Fe(II)-o-フェナントロリン-CNの型で、非水溶媒滴定指示薬としてもすぐれている。

溶解例

400 mg/50 mL(酢酸), 300 mg/20 mL(水), 1g/20 mL(エチルアルコール)

参考文献

参考文献を表示する

1) 山本勇麓, 熊丸尚宏, 林康久, 大谷譲, "ネオクプロイン-銅(I)とのイオン対抽出による硝酸イオンの間接原子吸光分析法", Jpn. Anal., 1969, 18, 359.
2) 山本勇麓, "フェロインおよびその誘導体による陰イオンの溶媒抽出を用いる分析法", 分析化学, 1972, 21, 418.
3) 小熊幸一, 加藤康彦, 黒田六郎, "フローインジェクション -吸光光度法によるケイ酸塩中のカルシウムの定量", 分析化学, 1985, 34, T98.
4) 石井幹太, 山田正昭, 鈴木繁喬, "1,10-フェナントロリンのミセル増感化学発光を利用するサブピコグラム量銅(II)のフローインジェクション法による定量", 分析化学, 1986, 35, 373.
5) 石井幹太, 山田正昭, 鈴木繁喬, "1,10-フェナントロリンのミセル増感化学発光を利用するサブピコグラム量銅(II)のフローインジェクション法による定量-ウサギ水晶体への応用-", 分析化学, 1986, 35, 379.
6) 内田哲男, 光松正人, 小島功, 飯田忠三, "ケイ酸塩中の鉄(II, III)の迅速吸光光度定量", 分析化学, 1986, 35, 42.
7) 塚越一彦, 紀本英志, 原正, "化学発光反応を用いる微量タンパク質のフローインジェクション分析法の改良", 分析化学, 1989, 38, T100.

取扱条件

規格
性状: 本品は、白色結晶性粉末であり水及びアルコールに溶ける。
純度(滴定): 99.0~101.0%
水溶状: 試験適合
エチルアルコール溶状: 試験適合
強熱残分(硫酸塩): 0.10% 以下
IRスペクトル: 試験適合
鋭敏度: 試験適合
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