PC
比色試薬/金属指示薬
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製品コードP004 PC
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CAS番号2411-89-4
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化学名3,3'-Bis[N,N-bis(carboxymethyl)aminomethyl]-o-cresolphthalein
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分子式・分子量C32H32N2O12=636.6
容 量 | メーカー希望 小売価格 |
富士フイルム 和光純薬 |
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1 g | ¥4,900 | 348-02173 |
5 g | ¥16,100 | 346-02174 |
性質
PCはアルカリ土類金属のキレート滴定用の指示薬や比色試薬として用いられる。指示薬として使用されるBTやNNと比較してCa、Mgに対しては明瞭な変化を示す。Phthalein Complexoneとも呼ばれ、製品名の由来となっている。
水にはわずかにしか溶けないが、希アンモニア水、酢酸ナトリウム溶液およびアルコールなど有機溶媒にはよく溶ける。酸解離定数はpKa:2.2, 2.9, 7.0, 7.8, 11.4, 12.0で、pH11では、うすいピンクであるが、アルカリ土類金属の存在で深紅色となるので、これら金属の指示薬として使用できる。また、錯体の安定度定数logβはBa 9.2, Ca 12.8, Mg 14.1, Zn 24.9(μ=0.1, 20℃)である。更に、50%メタノール中では、ほとんど無色の終点が得られる。多くの重金属は発色しない。臨床検査部門でCaの安定な比色試薬(オートアナライザー用)として大量に使用されている。この分野ではOCPCとも略されるがPCと同一品である。
Baに対しても鋭敏であることより、硫酸イオンの間接滴定用指示薬としても用いられる
応用可能なイオン
キレート滴定指示薬として:Ca, Ba, Mg, Sr, CN-およびSO42-
比色試楽として:Ca, Ba, Hg2+, La, Mg, Sr
比色条件
Ba(pH11.3, 575 nm,~5 ppm), Ca(pH10.5, 575 nm, ε=6.5 ×104, ~1 ppm), Hg(pH 10, 585 nm,ε=5.3×104, 0,1~4 ppm),La(セチルピリジニウム臭化物、617 nm,~2 ppm), Mg(pH10, 570 nm, 5~30 ppm), Sr(pH11.2, 575 nm, ε=3.2×104, ~3 ppm).
指示薬溶液調製法
PC 100 mg(必要であればナフトールグリーン10 mgを添加)を無水メチルアルコール100 mLに溶かして指示薬溶液とする。滴定終点の変色は赤→ほとんど無色となる。しかし、最近のPCは純度が高いのでナフトールグリーンを添加しなくてもよい結果を得る。溶液は少なくとも6ケ月は保存できる。
滴定例(Ba, Sr)
試料溶液はBa, Srとして数~10数 mgを含むようにとり、酸性溶液はNaOHで中和し、試料100 mgにつき濃いアンモニア水5~10 mL(pH11)、指示薬溶液、試料と同容積のエチルアルコールまたはメチルアルコールを加え、0.01 mol/L -2NA滴定液で速やかに滴定する(終点において紅色が急激に脱色してほとんど無色となる)。
0.01 mol/L EDTA滴定液
1 mL=1.3733 mg Ba ; 0.8762 mg Sr
もし更に正確な結果を必要とする場合は次の方法による。試料溶液は前記のようにpHを調整し、指示薬溶液を加えたのちEDTA滴定液を少過剰添加する。次に約同容積のメタノールを加え、0.01 mol/L BaCl2溶液で逆滴定し、赤味のついた点を終点とする。PCの変色はpH11付近でのみ鋭敏に変色し、pH11.5では終点を超えても赤味が残り、pH10.5では、はじめの赤味が弱い。従ってpHの調整は正確におこなう必要がある。
技術情報
溶解例
100 mg/100 mL(熱メチルアルコール),100 mg/3 mL(0.1 mol/L-NaOH)→100 mL(水)
参考文献
1) G. Anderegg, H. Flaschka, R. Sallmann and G. Schwarzenbach, "Metallindikatoren VII. Ein Auf Erdalkaliionen Ansprechendes Phtalein und Seine Analytische Verwendung", Helv. Chim. Acta, 1954, 38, 113.
2) J. Bosholm, "Spektrofotometrische Bestimmung von Calciumspuren Nachihrer Abstrennung aus Konzentrierten Lithiumchlorid-losungen Mittels Kationenaustausch", Anal. Chim. Acta, 1966, 34, 71.
3) 金田高之, 高野敏, "水のカルシウム硬度及び総硬度の簡易測定法", 分析化学, 1987, 36, 103.
4) 野村敏明, 竹内きよ子, 小松寿実雄, "フタレインコンプレキソン水銀(II)塩を指示薬としHg-EDTAを用いるシアンイオンの容量分析", 日本化学雑誌, 1968, 89, 291.
よくある質問
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Q
Ba,Srの直接滴定
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A
ここでは、PCを指示薬とする直接滴定に関し記載します。
【試薬】0.01 mol/L EDTA標準液
PC指示薬溶液
緩衝液 濃アンモニア水
メタノール【操作】①試料溶液中のBa2+,Sr2+の濃度は100 mL中、0.5~10 mgを含む程度とする。
②試料溶液は必要であればNaOHで中和し、100 mLにつき濃アンモニア水5~10 mL、PC指示薬溶液数滴を加える(赤紫色となる)
③直ちにEDTA標準液で滴定するが、終点近くでメタノール100 mLを加える。
④終点が近づくにしたがい溶液の赤色がうすくなり、終点で急に脱色してほとんど無色となる。
終点の変色は 赤紫色→無色0.01 mol/L EDTA 1 mL = 1.373 mg Ba
= 0.8762 mg Sr【備考】
・PC指示薬は非常にせまいpH領域においてのみ鋭敏に変色する。
pH10.5では終点前の赤味が弱く、pH11.5では終点をすぎても赤味が残りいずれも終点を認め難い。
pH11付近においてのみ明瞭な変色がおこり、しかもアルコールを加えると、終点を過ぎて残る赤味がほとんど無色になる。
ただ、滴定のはじめにアルコールを加えるとBa塩が析出することがあるから、直接滴定の場合には終点近くで、逆滴定の場合にはEDTA標準液を添加したあとにアルコールを加えるのがよい。・PC指示薬の最適pHは、試料溶液の塩濃度の影響を受け、塩濃度が高いときにはpH10.5付近においてもっとも鋭敏に変色するようである。同時にまた、塩濃度の増加とともに一般に変色がにぶくなる蛍光がある。その際はBT指示薬をもちいる置換滴定の方が好結果を与える。
・アルカリ性溶液ではBa2+は容易にCO2を吸収してBaCO3となり、EDTAと反応し難くなるためアンモニア水を加えたらなるべく速やかに滴定に移る。
・アルカリ土類金属は一緒に滴定され、Mg2+は一部滴定される。また多くの重金属は滴定のpHにて水酸化物として大部分は沈殿するけれども、PC指示薬の変色は重金属により妨害されるからトリエタノールアミンなどでマスクする必要がある。
・PC指示薬の終点は光度滴定によって定めることもでき、この方法は微量滴定に応用される。
たとえば、0.01 mol/L~0.002 mol/L EDTA標準液をもちい、560 nm付近の吸光度を測定して滴定すれば 0.05~2 mgのBaを定量することが出来る。・DTPAはEDTAよりも安定度定数が高いから、全ての場合EDTAによる滴定より明瞭な終点が期待される。
*「キレート滴定」上野景平著(南江堂出版)より
取扱条件
性状: | 本品は、白色~微黄桃色粉末であり、希アンモニア水及びアルコールに溶ける。 |
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メチルアルコール溶状: | 試験適合 |
吸光度(バリウム錯体): | 0.800 以上(578 nm付近) |
吸光度(ブランク): | 0.090 以下(575 nm付近) |
強熱残分(硫酸塩): | 1.0% 以下 |
鋭敏度: | 試験適合 |
遊離のo-クレゾールフタレイン: | 試験適合 |
IRスペクトル: | 試験適合 |