19 その他の生化学、分析用試薬

Kalibor®

Kalibor<sup>®</sup>

分析用試薬: アニオン排除剤

  • 製品コード
    K003  Kalibor®
  • CAS番号
    143-66-8
  • 化学名
    Tetraphenylborate, sodium salt
  • 分子式・分子量
    C24H20BNa=342.22
容 量 メーカー希望
小売価格
富士フイルム
和光純薬
10 g ¥8,700 344-01531
25 g ¥15,500 342-01532
100 g ¥46,700 340-01533

性質

Na-TPB。180℃までは安定といわれる。水に極めてよく溶け、アセトン、アルコールなど極性有機溶媒にもかなり溶けるが、非極性有機溶媒には溶けない。低品位の製品は、水溶液とした時白濁するので、調製時に濾過する必要があるが、ドータイト・カリボールは100%に近い高純度(出荷規格は99.5%以上)で、この必要は全くない。
 Li, Naを除くアルカリ金属[K(溶解度=1.5×10-4 mol/L、265℃分解), Rb, Cs]およびNH4並びにその誘導体[アミン類、第四アンモニウム塩、アルカロイド類(溶解度(アトロピン)=10-4 mol/L、25℃)、オニウム化合物]、一価金属イオン[(Ag, Tl, Cuなど)]と難溶性沈殿を生ずる。多価金属イオンとは沈殿を作らない。カリボールを使用するK+の分析法は多くの公定法に標準法として採用されている。

応 用
カリボールは上記金属の分析に広く利用されているが、それ以外に細胞組織の崩壊剤、皮下注射による局部麻酔効果、 写真乳剤の増感剤、合成樹脂の触媒、イオンの電極のアニオン排除剤等がある。
イオン電極への応用においては、クラウン化合物を用いる陽イオン電極は選択性が優れているが、親油性陰イオンの妨害を受けるものがある。しかし、可塑剤の添加で妨害の低減はできるが、 完全に排除することはむずかしい。そこで、親油性塩として感応膜にカリボールを添加することで親油性陰イオンによる妨害を排除できる。

応用例
(1)重量分析法
沈殿の粒子は、酸性が強い程粗い粒子が得られるが、試薬の分解も著しい。従って酸性でろ過する場合はなるべく低温で素早く行う必要がある。アルカリ性では沈殿が小さくろ過しづらいが安定である。その条件については、上野らの総説を参照。
(2)容量分析法
各種の終点決定法がとられている。例えば銀滴定法、中和滴定法、キレート滴定法、電流滴定法、電位差滴定法などと組合わせることが出来るが、最も利用度の大きいものはドータイト・ゼフィラミンを用いる沈殿滴定である。
(3)その他
ポーラログラフ法、比色および比濁法、炎光分析法などにも利用できる。
(4)分析以外への応用
ハツカネズミの肝臓組織をカリボール溶液で処理すると単細胞までばらばらになり、また、カリボールの皮下注射は局部麻酔効果を持つ。写真乳剤の増感剤、合成樹脂の触媒のほか、アルカロイドの精製、イオン電極などへ応用されている。このほか頁岩から化石を取り出す場合にも用いられる。

技術情報

溶解例

500 mg/30 mL(水)、 1 g/30 mL(アセトン)

参考文献

参考文献を表示する

1) 向山朝之, "Sodium Tetraphenylboron の分析化学への応用-カリウム、アンモニウム及び含チッ素有機化合物の分析-", 化学の領域, 196510, 103
2) G. H. Gloss, "Sodium Tetraphenylboron. A New Analytical Reagent for Potassium, Ammonium and Some Organic Nitrogen Compounds", Chem. Anal.195342, 50. 
3) A. M. Amin, "Rapid Micro-volumetric Determination of Potassium in Plants Using Sodium Tetraphenylboron as Precipitant", Chem. Anal.195443, 13. 
4) R. F. Muraca, H. E. Collier, J. P. Bonsack and E. S. Jacobs, "Sodium Tetraphenylboron for Potassium Detection in Systematic Qualitative Procedures", Chem. Anal.195443, 102. 
5) H. Flaschka, "Determination of Potassium by Precipitation and Non-aqueous Titration of Its Tetraphenylboron Salt", Chem. Anal.195544, 60. 
6) 上野景平, 斉藤幹彦, 玉奥克己, "テトラフェニルホウ素ナトリウム -その分析科学的応用-(その1)", Jpn. Anal.1968, 17, 1550. 
7) 上野景平, 斉藤幹彦, 玉奥克己, "テトラフェニルホウ素ナトリウム -その分析科学的応用-(その2)", Jpn. Anal., 196918, 81. 
8) 上野景平, 斉藤幹彦, 玉奥克己, "テトラフェニルホウ素ナトリウム -その分析科学的応用-(その3)", Jpn. Anal.196918, 264. 
9) R. E. Jensen and P. S. Roiger, "Non-aqueous Acids-base Properties of Sodium Tetraphenylboron", Anal. Chem.197244, 846. 
10) N. M. Hanken, "The Use of Sodium Tetraphenylborate and Sodium Chloride in the Extraction of Fossils from Shales", J. Paleontology197953, 738. 
11) M. Tsubouchi, H. Mitsushio and N. Yamasaki, "Determination of Cationic Surfactants by Two-phase Titration", Anal. Chem.198153, 1957. 
12) S. S. Badawy, A. F. Shoukry and M. M. Omar, "Potentiometric and Thermal Studies of a Coated-wire Antazoline-selective Electrode", Anal. Chem.198860, 758. 
13) K. Vytras and V. Dvorakova, "Titrations of Non-ionic Surfactans with Sodium Tetraphenylborate Using Simple Potentiometric Sensors", Analyst1989114, 1435. 
14) A. Yoo and C. E. Moore, "The Synthesis of Some Lipophilictetra-arylborates for Use in Membrane Electrode Preparation", Talanta199138, 493. 
15) T. Katsu and K. Watanabe, "イオン電極法による薬・毒物の定量 (Determination of Drug Substances Using Ion-Selective Electrodes)", Jpn. J. Toxicol. Environ. Health199642, 453.

よくある質問

Q

製品説明には「180℃までは安定といわれる。」と記載されていますが、 これは粉末状の場合でしょうか、それとも溶液でも安定なのでしょうか?

A

「180℃まで安定である...」という記載は「粉末」の場合です。
ある報告では最低分解温度は「200℃」ともいわれています。
水溶液の状態ではpHが低いほど分解しやすくなります。

pH7以上で、直射日光を避ければ長期保存が出来るといわれています。

pH9.9で溶解した場合に、8~9週間後で力価の低下は1%以下という報告があります。

pH5では、保存次第では5日以上保存すると分解して、白濁がみられる可能性があります。

Kaliborを溶解して直に白濁がみられるような場合で、溶解に用いた水の中にカリウムが存在していないときは、Kaliborの一部が分解してると考えられます。

当然のことながら、粉末で長期間保存する場合も、乾燥状態で冷暗所に密栓貯蔵することが望ましいことになります。

取扱条件

規格
性状: 本品は、白色結晶又は結晶性粉末で、水及びアセトンによく溶ける。
純度(重量分析): 99.5% 以上
水溶状: 試験適合
乾燥減量(110℃): 0.20% 以下
IRスペクトル: 試験適合
アセトン溶状: 試験適合 0.005 以下(660 nm) 0.017 以下(400 nm)
カリウム分析適合性: 試験適合
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