Calcein
比色試薬/金属指示薬
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製品コードC001 Calcein
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CAS番号1461-15-0
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化学名Bis[N,N-bis(carboxymethyl)aminomethyl]fluorescein
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分子式・分子量C30H26N2O13=622.53
容 量 | メーカー希望 小売価格 |
富士フイルム 和光純薬 |
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100 mg | ¥3,300 | 344-00431 |
1 g | ¥5,700 | 340-00433 |
5 g | ¥16,100 | 348-00434 |
性質
Calceinはカルシウム錯体が強い蛍光を示すことが特徴で、これを利用したCaの分析に広く使用される。
Calceinは遊離酸で、橙黄色粉末、融点は300℃以上(分解)である。2Na塩とした場合、赤橙色粉末で、融点は185℃(分解)となる。水にわずかに溶け、酸解離定数はそれぞれpKa1=2.1, pKa2=2.9, pKa3=4.2, pKa4=5.5, pKa5=10.8, pKa6=11.7である。酸性で黄色を呈すると同時に黄緑色の強い蛍光を発するが、アルカリ性では淡赤色となり、強アルカリ性では蛍光を消失する。しかしながら、アルカリ性領域でAl,Ba,Ca,Cu,Mg,Znなどが共存すると再び蛍光が現れる。この性質を利用し、これらの金属イオンを直接滴定するとき、蛍光の消失によって滴定の終点を定めることができる。例えば、強く着色した溶液中やPO43-共存下でCaの滴定をするときも明瞭な終点を与えるので、肥料、生体試料中のCaの滴定にすぐれている。ただ、多量のPO43-が共存すると、アルカリ性ではリン酸カルシウムの沈殿生成のため、Ca標準液で逆滴定しなければならない。この際、Mgが多量共存する場合は、pH10でGEDTA滴定すれば好結果を得る。
なお、CalceinとTPCを等量混合すれば濃緑色(蛍光)から赤紫色の終点を、Murexideを5:2に混合すれば紫色から灰色の終点を、PPCを混合すれば黄緑色(蛍光)から赤紫色(無蛍光)の終点が得られ、Calcein単独で使用した場合よりも、鋭敏となり終点の判断がし易くなる。大量のNa+, Li+の共存、あるいは蛍光灯での照明は、蛍光性のため終点が不明瞭になる。
技術情報
応用可能な金属
キレート滴定指示薬として:Ba, Ca, Cu, Mg
オートアナライザー比色薬として:Ca
蛍光比色試薬として:Al, Ca, Mg, Zn
生化学用試薬として:ワニの歯の成長測定など
蛍光比色条件
Al(pH7.4, λex=470 nm)、Mg(pH7.4, λex=490 nm)、Ca(pH12, λex=495 nm)
応用例
(1)リン酸共存下の Ca の滴定
CaはEDTAとのキレート生成定数があまり大きくないので、pH 9以下では滴定できない。逆にリン酸があると、pH5以下でのみCa(H2PO4)2として可溶であり、pH7を越すとCa10(PO4)6(OH)2などが生じて沈殿し全く滴定出来なくなる。従って、まず酸性でEDTAを過剰に加え、KOH溶液を少量ずつゆっくり加えてpHを上げる。ここでリン酸の影響の少ないCalcein指示薬を加え、Ca 標準液で逆滴定する。ただ、海藻灰の様に Ca に対して10~20倍も Mg を大量に含むときは、EDTAでは明確な終点を与えないので、GEDTA を用いれば良い結果が得られる。
(2)その他
WilkinsはCuを、入谷はCrを滴定している。また、0.1 mol/L KOH溶液中、Calceinの蛍光の強さは溶液中の Ca,Mg,Ba の濃度に比例することを利用して0.08~0.8 μg/mLのCaを定量できる。この蛍光比色はオートアナライザーに利用することもできる。さらに変わった応用としてCalceinをワニ(Caiman Crocodilus)に注射し、その歯に蛍光をつけ、成長を研究した報告がある。なお詳しくは単行本、総説を参照のこと。
溶解例
100 mg/2 mL (1 mol/L-KOH)→100 mL(水)
参考文献
1) K. Ueno, T. Imamura and K. L. Cheng, "Handbook of Organic Analitical Reagents 2nd Edition", CRC Press, 1992.
2) 入谷信彦、宮原武恒、高橋一朗, "けい光光度滴定によるクロムの定量", Jpn. Anal., 1968, 17, 1075.
3) R. O. Ashby and M. Roberts, "A Microdetermination of Calcium in Blood Serum", J. Lab. & Clin. Med., 1957, 49, 958.
4) J. Korbl and F. Vydra, "Metallochromic Indicators. IV. A Note on the Preparation and Properties of Calcein", Collect. Czech. Chem. Commun., 1958, 23, 622.
5) 宮原武恒, "銅(II)-カルセイン錯体の安定度定数の測定", 分析化学, 1977, 26, 615.
6) M. A. Demertzis, "Fluorimetric Determination of Calcium in Serum with Calcein Complexation of Calcein with Calcium and Alkali Metals", Anal. Chim. Acta, 1988, 209, 303.
7) E. Muller-Ackermann, U. Panne and R. Niessner, "A Fiber Optic Sensor Array for the Fluorimetric Detection of Heavy Metals", Anal. Methods Instrum., 1995, 2(4), 182
取扱条件
性状: | 本品は、橙黄色粉末で水にわずかに溶け、アルカリに溶ける。 |
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アルカリ溶状: | 試験適合 |
鋭敏度: | 試験適合 |
遊離フルオレセイン: | 試験適合 |
強熱残分(硫酸塩): | 1.0% 以下 |
IRスペクトル: | 試験適合 |