はじめに
Ab-10 Rapid Biotin Labeling Kit は、10 μg の抗体にBiotin を30 分以内に標識するためのキットです。キット付属のReactive Biotin は、活性エステル基を導入しているため、抗体と混合するだけで安定な共有結合を形成します。本キットにはDMSO を除く標識に必要なすべての試薬が含まれています。
図1 標識手順
注意 Reactive Biotin はアルミラミジップに3 本入っています。アルミラミジップを一旦開封した後は、未使用のReactive Biotin はアルミラミジップに入れたままチャックをしっかりと閉め、-20°Cで保存してください。Reactive Biotin 以外は0 ~ 5°Cで保存してください。 |
キット内容
Reactive Biotin* | ×3 |
Reaction Buffer | 100 μl ×1 |
Stop Solution | 100 μl ×1 |
- 本品中のReactive 体はチューブ底面に無色フィルム状で付着しており、目視では確認しづらい状態となっております。
標識操作の際には、底面に溶液を加えピペッティングにてしっかり混合しお使いください。
保存条件
0 ~ 5°Cで保存してください。
ご購入後、未開封の状態で1 年間安定です。
必要なもの ( キット以外)
- 20 μl, 200 μl マイクロピペッタ-
- マイクロチューブ(サンプル及びWorking buffer 調製用)
- インキュベーター(37°C)
- PBS (Phosphate buffered saline)
- DMSO (Dimethyl sulfoxide)
使用上のご注意
- 0.5 ~ 1 mg/ml の抗体溶液を使用してください。抗体濃度が1 mg/ml を超える場合はPBS で希釈してください。
- 試料溶液に不溶性の低分子物質が含まれる場合は、遠心して上清のみを標識反応に用いてください。
- 本キットには溶液の入ったマイクロチューブが含まれています。チューブ内壁やキャップに溶液が付着していることがありますので、 開封前に遠心等で溶液をチューブの底に落としてからご使用ください。
- 抗体溶液に含まれる添加剤は、その濃度が高い場合に標識反応を妨害したり、実験における非特異的吸着の原因となる可能性があります。標識反応の妨害または非特異吸着が著しい場合には、標識操作の前に添加剤を除去することを推奨します。表1 には標識に影響を及ぼさない添加剤の例を、表2 には小社で検討した標識に影響を及ぼす可能性のある添加剤の例を示しました。
Additives | |
Buffering agents (PBS,HEPES) | 〇 |
Sodium chloride | 〇 |
Chelating agents (EDTA) | 〇 |
Sodium azide | 〇 |
Sugars (Glucose, Trehalose) | 〇 |
Primary amines and thiols | × |
Glycerol | BSA | Gelatin | Tris | |
Anti-Chloramphenicol Acetyl Transferase (CAT) antibody | < 20% | < 0.1% | < 0.1% | < 50 mmol/l |
Anti-GAPDH antibody | < 50% | < 0.1% | < 0.1% | < 50 mmol/l |
Anti-CD44 antibody | < 50% | < 0.1% | < 0.1% | < 50 mmol/l |
- 抗体の種類、生物種、メーカーにより添加剤の影響は異なります。
プロトコール
- Reaction Buffer を必要量(最大30 μl)マイクロチューブにとり、等量のDMSO を加えWorking buffer を調製する。
- 抗体量が10 μg に相当する量の0.5 ~ 1 mg/ml に調製した抗体溶液を別のマイクロチューブに入れる。
- 操作2 の抗体溶液に操作1 で調製したWorking buffer を加え、ピペッティングにより混合する。
- Working buffer の混合溶液の添加量: 抗体溶液の1/5 量( 表3)
- 操作3 の溶液をReactive Biotin に加え、ピペッティングにより混合する。
- 37°Cで10 分間反応する。
- 操作5 の溶液にStop Solution を28 μl 加え、ピペッティングにより混合する。
- 37°Cで10 分間反応する。
- 操作7 の標識抗体を実験に用いる。または、冷蔵で保存する。
- 標識抗体は、4 °Cで2 週間は安定です。
抗体濃度 (mg/ml) |
0.5 | 0.6 | 0.7 | 0.8 | 0.9 | 1.0 |
Working buffer の添加量(μl) |
4.00 | 3.34 | 2.86 | 2.50 | 2.22 | 2.00 |
実験例
ミトコンドリアの免疫染色
- μ- スライド 8 ウェル(ibidi 社製)にHeLa 細胞を播種し、37°C、5% 炭酸ガスインキュベーター内で一晩培養した。
- 培地を取り除き、PBS で3 回洗浄後、4% パラホルムアルデヒド/ PBS 溶液を添加した。
- 室温で15 分間静置した。
- 上清を取り除き、PBS で3 回洗浄後、1% Triton-X / PBS 溶液を添加した。
- 室温で30 分間静置した。
- 上清を取り除き、 PBS で3 回洗浄後、PBS で調製したブロッキング溶液を添加した。
- 室温で1 時間静置した。
- ビオチン標識- 抗ミトコンドリア抗体をブロッキング溶液で50 倍希釈した。
- 抗ミトコンドリア抗体(商品コード: ab3298)はabcam 社から購入した。
- 上清を取り除き8 の溶液を添加した。
- 冷蔵で一晩静置した。
- 上清を取り除き、PBS-T で3 回洗浄した。
- 0.2 μg/ml ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンを添加した。
- 室温で1 時間静置した。
- 上清を取り除き、PBS-T で3 回洗浄した。
- 上清を取り除き、 50 mmol/l トリス緩衝液(pH 7.5)で3 回洗浄した。
- 上清を取り除き、0.2 mg/ml DAB( 同仁化学研究所、品コード:D006)、0.003% H2O2、50 mmol/l トリス緩衝液 (pH7.5) を添加した。
- 室温で10 分間静置した。
- 上清を取り除き、 50 mmol/l トリス緩衝液(pH 7.5)で3 回洗浄した後、50 mmol/l トリス緩衝液(pH 7.5)を添加した。
- 染色細胞を顕微鏡で観察した。
図2 HeLa 細胞のミトコンドリアの免疫染色画像
よくある質問/参考文献
LK37: Ab-10 Rapid Biotin Labeling Kit
Revised Nov., 29, 2023