はじめに
アポトーシスは、細胞のプログラムされた死の一つであり、植物や動物のホメオスタシスや発生過程の維持に重要な役割を果たしています。その一つの例として、細胞生成過程で発生した異常な細胞はアポトーシスによって除去されます。アポトーシスの初期段階において、細胞膜の内側に存在するホスファチジルセリン (PS) が細胞膜の外側に移行することが知られています。この特異な変化により、アポトーシス細胞を識別することが可能です。
Annexin Vは、カルシウムイオンの存在下でホスファチジルセリンに特異的に結合するタンパク質です。この特性を利用し、蛍光標識されたAnnexin Vを用いることで、アポトーシス細胞を蛍光検出することが可能となります。一般的に、フローサイトメトリーや蛍光顕微鏡を用いてアポトーシス細胞の検出が行われておりますが、多検体処理に時間を要します。本キットには、蛍光標識Annexin V やPSに結合していない蛍光標識Annexin Vの蛍光を消去する試薬 (Quenching Buffer) が同梱されており、洗浄操作不要でプレートリーダーで迅速に多検体検出が可能です。
キット内容
Annexin V - FITC | × 1 |
Quenching Buffer | 11 ml × 1 |
保存条件
0–5 °Cで保存してください。
必要なもの(キット以外)
- 蛍光プレートリーダー
- 96穴黒色クリアボトムマイクロプレート
- 20–200 μl のマルチチャンネルピペット
- 100–1000 μl、20–200 μl、2–20 μlマイクロピペット
- コニカルチューブ
- マイクロチューブ
使用上のご注意
- キットの中の試薬は、室温に戻してからご使用下さい。
- 輸送中の振動等により、内容物がアシストチューブ壁面やキャップ裏面に付着している場合がありますので、内容物を底面に落とした後に開封して下さい。
- 正確な測定値を得るため、1つの測定試料につき複数 (n=3 以上) のウェルをご使用下さい。
溶液調製
Annexin V - FITC stock solutionの調製
Annexin V - FITCを含むチューブに超純水を250 μl加え、ゆるやかにピペッティングをして溶解する。
※溶解後は0–5 °Cで保存してください(1ヶ月安定)。
Working solution の調製
Annexin V - FITC stock solutionとQuenching Bufferを必要量チューブに加え、転倒混和しよく混ぜる。
※実験に使用するwell + ブランク用(3 well分)の量を必要に応じて調製してください。
※マルチチャンネルピペットを使用する場合は、使用量に加えて2 well分程多めに調製してください。
※調製後はその日のうちに使用してください。また調製したworking solutionは実験を行う時まで光を避けて保管してください。
Working solution 調製量
48 well | 96 well | |
Annexin V - FITC | 125 μl | 250 μl |
Quenching Buffer | 3000 μl | 6000 μl |
操作
- 96穴黒色クリアボトムマイクロプレートに細胞を播種し、インキュベーター(37 °C、5% CO2存在下)で一晩培養し細胞を接着させる。
※細胞数は1–5×104 cells/wellを推奨しております。 - 薬剤刺激等を行う。
※培地上清量は100 μlになるように実験を行ってください。 - 各wellにworking solution を60 μl添加する。
※ブランクとして、細胞上清と同量の培地を入れたwellにworking solution を添加してください。 - 室温、遮光下で15分インキュベートする。
- プレートリーダーで (ボトムリーディング) 測定する。(Ex/Em = 488 nm/525 nm)
- 得られた蛍光強度からブランクを差し引き、Annexin V - FITC由来の蛍光強度を算出する。
実験例
アポトーシスを誘導したHeLa細胞の評価
- HeLa細胞(2×104 cells/well、10% fetal bovine serum、1% penicillin-streptomycinを含むMEM培地)を96穴ブラックマイクロプレート(透明底)に播種し、インキュベーター(37 °C、5% CO2存在下)で一晩培養した。
- 培地を除去し、MEM培地で調製した5 μmol/l staurosporine 100 μlを操作3)の6,4,2時間前に添加した(図1, 2)。Staurosporine添加後はworking solutionを添加するまでインキュベーター(37 °C、5% CO2存在下)でインキュベートした。
※コントロールの細胞には上清を除いた後、薬剤無しの培地を100 µl添加した。
※Blankのwellには、培地のみ100 μl添加した。
※Working solution添加のタイミングが同じになるようにStaurosporine処理した。 - 各wellにworking solutionを60 μl添加し、遮光下室温で15分間静置した。
- プレートリーダー(TECAN社 Infinite M200 PRO、ボトムリーディング)測定を行った。
- 得られた値からそれぞれブランクを差し引き、Annexin V - FITC由来の蛍光強度を算出した(図3)。
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図1 プレートレイアウト |
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図2 Staurosporine処理の流れ |
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図3 Staurosporine処理時間に伴う蛍光強度変化 (Ex/Em = 488/525 nm) |
AD12: Annexin V Apoptosis Plate Assay Kit
Revised Sep., 12, 2024