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長鎖アルキルチオール類


 アルカンチオールやアルコキシシラン化合物などが金属基板やガラス基板上で形成する自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayers : SAMs)は、基板を化合物溶液に浸漬するだけで欠陥の少ない単分子膜を容易に作製できるため、近年注目を集めている技術です。

 その応用例は、光スイッチング・光電池などの薄膜光学材料、超微細フォトレジストなどのパターン化材料、つや出し・濡れ性などの表面改質といった機能性材料分野から、マイクロアレイ、化学修飾電極、QCMやSPR等を用いた生体機能解析まで多岐にわたります。

 小社ではこれまで、金属基板修飾用のアルキルチオール類として、末端官能基がアミノ基と水酸基のものについてはアルキル鎖が6、8、11、末端官能基がカルボキシル基のものについてはアルキル鎖が5、7、10のものを販売しておりましたが、この度、それぞれ16、15のアルキル鎖をもつ長鎖アルキルチオール類を製品ラインナップに加えることと致しました。

 アルキル鎖長はSAMsの特性に大きく影響を与える因子の1つです。長いアルキル鎖はSAMsの配向の大きな駆動力となり、且つ熱的、化学的な安定性にも寄与します。n-アルカンチオールではアルキル鎖が12より短い SAMは、アルキル鎖が14より大きい長鎖SAMに比べ、金表面からのより早い脱着が起こるといわれています1)Fig. 1は種々のアルキル鎖長のカルボキシアルキルジスルフィドを用いて作成したSAMs電極のサイクリックボルタモグラムです。金表面からのチオレートアニオンの脱離に由来する不可逆なカソード電流が各電極で観測され、アルキル鎖長が長くなるにつれて、還元脱離の起こる電位が高くなっており、アルキル鎖長が長いほど形成されるSAMsが安定であることを示しています。

 また、アルキル鎖のメチレン数の偶奇により同じ末端官能基であってもSAM表面の濡れ性などの特性が変わることが知られています2)。アルカンチオール系のSAMsは垂直軸から30度程度傾いており、その結果、メチレン数が偶数と奇数の場合で末端官能基の向きが変化し、表面特性に影響をあたえます(Fig. 2)。長鎖アルキルチオール類は、汎用されているアルキル鎖11のアミノ基、水酸基タイプや、アルキル鎖10のカルボキシル基タイプのアルキルチオール類に比べより安定なSAMを形成し、異なる表面特性を有することが期待されます。

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Fig.1
Fig. 1

種々のアルキル鎖長のカルボキシアルキルジスルフィドを用いて作成したSAM電極のサイクリックボルタモグラム


Fig.2
Fig. 2

SAMs のアルキル鎖の偶奇効果


参考文献

1) P. E. Laibinis, M. A. Fox, J. P. Folkers, G. M. Whitesides, Langmuir 1991, 7, 3167.

2) I. Wenzl, C. M.Yam, D. Barriet, T. R. Lee, Langmuir 2003, 19, 10217.


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