試作品

近赤外蛍光標識試薬

ICG-Sulfo-OSu

化学名 2-[7-[1,3-Dihydro-1,1-dimethyl-3-(4-sulfobutyl)-2H-benzo[e]indol-2-ylidene]-1,3,5-heptatrienyl]-1,1-dimethyl-3-[5-(3-sulfosuccinimidyl)oxycarbonylpentyl]-1H-benzo[e]indolium, inner salt, sodium salt


<特長>

● 緩衝液中に混合するだけでアミン選択的に標識できる活性エステルである。

● 近赤外蛍光を用いた低バックグラウンド検出が可能である。

  (λ ex = 768 nm, λ em = 807 nm)

 ICG-Sulfo-OSuはindocyanine green(以下、ICG)の母核を参考にして分子設計された、蛍光標識試薬です 1)。ICGは、血液量測定や心機能検査・肝機能検査の他、蛍光眼底造影等に用いられている近赤外蛍光色素です。ICG-Sulfo-OSuも、分子内にICGと同じ蛍光団を有し、近赤外光で励起され、近赤外蛍光を発します。同様の極大励起波長・極大発光波長を持つ自家蛍光物質が少ないことから、生体試料の、低バックグラウンド観察が可能です。

 伊東らによって、消化器系癌の診断を目的とした研究について、一連の報告がなされています。専用の内視鏡用イメージングシステムにより、ICG-Sulfo-OSuの蛍光特性と適合した波長弁別が可能となっています2)。最近、癌マーカーである抗CEA(carcinoembryonic antigen)抗体を標識して組織染色を行った結果、近赤外蛍光像がDAB染色像と一致し、同一病巣を染色できることが示され ました3-4)

 紫外光や可視光に比べ、近赤外光は透過力が高いとされ、試料 深部の観察に向くとされます。そのため、生体イメージングによ る診断の可能性も秘めています。今後の、近赤外イメージングシ ステム及び診断技術の進歩が望まれます。

 本品のDMSO中での極大吸収波長は795 nmで、モル吸光係数は 1.28×105 M-1cm-1です。標識生成物は、PBS中、極大励起波長768 nmで、極大発光波長807 nmを示します1)

参考文献

1) S. Ito et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1995, 5, 2689.

2) S. Ito et al., Dig. Endosc., 1997, 9, 278.

3) S. Ito et al., Dig. Endosc., 2000, 12, 33.

4) S. Ito et al., Endoscopy, 2001, 33, 849.