新製品 4月1日発売

アミロイド染色用蛍光色素(1% FSB in DMSO)


FSB solution

化学名
 1-Fluoro-2,5-bis(3-carboxy-4-hydroxystyryl)benzene, 1% DMSO solution


   C24H17FO6=420.39


≪特長≫

・ アミロイドに対して高い親和性をもつ。

・ 従来の色素に比べ検出感度が高い(蛍光強度が従来のBSBの約 2倍)。

・ 溶液タイプのため、染色が容易である。

 現在、厚生労働省が特定疾患に認定している難病の「アミロイドーシス」とは、βシート構造で線維状に凝集したアミロイドと呼ばれる異常タンパク質が臓器や組織細胞の外に沈着して、これらの臓器や組織の働きを阻害する病気です。日本人に多い疾患として免疫細胞性アミロイドーシス(ALアミロイドーシス)、反応性 AAアミロイドーシス、家族性アミロイドポリニューロパチー (FAP)、透析アミロイドーシス(DRA)があげられ、国内に約数百人の患者がいると推定されています。これらのアミロイドーシスは上記の疾患のような全身の様々な臓器にアミロイドが沈着する「全身性アミロイドーシス」と、アルツハイマー病のように脳など特定の臓器のみにアミロイドが沈着する「限局性アミロイドーシス」と大きく2つに分類されます。アルツハイマー病は日本でも約100万人の患者がいるといわれており、年齢を重ねると誰もが発症する可能性のある疾患であり、原因究明及び診断・治療など、世界各国で様々な研究が成されています。

 小社で販売しているBSBは、アルツハイマー病の原因アミロイドであるアミロイドβペプチド(Aβ)へ高い親和性をもち、Aβ のアミロイド前駆体タンパク質(APP)を発現するトランスジェニックマウスTg2576に静注することで、18時間後の脳組織の老人斑(SP)に色素が集積することをSkovronskyらにより確認されています1)。Aβに限らず、安東らは、様々な全身性アミロイドーシスの沈着アミロイド(AA, AL, ATTR, Ascr, Aβ2M など)に対しても従来の色素より鋭敏に染色することを報告し 2,3)、さらにin vivoの系においても二次性アミロイドーシスを誘起したトランスジェニックマウスに静注すると、沈着アミロイド部分にBSBが集積することを確認しています2,3)。また、BSBは染色だけでなく、FAPのアミロイド前駆体TTRのアミロイド形成を阻止する働きがあることもわかっています3)

 FSBは従来の色素に比べ、高感度蛍光染色が可能な化合物です。 Congo redなどに比べて高感度であったBSBの約2倍の蛍光強度をもっています。これはBSBの臭素をフッ素に変え、重原子効果による蛍光消光をなくしたことから実現しました。アルツハイマー病患者の脳組織(Fig.1)およびALアミロイドーシス患者の心臓組織(Fig.2)の染色結果から、FSBはCongo redやBSBなどの従来の色素より鋭敏にアミロイド沈着部分を検出していることが確認できます。

 FSBはBSBとほぼ同じ骨格であるため、蛍光強度以外はBSB の特性をそのまま有していると考えられます。このことから in vivoでBSBより高感度検出が可能となり、今後のアミロイドーシスの診断・治療などの研究へのさらなる応用が期待されます。

≪使用法≫

サンプルの固定法:エタノール固定もしくはホルマリン固定

≪操作方法≫

*本製品は1%FSBのDMSO溶液です。

 本製品1本から、0.01%濃度の染色液が10 ml、0.0001%の染色液が1,000 ml調製できます。

1.FSB染色液の調製

 製品に50%エタノールを加えて希釈し、0.01〜0.0001%の濃度にする。

2.染色

 切片をFSB染色液に30分間浸す。

 切片を飽和炭酸リチウム水溶液に浸した後、50%エタノールにて軽く洗う。

3.観察

 UV光(V励起)にて観察する。

≪取扱方法≫

 購入後は必要に応じて小分けし、冷蔵保存して下さい。

≪参考文献≫

1) D. M. Skovronsky, B. Zhawng, M.-P. Kung, H. F. Kung, J. Q. Trojanowski, V. M.-Y. Lee, Proc. Natl. Acad. Soc., 97, 7609 (2000).

2) 安東 由喜雄, Dojin News, 104, 1 (2002).

3) Y. Ando, Y. Tanoue, K. Haraoka, K. Ishikawa, S. Katsuragi, M. Nakamura, X. Sun, K. Nakagawa, K. Sasamoto, K. Takesako, T. Ishizaki, K. Doh-ura, Lab. Invest., 83, 1751 (2003).

品名 容量 価格(¥) メーカーコード
FSB solution 100 μl 25,000 F308

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BSB solution

品名 容量 価格(¥) メーカーコード
BSB solution 100 μl 20,000 B525

FSB BSB

Fig.1 アルツハイマー病患者の脳の前頭皮質切片(エタノール固 定)の染色像(光っている部分がアミロイド)。準隣接切片で図中 の番号はそれぞれの老人斑に対応している。FSBの方がより細か い部分まで明確に観察できる。

(画像提供:理化学研究所脳科学総合研究センター神経蛋白制御 チーム 樋口真人先生, 西道隆臣先生)

Congo red Congo red(偏光顕微鏡下)

FSB BSB

Fig.2 ALアミロイドーシス患者の心臓組織切片の染色像(Congo redは赤褐色、BSBとFSBは光っている部分がアミロイド)。準隣接切片。FSBはより細かい部分まで明確に観察でき、アミロイド沈着部分のコントラストがハッキリしている

(画像提供:熊本大学大学院医学薬学研究部消化器内科 原岡克樹先生

               同    生態情報分析医学講座 安東由喜雄先生)