試作品

アミロイド染色用蛍光色素(1% FSB in DMSO)


FSB solution

化学名
 1-Fluoro-2,5-bis(3-carboxy-4-hydroxystyryl)benzene, 1% DMSO solution


   C24H17FO6=420.39


<特長>

・ アミロイドに対して高い親和性をもつ。

・ 蛍光強度が従来のBSBの約2倍である。

・ 溶液タイプのため、染色が容易である。

 アミロイドーシスはアミロイド(βシート線維構造を持つタンパ ク質)が臓器や組織細胞の外に沈着して、これらの臓器や組織の働 きを阻害する病気です。アミロイドーシスには、常染色体優性遺 伝で起きる「遺伝性アミロイドーシス」および慢性疾患や糖尿病 などに合併してみられる「続発性アミロイドーシス」など多くの タイプがあります。また、この病気は全身の様々な部分にアミロ イドが沈着する「全身性アミロイドーシス」と脳や皮膚など特定 の部位にアミロイドが沈着する「限局性アミロイドーシス」にも 分類され、これらはアミロイド前駆タンパクの違いによりさらに 細分類されています。

 すでに小社で販売しているBSBは、全身性アミロイドーシスの 沈着アミロイドを鋭敏に染色することが知られています 1)in vivoの系においても全身性アミロイドーシスの1つである二次性アミ ロイドーシスを誘起したトランスジェニックマウスにBSBを静注 すると、沈着アミロイド部分にBSBが集積していることが確認さ れています2)。他にも、限局性アミロイドーシスの1種であるアル ツハイマー病の研究において、Skovronskyらはアミロイド前駆 体タンパク質(APP)を発現するトランスジェニックマウス Tg2576にBSBを静注し、18時間後の脳組織の老人斑(SP)に色素が集積 していることを確認したと報告しています3) 。また、BSBには染色だけでなく、遺伝性の全身性アミロイドーシスである家族性ア ミロイドポリニューロパチー(FAP)のアミロイド前駆体TTRの アミロイド形成を阻止する働きがあることもわかっています 1)

 FSBはBSBの臭素をフッ素に変えて重原子効果による蛍光消 光をなくすことで、アミロイドの高感度蛍光染色を可能にしまし た。アルツハイマー病患者の脳組織(Fig.1)およびFAP患者の心 臓組織(Fig.2)の染色結果において、FSBはBSBより鋭敏にアミ ロイド沈着部分を検出しています。

 FSBはBSBとほぼ同じ骨格であるため、蛍光強度以外はBSB の特性をそのまま有していると考えられます。このことから in vivoでBSBより高感度検出が可能となり、今後のアミロイドーシ スの診断・治療などの研究へのさらなる応用が期待されます。

≪使用法≫

サンプルの固定法:エタノール固定もしくはホルマリン固定

≪操作方法≫

*本製品は1%FSBのDMSO溶液です。

 本製品1本から、0.01%濃度の染色液が10 ml、0.0001%の染色液が1,000 ml調整できます。

1.FSB染色液の調整

 製品に50%エタノールを加えて希釈し、0.01〜0.0001%の濃 度にする。

2.染色

 切片をFSB染色液に30分間浸す。

 切片を飽和炭酸リチウム水溶液に浸した後、50%エタノールに て軽く洗う。

3.観察

 UV光(V励起)にて観察する。

≪取扱方法≫

 購入後は必要に応じて小分けして冷蔵保存して下さい。

参考文献

1) 安東 由喜雄, Dojin News, 104, 1 (2002).

2) Y. Ando, Y. Tanoue, K. Haraoka, K. Ishikawa, S. Katsuragi, M. Nakamura, X. Sun, K. Nakagawa, K. Sasamoto, K. Takesako, T. Ishizaki, K. Doh-ura, Lab. Invest., 83, 1751 (2003).

3) D. M. Skovronsky, B. Zhawng, M.-P. Kung, H. F. Kung, J. Q. Trojanowski, V. M.-Y. Lee, Proc. Natl. Acad. Soc., 97, 7609 (2000).


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品名 容量 価格(¥) メーカーコード
BSB solution 100 ml 20,000 B525

FSB BSB

Fig.1 アルツハイマー病患者の脳の前頭皮質切片(エタノール固 定)の染色像(光っている部分がアミロイド)。準隣接切片で図中 の番号はそれぞれの老人斑に対応している。FSBの方がより細か い部分まで明確に観察できる。

(画像提供:理化学研究所脳科学総合研究センター神経蛋白制御 チーム 樋口真人先生, 西道隆臣先生)

FSB BSB

Congo red Congo red(偏光顕微鏡下)

Fig.2 FAP患者の心臓組織切片の染色像(Congo redは赤褐色、BSBとFSBは光っている部分がアミロイド)。準隣接切片。FSB はより細かい部分まで明確に観察でき、アミロイド沈着部分のコ ントラストがハッキリしている。

(画像提供:熊本大学大学院医学薬学研究部消化器内科 原岡克樹先生

               同    生態情報分析医学講座 安東由喜雄先生)

*MRI造影剤及び染色剤としての特許出願中です。