近日発売予定

遺伝子傷害検出抗体

抗ニトログアノシン モノクローナル抗体 (Clone# NO2G52)
Anti-Nitroguanosine monoclonal antibody (Clone# NO2G52)
                                50 μg (1mg/ml, 50 μl)

抗ニトログアノシン ポリクローナル抗体
Anti-Nitroguanosine polyclonal antibody
                         50 μg (200 μg/ml, 250 μl)

<特長>

・ 遺伝子傷害のマーカー
・ 高い特異性、免疫組織染色、ELISAで使用可能
・ モノクローナル抗体サブタイプ:IgG1

 8-ニトログアノシンは、生体内で血管の弛緩を制御し血圧調節 をつかさどっている一酸化窒素(NO)と、活性酸素(スーパーオ キシドアニオンラジカル)によって生じる過酸化亜硝酸(パーオ キシナイトライト)によってDNAやRNAがニトロ化された核酸 です。生体組織が炎症を起した際には、多量のNOが産生され、多 くの過酸化亜硝酸が生じグアノシンをニトロ化することが知られ ています。化学修飾を受けた核酸塩基は、細胞分裂によって遺伝 子を複製する際に、翻訳の間違いを引き起こし、本来G-Cの対で あった部分が、分裂と共にT-A対に置き換えられた遺伝子変異を 引き起こすと言われており、癌組織中にはT‐A配列が多く存在す ることが知られております。これらのことから、8-ニトログアノ シンは発癌や遺伝子変異に関与した遺伝子傷害の指標として注目 されています。

8-ニトログアノシンの構造

 

 今回、熊本大学 赤池孝章先生らのグループと共同で抗ニトログアノシン抗体を開発致しました。赤池先生らはまず、ポリクロー ナル抗体を用いて、インフルエンザ感染マウスの肺上皮細胞の炎 症を起した場所でニトログアノシンが多量に生成していることを 発見しました。ニトログアノシンの局在は抗iNOS抗体で染色し たiNOS発現部位と一致し、過剰に産生したNOによってニトロ グアノシンが生成していることが示唆されました1) 。NOがウィルス遺伝子の変異をもたらすことは知られており 2)、ニトログアノシンがNO由来の遺伝子変異に関与していることが考えられます。 その後、力価の高いモノクローナル抗体で検討を進めていくと、ニ トログアノシンは炎症部位以外にも正常な細胞でも微量ながら生 体内に広く存在し、遺伝子傷害の指標としてだけではなく、生体 内での酸化還元に関与し、生体機能を調節する因子として作用し ていることが示唆されました。抗ニトログアノシン抗体を用いれ ば、細胞内、特にヌクレオチドプールにあるニトログアノシンの 存在を免疫組織化学的染色によって、検出することができ、ニト ログアノシンの役割や遺伝子傷害や発癌機構の解明に役立つもの と期待されています。

モノクローナル抗体 (Clone# NO2G52)

 モノクローナル抗体は、8-ニトログアノシンとその塩基である 8-ニトログアニンに強く反応しますが、正常なヌクレオシドや核 酸塩基には反応しません。また酸化ストレスのマーカーである8- ヒドロキシグアニン、8-ヒドロキシデオキシグアノシン、3-ニト ロチロシンとも交差しない上、構造的に8-ニトログアニンと類似 しているキサンチンや2-ニトロイミダゾールとも交差しないなど、 抜群の特異性と高力価を有しています。

 下図はプレートに固相化した8-ニトログアノシン結合BSA (NO2-Guo-BSA)と各種の物質に対する、本抗体の反応を競合法 ELISAで検定したものです。8-ニトログアノシンと8-ニトログア ニンに対してのみ、競合物質の濃度に依存した右下がりの曲線を 与え、本抗体が反応していることを示しています。他のヌクレオ シド等は反応しないため、競合物質の濃度に関係なく本抗体は固 相化したNO2-Guo-BSAに反応し、ほぼ一定の値を示します。

モノクローナル抗体NO2G52の反応性

 

〈用途〉
・ ELISA(1 μg/ml)、免疫組織染色(10 μg/ml)

〈モノクローナル抗体NO2G52の反応性(IC 50(μmol/l))〉

・ 強く反応する(10 μmol/l)
  8-NO2-Guanosine, 8-NO2-Guanine

・ わずかに交差反応あり(>1mmol/l)
  8-Br-Guanosine, 8-Br-Guanine, 8-Cl-Guanine

・ 交差反応なし
Guanosine, Guanine, 8-OH-Guanine, 8-OH-deoxyGuanosine, Xanthine, Adenine, Adenosine, Thymine, deoxyThymidine, Uracil, Uridine, 3-NO2-Tyrosine, 2-NO2-Imidazole, Cytosine

 本抗体はわずかに8-Br-グアノシン、8-Br-グアニン、8-Cl-グ アニンと交差反応を示しますが、これはグアニンの8位近傍を正 確に認識する力価が高いためと考えられます。8-ニトログアノシ ン、8-ニトログアニンとの反応性の差は100倍以上ありますので、 問題なく使用できます。

ポリクローナル抗体

 ポリクローナル抗体も8-ニトログアノシンと8-ニトログアニン にのみ反応し、正常なグアノシン、グアニンには反応しません。ま た8-ヒドロキシグアニンや、3-ニトロチロシンとも交差しません。 ウサギ由来であるためマウスなどげっ歯目の組織染色に適用でき ます。

ポリクローナル抗体の反応性

 

〈用途〉
・ ELISA(5 μg/ml)免疫組織染色(10 μg/ml)

〈ポリクローナル抗体の反応性(IC50(μmol/l))〉

・ 強く反応する(10 μmol/l)
  8-NO2-Guanosine, 8- NO2-Guanine

・ 交差反応なし
  Guanosine, Guanine, 8-OH-Guanine, 3- NO2-Tyrosine

 組織染色での吸収試験用として8-ニトログアニンも近日発売予 定です。予め過剰の8-ニトログアニンで処理した抗体を添加した 染色像が陰性であれば、抗体による陽性像は非特異的染色ではな く8-ニトログアノシンまたは8-ニトログアニンを検出しているこ とを意味します。

参考文献

1) T. Akaike, S. Okamoto, T. Sawa, J. Yoshitake, F. Tamura, K. Ichimori, K. Miyazaki, K. Sasamoto, and H. Maeda, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100 (2), 685 (2003).

2) T. Akaike, S. Fujii, A. Kato, J. Yoshitake, Y. Miyamoto, T. Sawa, S. Okamoto, M. Suga, M. Asakawa, Y. Nagai, and H. Maeda, FASEB J., 14, 1447 (2000).