試作品案内
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近年、アルキルチオール類を金表面に吸着させ、自己組織化単 分子膜(SAM : SelfAssembled Monolayers)を形成する方法は、欠損のない単分子膜を容易に作製できるため、金修飾電極、表
面プラズモン共鳴、水晶発振子マイクロバランス等に幅広く利用 されています。
これらの自己組織単分子膜(SAM)を構成する分子は、基本的
に金基板への吸着を目的とする官能基、主鎖及び機能性官能基の3
つの部分から構築されており、その単分子膜の性質は主鎖の長さ
や親水性、機能性官能基の種類により、多彩な機能を持ち得ます。
特に、機能性官能基としてアミノ基を持つアミノアルカンチ
オールは、種々のペプチドやタンパク質、その他分子認識サイト
を導入する際に有用です。既に、11-Amino-1-undecanethiol
単分子膜を用いて、タンパク質-DNA間相互作用のイメージングを
行なった報告もなされています1)。
今回紹介するSAM研究試薬は、アミノ基をFmoc保護したア
ミノアルカンチオールです。基板上にSAMを形成させた後、脱保
護を行なうことにより、アミノ基を露出させることができます。脱
保護操作は容易であり、塩基溶液に基板を浸漬することで達成で
きます。
以下にSAM修飾電極を作製し、サイクリックボルタモメトリー (CV)を行なった結果を示します。
図1. N-Fmocアミノアルカンチオールのサイクリックボルタモグラム
11-FAUT、8-FAOT、6-FAHTの各エタノール溶液(100μmol
/ l)に、30秒間水素炎アニールした金基板(1000Åを5分間浸漬させてSAM修飾電極を作製した。金表面からのチオール単分子膜の脱離挙動を、0.1
mol/l KOH水溶液中で測定した。浸漬時間5分で、アルキル鎖長にかかわらず吸着量は、0.9
nmol/cm2であった。
〈測定条件〉
作用電極: SAM修飾電極、対極:Pt Plate、参照電極:Ag /
AgCl、開始電圧:-100 mV、最大掃引電圧:-100 mV、最小掃引電圧:-1300 mV、掃引速度50
mV/sec、0.1 mol/l KOH水溶液中、窒素雰囲気下でCV測定。
金表面からのチオレートアニオンの脱離に由来する不可逆なカ
ソード電流が各修飾電極で観測され、アルキル鎖長が長くなるに
つれて、還元脱離の起る電位がより負電位側にシフトすることが
確認されました(図1)。また、脱保護後の各修飾電極においても
同様の傾向が確認され、脱保護操作後もSAMを形成しており、吸
着量の変化がないことが確認されました。また、ピペリジンのア
セトニトリル溶液(20%)に30分間浸漬することにより、脱保護
できていることが電極表面の反射赤外吸収スペクトルから示唆さ
れています(データ未掲載)。
光照射によるパターニングを行なった後に化学修飾を行なった
り1)、アミノ基と金との相互作用を回避したりするのに利用できる
可能性があります。これまで以上に高度に制御されたSAMを利用
して、各種検出を行なうことが期待されます。
弊社ではお客様の使用用途に合わせて、他にも様々なタイプの
SAM関連試薬を取り揃えております。どうぞご利用下さい。
参考文献
1) J. M. Brockman, A. G. Frutos, R. M. Corn, J. Am. Chem. Soc., 121, 8044 (1999).