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DNA抽出キット -Nucleopure-

 DNA Extraction Kit (for Agarose Gels) 

 

〈特長〉

・高純度DNAを高回収率で得ることができる。
・遠心フィルターや担体を使用しないので、各種のスケールに対 応することができる。
・各種のDNA溶液を調製することが可能である。
・各アガロース濃度のゲルに使用することができる。
・各断片長のDNAの精製が可能である。

 特定のDNA断片を単離精製するために、アガロースゲル電気泳 動を用いたDNAの分離回収は広く行われており、簡便な操作で、 高回収率、高純度のDNAが得られる方法が望まれています。
 本キットはゲルを溶解させるためのGel SolubilizerとPrecipitation Solutionの2種類の溶液によって構成されており、この2 種の溶液によって簡単にゲルを溶解し、効率的に目的DNAを回収 できます。DNA回収ステップを以下に簡単に示します。

 1) アガロースゲルを用いて電気泳動させた後、目的のDNAフ ラグメントを含んだ部分を切り出す(ゲルスライス)。
 2) Gel Solubilizerをゲルスライスに加え、加温し溶解させる。
 3) Precipitation Solutionを加えDNA以外の物質を沈殿させる。
 4) 遠心分離により上澄みを取る。
 5) エタノール沈殿によって上澄みからDNAを回収する。

 一方、従来のアガロースゲルからのDNAの回収は、透析膜を用 いた電気泳動濃縮法、低融点アガロースを用いた方法、またアガ ラーゼ等の分解酵素を用いた方法、およびシリカベースの担体へ のDNAの吸着を利用した方法が用いられています。中でも、シリ カベースの担体を用いたキットが多数市販されています。この方 法の概要を以下に示します。

 1) アガロースゲルを用いて電気泳動させた後、目的DNAフラ グメントを含んだ部分を切り出す(ゲルスライス)。
 2) 高濃度NaI水溶液を加え、加温しながらゲルスライスを溶解 させる。
 3) シリカベースの担体を加え吸着させる。
 4) 遠心フィルター等を用いてDNAを吸着した担体を分離する。
 5) 担体に吸着させたまま、バッファーで洗浄する。
 6) 溶解バッファーでDNAを担体から溶かし出す。

 シリカゲルベースのキットは吸着担体の懸濁液、分離用フィル ター、各種バッファーをセットにしたもの、あるいは、シリカベー スのメンブランフィルターを組み込んだ遠心チューブと各種バッ ファーをセットにしたものです。しかしながらいずれも担体を分 離するためのフィルターを利用するため、一度に精製できる量が 制限されてしまいます。
 本キットで実際に抽出したDNAと上市されている他社キットを 用いて抽出したDNAの吸光スペクトルの比較をFig.1に、また、 各キットで分離精製したDNAをアガロースゲル電気泳動しエチジ ウムブロマイドで染色した結果をFig.2に示します。

 

Fig.1 Spectra of DNA after extraction using various kits.

 

Fig.2 Recovery of Calf thymus DNA using various Kits
1: Kit C, 2: Kit Q, 3: Dojindo, 4: Standard DNA (0.5 ug DNA) 

 

 精製された純度の高いDNAフラグメントであれば、260 nm付近に極大吸収を持つスペクトルとなりますが、Fig.1のスペクトル データから、他社キットを用いた場合は260 nm付近に明瞭な極大吸収がなく、アガロース由来の多量の不純物を含んでいる事が わかります。また、Fig.2に示すように吸着担体を使ったキットで 回収したDNAフラグメントの蛍光量は回収前のDNAフラグメン トや本キットで回収したDNAフラグメントに比べ弱く、回収率が 低い事がわかります。
 以上のことから、シリカゲルベースの担体を用いたキットでは、 実際にその製品のマニュアルに述べられている純度や回収率を達 成することは難しいといえます。
 その他のDNAフラグメント単離精製方法として、特殊なフィル ターを用いてゲルとDNAを分離させる方法や、透析膜の付いたカ プセルに切り出したゲルを入れ、短時間で電気泳動させ、カプセ ルの透析膜側にDNAを濃縮する方法があります。しかし、これら の方法も純度や収量がばらつき、アガロースゲルからのDNA回収 キットとして高い信頼性を持っているとは言えません。

DNAマーカーとして用いられていますλDNA / HindVの各フラグメントを本キットを用いて分離し、再び電気泳動した結果を Fig.3に示します。この図から、それぞれの長さのDNAフラグメ ントがきれいに分離回収されていることがわかります。

 

Fig.3 Recovery of different size DNA fragments of λDNA/Hind III  

 なお、λDNA / HindV の23Kbpのフラグメントと4.4KbpのDNAフラグメントが一部ハイブリダイズするため、回収した 23KbpDNAフラグメントを泳動したレーンでは2本のバンドが見 られます。

 Fig.4には各アガロース濃度のゲルから抽出したDNAのスペク トルを示します。アガロース由来の成分の混入を示す短波長域の 吸収も無く、高純度のDNAが抽出されていることがわかります。

Fig.4 Comparing of the spectra of extracted DNA with various gel concentrations.

 本キットを用いてアガロースゲルからDNAフラグメントを回収 するのに要する時間は約40分程度で、吸着担体を使用する他の キットに比べ時間を要しますが、コンスタントに高純度のDNAフ ラグメントを分離回収する事ができます。また、DNAをペレット として得ることができるために、長期保存も可能で、各種バッ ファー溶液や高濃度のDNA溶液を調製することが可能です。加え て、スケールアップが容易なため、大量にDNAフラグメントをアガロースゲルから回収する事が必要な場合にも有効なキットとな ります。