Q&A
Q1. どのような原理で測定するのでしょうか。
A1. glutathioneは、下図に示した酵素リサイクリング法によって 高感度に検出されます。5,5’-dithiobis(2-nitrobenzoic acid) (DTNB)はジスルフィドを分子内に含有し、glutathioneを酸 化すると同時に自身は5-mercapto-2-nitrobenzoic acidに還元されます。このチオールの吸光度(λmax =412 nm)よりglutathioneを定量することができます。
Q2. キット以外には何を準備すればいいのでしょうか?
A2. 測定にはキット以外に下記の物が必要になります。
・ プレートリーダー (405nm、もしくは 415nm フィルター)
・ 96 well プレート
・ 20μlと200μlのマルチチャンネルピペット
・ インキュベーター
・ 5-スルホサリチル酸 (SSA)
Q3. マルチチャンネルピペットが無い場合は使えないのですか?
A3. Substrate working solutionを加えるとすぐに発色が始まりますので、well間のタイムラグをできるだけ少なくするため にマルチチャンネルのピペットの使用をお勧めします。無い 場合には、できるだけwell間のタイムラグの無いように添加 してください。
Q4. 5-スルホサリチル酸(SSA)は何のために使うのでしょう か?SSAの代わりに使える試薬はありませんか?
A4. 「除蛋白」と「GSHの安定化」の目的で使用します。また、除 蛋白剤として通常用いられる酸(トリクロロ酢酸、過塩素酸、 メタリン酸等)では、SSAとピクリン酸がGSHの酸化を防ぐ効果が高いと言われていますので、SSAもしくはピクリン 酸の使用をお勧めします。ただし測定の際には、トリエタノー ルアミン等でpH7程度に中和するか、酸濃度が1%程度以下 になるように希釈してから測定して下さい。
Q5. マ測定に影響を与えるような物質はありますか?
A5. アスコルビン酸、β-メルカプトエタノール、ジチオスレイトー ル(DTT)のような還元物質やシステイン 、またSH基と反応するような化合物(マレイミド等)は測定に影響があります。 これらの化合物は前処理の段階で除くようにして下さい。
Q6. 測定可能な濃度範囲はどれくらいでしょうか?
A6. total glutathione濃度が1〜100μmol/lの範囲で測定可能です。
Q7. 試料にどのくらいの濃度のglutathioneが入っているかわから ない場合は、どのように測定すればよろしいのでしょうか?
A7. 測定試料中のtotal glutathioneの濃度が分らない場合は、測定試料を希釈したものを数種類調製してから測定を行ってく ださい。
Q8. 試料中のglutathioneの濃度と発色時間、吸光度の関係を教え て下さい
A8. 各濃度のGSH におけるDTNB発色のタイムコースを下記に示します。
※横軸はSubstrate working solutionを添加してからの時間(分)
Q9. 溶解したCoenzymeはどのくらい使えるのでしょうか?
A9. 溶解後のCoenzymeは氷浴中で保存して下さい。ただし徐々 に失活しますので、Coenzymeは溶解したその日のうちにお 使い下さい。Coenzymeはキットに2本入っておりますので、 一度に50well以上測定しない場合には、1本のみ溶解するよ うにして下さい。
Q10. 測定試料の前処理方法について教えて下さい。
A10. 細胞、組織、血漿、赤血球の前処理方法について下に記しま す。また、測定試料中のSSAの濃度が1%を超えると測定に影響がありますので、濃度が0.5〜1% になるよう測定前に希釈して調製してください。
・細胞(付着細胞: 5x105 cells,白血球細胞: 1x106 cells)
1) 200xgで10 分間、4℃にて遠心し、上清を捨てる。
2) 300μlのPBSで洗浄し、再度200xgで10分間、4℃にて遠心し、上清を捨てる。
3) 10 mmol/lのHClを 80μl加え、凍結と溶解を2回繰り返し細胞膜を破壊する。
4) 5% SSAを20μl加え、8000xgで10分間遠心する。
5) 上清を測定試料とする。
・組織 (100 mg)
1) 充分に脱血後、5% SSA 0.5〜1 ml中で組織をホモジナイズする。
2) 8000xgで10分間遠心する。
3) 上清を測定試料とする。
・血漿
1) 抗凝固剤を加えた血液を、1000xg で10 分間、 4 ℃にて遠心する。
2) 上清を新しいチューブに移し、半量 の 5% SSAを加える。
3) 8000xg で10分間、4 ℃にて遠心する。
4) 上清を測定試料とする。
・赤血球
1) 抗凝固剤を加えた血液を、1000xg で10 分間、 4 ℃にて遠心する。
2) 上清を捨てる。
3) 4倍量の 5% SSAで溶血する。
4) 8000xg で 10 分間、 4 ℃にて遠心する。
5) 上清を測定試料とする。
Q11. このキットで酸化型(GSSG)、還元型(GSH)の測り分け はできますか?
A11. 2-vinylpyridineによりGSHのSH基をマスクしてGSSG のみを検出し、total glutathione(GSH+GSSG)量から差し引くことでGSH, GSSGのそれぞれを定量することができます。
Q12. GSSGの濃度測定のときに2-vinylpyridine処理してから測定するようにとありますが、その際に注意することはありますか?
A12. 2-vinylpyridineを高濃度で用いたり、そのままプレートに入 れたりするとプレートが腐食します。下記のような方法にて 測定してください。
【2-vinylpyridineを用いたマウス血清中GSSGの測定例】
約700μlのマウスの全血に対し、25μlのEDTA (500mmol/l)を加え、1.5分遠心します。上清を取り、上清に対し半量の10% SSAと混合し、更に遠心します。上清から100μl取り、2μlの2-vinylpyridineと6μlのトリエタノールアミン(45μmol)を加えて混合します(トリエタノールアミンはpH調製のため。最
終pHは7〜7.5程度)。これを測定試料としてGSSGの測定を 行います。
Q13. N-ethylmaleimideを用いて酸化型(GSSG)のみを測定することは可能ですか?
A13. 基本的に2-vinylpyridineと同様に用いることは可能ですが、 あまりお勧めはできません。N-ethylmaleimideは、還元型 のglutathioneとの反応は非常に早いのですが、ある一定の 濃度を超えると、その後のglutathione reductaseを用いた酵素サイクリングの反応を阻害するとの報告例があります。 [M. E. Anderson, Methods in Enzymol., 113, 548 (1985).]。
Q14. 他社のキットとはどのように違うのですか?
A14. O社のキット(¥59,000/100 tests)は1アッセイ当たりの ボリュームが大きく96穴のプレートでの測定ができないた
め、同時に多検体の測定を行う場合には向いていません。ま た、C社のキット(¥29,800/96 well)は96穴のプレートでの測定は可能ですが、測定範囲が0〜16μmol/lと狭く、測定試料が限られたり前処理の操作が増えることが考えられま す。
本キットは測定範囲が1〜100μmol/lと広く、また96穴プレートでの測定が可能で操作もインキュベートの時間を含め ても40分〜1時間程度で終了するため、同時に多検体を短
時間で測定することができます
Q15. 実際の操作を教えて下さい。
A15.
1) Substrate(DTNB)に1.2 ml、Coenzymeに7 ml Buffer solutionを加えて溶解する(Substrate working solution, Coenzyme working solution)。
2) Standard GSHに測定サンプルと同じ酸性溶液(例:0.5〜1% 5-sulfosalicylic acid:SSA)を2 ml加えて溶解し、順次希釈する(Standard GSH solution)。
3) Enzyme solutionをBuffer solutionで200倍希釈する(Enzyme working solution)。
4) Coenzyme working solutionを140μl、Enzyme working solution を20μl各wellに添加し、30℃で5分間インキュベートする。
5) Standard GSH solution、もしくは測定試料20μlを添加し、30℃で10分間インキュベートする。
6) Substrate working solutionを20μl添加し、室温で10分間インキュベートする。
7) プレートリーダーで吸光度(405 nmもしくは415 nm)を測定する。
Q16. total glutathione濃度の求め方を教えて下さい。
A16. 得られた吸光度より、total glutathione濃度は下に示すendpoint methodでもkinetic methodのどちらの計算式でも求めることができます。
Pseudo-endpoint method: Total glutathione (GSH+GSSG) |
Kinetic method: Total glutathione (GSH+GSSG) |
*これらの計算式によって求められた値は、調製した測定試 料溶液中のglutathioneの総量 になります。
細胞や組織中の正確なglutathioneの濃度を求めるには、除蛋白剤の量や測 定試料の希釈倍率等を考慮して更に計算が必要となります。
品 名 | 容量 | 価格(¥) | メーカコード |
Total Glutathione Quantification Kit | 100tests | 25,000 | T419 |