お知らせ

第11回フォーラム・イン・ドージン開催報告

        「自然免疫の分子基盤」



フォーラム・イン・ドージンも回を重ね、今年で11回目を迎え11 月24日、秋晴れのなか、熊本県立劇場で開催することができまし た。 今年は岩永 貞昭先生(九州大学名誉教授)のご指導により、「自然免疫の分子基盤」というテーマで、この分野の第一線で活躍 されている先生方に講演いただきました。 オーガナイザーは岩 永先生の他、先生のお弟子さんにあたる川畑 俊一郎先生(九大院・理)、牟田 達史先生(九大院・医)、それに第一回目からお世話いただいている山本 哲朗先生(熊本大院・医)の4名の先生方で、演者構成も例年になく若手中心になりました。 その分、討論も非 常に活発で、レベルの高いシンポジウムになったのではないかと 自負しています。 この分野は日本が世界をリードしており、自 然免疫の仕組みがどこまで分かっているか、また、どのような分 子がそれを担っているかといった点について、本フォーラムでは 明らかにできました。 これも岩永先生をはじめとするオーガナ イザーの先生方の意向が強く反映された結果だと思います。

 講演はまず最初に、倉田先生(東北大院・薬)が主にショウジョ ウバエの抗菌ペプチドの発現誘導を例に、自然免疫を制御するシ グナル伝達カスケードについて述べられました。 広く生物界に おいて自然免疫が非常に有効な生体防御システムであることが良 く理解できた講演でした。 次に、オーガナイザーでもある川畑 先生は、カブトガニの生体防御レクチンによる異物認識について 講演されました。 講演ではタキレクチン-2とタキサイチンの糖 鎖認識機構を中心に紹介されました。 前田先生(熊本大・医)は、 セリンプロテアーゼインヒビターの一種であるα1プロテアーゼイ ンヒビターの生体防御における役割について、特に NO によるニトロソ化との関連で講演されました。 このタンパク質は炎症初 期に多く血中に出現し、同時に発生する NO によってニトロソ化をうけ、多彩な生理作用を持つようになるといった興味深い内容 でした。 次の藤田先生(福島県立医大)の講演は、生体防御に おける補体レクチン経路の重要性についてで、ヒトのフィコリン が補体レクチン経路を活性化していることを示されました。 さ らに野中先生(東大院・理)の講演も補体系に関するものでした が、マボヤ補体系を例に、分子進化の面からの考察をされました。  つづくセッションは哺乳類の自然免疫にフォーカスをあて、ま ず最初に改正先生(阪大微生物研)が、自然免疫の病原体認識に 関与する膜タンパクファミリーである Toll-like receptors(TLR)について講演されました。 TLR は最近注目を集めていますが、その機能についてはまだまだ不明なところも多いようです。 赤 司先生(佐賀医科大)は TLR と会合する MD タンパク質によるエンドトキシン認識機構について最近の知見を紹介されました。  最後に泥谷先生(大分医科大)によって、LPS の上流に位置するタンパク質 CD14 の機能についての紹介がありました。

 自然免疫は、下等生物から哺乳動物まで生物が基本的に備えて いる免疫システムで、その重要性がストレスや疾病との関連で最 近注目されつつあります。 そこで働く分子も、ほぼ役者が出そ ろった感があります。 本フォーラムは、それらについて現時点 でどこまで解明されたかについて第一線からの報告と集中的な議 論の場となり大変有意義だったと思います。 なお、講演要旨集 の残部が若干ございますのでご希望の方は、小社マーケティング 部・斉藤までご連絡下さい。                                                           (佐々本 一美)

 


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