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テロメラーゼ阻害剤:TMPyP

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〈特長〉

テロメラーゼの強力(IC50=6.5±1.4 μmol/l)な阻害剤である。

 テロメア(telomere)は、染色体の両末端に存在する繰返し配 列であり、ダイセントリック染色体の形成から染色体を守る役割 を果していると言われています。染色体複製の際RNAプライマー 結合のために複製されない部分が生じることから、複製が繰返さ れる毎にテロメア長は短くなります。正常な体細胞においてはテ ロメア伸長の機構は存在せず、テロメア長が細胞の分裂可能回数、 即ち細胞寿命の指標になっていると言われています。一方、癌細 胞や、生殖系・造血系の細胞にはテロメラーゼ(telomerase)が 存在し、テロメア伸長を行っているため、これらの細胞は、無限 に細胞分裂することが可能になると言われています。

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図1 G-quadruplex 構造

 ヒトのテロメアの一次配列は、TTAGGGの繰返し配列です。3' 末端側には、塩基対を形成しない一本鎖部分がはみ出しており 1)、その長さはヒトで150塩基以上といわれています。この一本鎖は 折り畳まれて安定な4本鎖構造(G-quadruplex、図1A)を形成 2)していることが明らかになりました。グアニン間の結合は、 Hoogsteen型塩基対(図1B)を形成しています。図ではG- quadruplexを正方形で表していますが、この時の1辺の長さは10 ~11Åです。
 G-quadruplexに特異的に結合する化合物の存在は知られてお り、TMPyP(5,10,15,20-tetra-(N-methyl-4-pyridyl) porphine)もそのような化合物の一つです。分子は平面構造をとっており、隣 接するピリジル基窒素間の距離(約9Å)は、G-quadruplexの 1辺の長さに近く、またカチオン性窒素はDNAのリン酸基と静電 的相互作用をすると考えられています。そのような性質から、 TMPyPはG-quadruplexに結合し、その構造を安定化します。最 近では、より積極的にG-quadruplexの形成に関与していること も示されています。
 TMPyPがG-quadruplexに結合することによって、テロメラー ゼはテロメアへの結合を妨げられ、その酵素活性自体も阻害されま す3,4)。TMPyPのテロメラーゼに対するIC 50値は6.5±1.4μmol/lです。テロメラーゼ自体はもとより、発癌や細胞寿命の研究に活用 されることが期待されます。

参考文献
1) E. H. Blackbum and C. W. Greider, Teromerase, Cold Spring Harbor Press, New York., (1995).
2) W. I. Sundquist and A. Klug, Nature, 342, 825 (1989).
3) R. T. Wheelhouse and L. H. Hurley, J. Am. Chem. Soc., 120, 3261 (1998).
4) F. X. Han, R. T. Wheelhouse and L. H. Hurley, J. Am. Chem. Soc., 121, 3561 (1999).

 

 品  名   容量   価格(¥)  コード番号 
TMPyP 100mg 3,350 345-03881
1g 20,400 341-03883