Q&A PKA用ペプチドプローブ

AR II, DR II

AR II, DR IIは東京薬科大学の工藤先生らにより開発された、新しい培養細胞内でのPKA活性化イメージング試薬です。

【特長】
・培養液に添加するだけで比較的簡単に細胞内に導入できます。
・従来の試薬に比べ安価です。
・AR II:DLDVPIPGRFDRRVSVAAC-Ad
・DR II:DLDVPLPAKADRRVSVAAC-DACM

Q) どのような原理で測定できるのでしょうか?
A) これらの試薬は、cAMP依存性蛋白リン酸化酵素(PKA)の調節ドメイン(regulatory domain)の一部を切り出しそのリン酸化部位の近くに蛍光基を付したものでPKAの特異的な基質となります。酵素の活性化に伴いこれらの試薬がリン酸化されると、ペプチド構造が変動し蛍光物質の蛍光強度が変動します。その変化を捉え解析することで、PKAの活性化を可視化することが出来ます。

Q) AR IIとDR IIはどこが違うのでしょうか?
A) AR II及びDR IIどちらもペプチドC端のシステインのSH基に、それぞれ蛍光物質のアクリロダン及びDACMをMichael付加して導入したものなので、その蛍光基の違いにより蛍光波長が異なります。AR IIはλex=366nm,λem=525nmであるのに対しDR IIはλex=386nm, λem=475nmです。
また、細胞膜の透過性が若干異なるようです。文献によりますと、AR IIはNG108-15には容易に取り込まれますが、海馬神経細胞の初代培養細胞には取り込まれにくいようです。DR IIはAR IIのペプチドのアミノ酸配列を一部変更して若干膜透過性を上げたもので、これを使用すると海馬神経細胞の初代培養細胞も容易に染色できるようです。

Q) 測定装置はどのようなものが必要でしょうか?
A) これらの蛍光変化は数%から十数%程度と余り大きくなく、細胞内でのPKAの活性化を可視化するには、培養細胞の蛍光顕微鏡画像を感度良く取り込んで画像処理する必要があります。浜松ホトニクス社のArgus 50 やArgus 100を用いた報告があります。その他、Argus/Hiscaを用いて可視化した例もあります。

Q) 何が測定できますか。
A) 細胞内でのPKAの活性化状態を可視化することができます。PKA活性化前後の相対的な蛍光強度変化を追っておりますので、活性化したPKAやcAMPなどの細胞内濃度などが測定できるわけではありません。

Q) 細胞への負荷はどのようにすればいいのでしょうか?
A) 使用前にPBSなどのバッファーなどに溶解しそのまま培養液に添加すると細胞内にロードできます。濃度は文献では、数十μg/ml から100μg/ml の濃度で使用されております。添加後30分から1時間程度インキュベートして頂くだけで細胞内にロードされます。

Q) AR IIとDR IIはどの位の期間安定なのでしょうか?
A) 本品は凍結乾燥品であり、冷凍庫で保存すれば1年以上安定です。短期間であれば冷蔵でも構いませんが、長期間保存されるのであれば冷凍にて保存してください。

Q) 高濃度のストック溶液として保存したいのですがどのような溶媒が使用できるでしょうか。また、水溶液にした後の安定性、保存方法について教えて下さい。
A) 純水に使用時の数十倍程度の濃度(数十〜数百μg/100μl)で溶解してお使いください。通常のペプチド同様、溶液での長期保存は出来ません。溶液を調製した後は、小分け後冷凍(-20℃以下)で保存して下さい。なお、凍結融解は繰り返さないようにしてください。

Q) 細胞に負荷後、細胞外を DR II free の溶液にした場合DR II の流失はどの程度でしょうか?
数十分の計測に充分耐える位には保持されるのでしょうか。

A) 細胞内への保持時間・漏出割合を調べたこと、またそれに関する論文などはございませんが、細胞内にロードして一晩置いたものでも細胞内に留まっているものもあります。全ての細胞で同様であるとは言えませんが、細胞内での保持は良いのではないかと思います。

Q) PKAそのものに蛍光基を導入したタイプのもの(FICRhR)が市販されていますが、それに対する利点は何ですか?
A) FICRhRはPKAの調節ドメイン、触媒ドメインそれぞれに蛍光基であるローダミン及びフルオレセインを導入したもので、PKAの活性化に伴いその2つのドメインが解離して蛍光波長が変化するものです。したがって、レシオメトリー測定が可能であるという利点がある反面、巨大分子であるために細胞内への負荷にはマイクロインジェクションなどの操作が必要です。また、非常に高価であるという欠点もあります。それに比較して、AR II 及びDR IIは膜透過性の蛍光プローブですので、培養液に添加するだけで細胞への負荷が出来ます。また、FICRhRに比較しても非常に安価です。

Q) 参考となる文献を紹介してください。
Q) 下記の論文を参考にされるとよいと思います。

1) H. Higashi, K. Sato, A. Omori, M. Sekiguchi, A. Ohtake, Y. Kudo, FEBS Lett., 414, 55(1997).
2) H. Higashi, K. Sato, A. Omori, M. Sekiguchi, A. Ohtake, Y. Kudo, Neuroreport, 7, 2695(1996).
3) 工藤佳久、東秀好、細胞工学、16, 64(1997).
コード番号 品名 容量 価格(\)
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