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水溶性カリックスアレーン

Calix[6]arene p-sulfonic acid
Calix[8]arene p-sulfonic acid


 カリックスアレーンはフェノールを環状に配置した大環状化合物であり、その特異な構造と、比較的容易に官能基を導入できることから、包接化合物の基幹物質として数多く利用されている。
 水溶性カリックスアレーンは芳香環部分にスルホン酸基を導入したもので、水に極めてよく溶け、したがって、環状の芳香環が作り出す疎水場環境を親水性雰囲気中に提供することが可能である。この化合物は筒状構造の両端に酸性プロトン(OH基)と陰イオン基(SO3-基)を並べた構造しており、フェノールブルーなどのような極性分子を包接する場合、疎水性相互作用、水素結合、イオン相互作用などを介して会合しており、水溶液中においてシクロデキストリンと同程度の会合定数を与えることが明らかにされている1)。この水溶性カリックスアレーンの水酸基に長鎖アルキル基を導入したものは、更に強い疎水場を形成するため、ゲスト分子に対して非常に大きな会合定数を与える。また、界面活性剤と同様の構造形態を取りながらもミセル様の会合体は形成せず単量体として存在することも大きな特長である1)
 諸角らは水溶性カリックスアレーンと光学活性な四級化アンモニウムあるいはアミノ酸誘導体の包接認識について検討している2,3)。カリックスアレーンは元来分子不斉を持たない対称性の高い化合物であるが、光学活性ゲスト分子を包接すると、その不斉に影響されカリックスアレーンの環構造に不斉が誘起される。その結果として誘起円二色スペクトルを生じ、その解析からゲスト分子のキラリティーを簡便に読み出すことも可能としている。
 ニトロ化カリックスアレーンは、スルホン化カリックスアレーンをニトロ置換することにより達成される。またそこからアミノ体を経てカチオン性の水溶性カリックスアレーンに導くことが可能であるなど、スルホン化カリックスアレーンは機能性材料開発の原料としても利用可能である。

参考文献
1)S. Shinkai, S. Mori, H. Koreishi, T. Tsubaki, O. Manabe, J. Am. Chem. Soc., 108, 2409(1986).
2)T. Morozumi, S. Shinkai, J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1994, 1219.
3)T. Morozumi, S. Shinkai, Chem. Lett., 1994, 1515.