Caged NO
Caged NO化合物 BNN 3, BNN 5 Na, BNN 5 Methyl esterは並木、藤森らによって開発された新規な光放出型NOドナーである1-4)。これらの化合物は300 nm付近に吸収を持ち、キセノンランプ、高圧水銀ランプあるいはレーザーフラッシュ光等の300〜360 nmの光によって分解し、次のスキ-ムに示したように1分子のCaged NO分子から2分子のNOを放出する。このためNO放出後に残った分子の2つのラジカルは分子内で再結合して消失する特徴を持っている。

Fig.1はTPPCoを用いて放出されたNOを捕捉した際の差のスペクトルである。TPPCoはNOを捕捉しTPPCo(NO)になるとその吸収波長が527 nmから537 nmへシフトするため、反応前後の差スペクトルでは527 nm付近は減少し537 nm付近は増加している。Fig.2はレーザーフラッシュ光分解(LFP)によって中間体2が5μ秒以内に生成し、瞬時に3へ変化していく様子と、放出されたNOによるTPPCo(NO)錯体の増大を示している。このようにBNNシリーズは従来のCaged NO5,6,7)に比べて、量子収率が高くNO放出は非常に速いため2)レーザーフラッシュ照射の場合NO放出は約20μ秒以内で終了する3)。ラットから摘出した胸部大動脈においてBNN 5 Methyl esterをロ-ドし血管収縮薬メトキサミンで収縮させたのち300nmの光照射に応答して張緩が観測されることも報告されている4)。
参考文献
1) S. Namiki, T. Arai, K. Fujimori, J. Am. Chem. Soc.,119, 3840,(1997)
2) 並木繁行、藤森 憲、日本化学会第72回春季年会予稿集、3H2 15(1996).
3) 並木繁行、新井達郎、藤森 憲、日本化学会第72回春季年会予稿集、3J1 08(1997).
4) 並木繁行、藤森 憲、粕谷善俊、後藤勝年、日本化学会第72回春季年会予稿集、1B2 07(1997).
5) S. R. Adams, R. Y. Tsien, Ann. Rev. Physiol., 55, 755(1993).
6) K. P. S. J.Murphy, J. H. Williams, N. Battache, T.V.P. Bliss, Neuropharmacol., 33, 1375,(1994).
7) L. R. Makings, R. Y. Tsien, J. Biol. Chem., 269, 6282(1994).