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亜鉛イオン測定用蛍光プローブ

 木村先生ら(広島大学医学部)によって開発されたZn2+蛍光プローブである1)。Zn2+錯体の安定度定数は、20.8±0.1である。Zn2+錯体の蛍光特性は、水溶液中で、λex = 323 nm、λem = 528 nmである。試薬自体も蛍光を有するが、その強度は比較的弱く、錯形成によって蛍光が約5倍まで増強する。

図 Dansylaminoethyl-cyclenの蛍光スペクトル。10mMHEPES(pH7.4)中、最終濃度10μMの試薬を用いて測定した。 Zn2+濃度は、各々0及び26μMであった。 Zn2+の存在により、蛍光強度が約5倍まで増強する。
 
 他のZn2+プローブと同様に、細胞内Zn2+検出の際に最も問題となるのはCd2+であり、蛍光性錯体を形成する。しかし、その錯安定度定数は19.1±0.1であり、Zn2+選択性が10倍以上高い。他の金属イオンの中にも錯体を形成するものもあるが、蛍光強度に影響を与えるものは殆ど無く、また生体内存在量を勘案するとそれらの影響は無視できると言ってよい。
 イオンと1対1錯体のみを形成することも、この試薬の特長である。従来のZn2+蛍光プローブは、1対1錯体と1対2錯体の両方を形成するためZn2+濃度変化に対する蛍光強度変化が直線的でなく、濃度の正確な測定には困難を伴っていた。5μMのDansylaminoethyl-cyclenを用い、0.1〜5μMの濃度範囲のZn2+に対して直線的に蛍光強度が変化することが確認されている。
また、水溶性であり、従来のZn2+プローブのように、DMSOやエタノールなどの有機溶媒であらかじめストック溶液を調整する必要は無い。細胞内への導入には、試薬の水溶液を細胞培養液に添加し、1時間程度インキュベートする。マウス線維芽細胞において、実際にZn2+のイメージングを行った例がある2)
 Zn2+イオンは、微量金属元素の中では非常に存在量が多く、酵素活性制御を初めとする各種細胞機能との相関が着目されている。最近では、活性酸素種によってzinc fingerのシステイン残基が修飾を受ける可能性3)や、虚血等の刺激による神経細胞の選択的細胞死とZn2+との相関4)も報告されている。今後、Zn2+イオンの動態究明に関する研究への、幅広い応用が期待される。


参考文献
1) T. Koike, T. Watanabe, S. Aoki, E. Kimura, M. Shiro, J. Am. Chem. Soc., 118, 12696(1996).
2) 木村 榮一, 小池 透, 現代化学, 316, 31(1997).
3) D. Berendji, V. Kolb-Bachofen, K. L. Meyer, O. Grapenthin, H. Weber, V. Wahn, K.-D. Kroncke, FEBS Lett., 405, 37 (1997).
4) J. Koh, S. W. Suh, B. J. Gwag, Y. Y. He, C. Y. Hsu, D. W. Cho, Science, 272, 1013(1996).

コード番号
品名
容量
価格(¥)
371-07641
Dancylaminoethyl-cyclen
5mg
10,800