DPPP
 

 過酸化脂質(ヒドロペルオキシド)は脂質を構成する不飽和脂肪酸が自動酸化され酸化第一次生成物として生成する。それらは食品の品質低下の要因として、食品化学などの分野では古くから研究されている。近年、生体内過酸化脂質の挙動が各種疾患や老化と関連づけられ非常に注目されており、生化学分野では微量過酸化脂質の正確で容易な定量法が望まれている。
 生体内過酸化脂質の定量に広く利用されているTBA法は非常に簡便かつ高感度であるが、マロンジアルデヒドに代表される酸化第二次生成物を検出・定量する物で、必ずしも脂質の酸化を正しく反映しないと指摘されている。また、イソルミノールなどを用いた化学発光検出によるHPLC分析法が報告され、ヒドロペルオキシドのピコモルレベルの選択的、高感度な分析が可能となったが、ラジカル捕捉剤の共存による発光強度の低下、ユビキノン等への応答、さらにポストラベル時の溶媒に制限があるなど種々の問題点もある。
 DPPPは、ヒドロペルオキシドに高い反応選択性を有する発蛍光分析試薬として、目黒先生(東北大学農学部)らにより開発された。DPPPはそれ自体では蛍光性ではないが、温和な条件下(メタノール中、60℃、60分)、ヒドロペルオキシドと定量的に反応し強い蛍光性のDPPP oxide (λex 352 nm,λem 380nm)を与える(Fig.1)。本法では0.1〜7nmolのヒドロペルオキシドを選択的に定量でき、公定法である過酸化物価(POV)法と非常に良く一致する。1)2)また、過酸化脂質のHPLC分離とDPPPによる検出を組み合わせたポストカラムシステムでの検出限界は1〜2pmolレベルで、化学発光検出法に匹敵する検出感度を持つ。3)-10)
 本品は結晶状態では遮光窒素雰囲気下、冷凍で2年間、常温で1年間は安定で、溶液状態では遮光冷凍で約1週間保存可能である。


参考文献

1)K.Akasaka,T.Suzuki,H.Ohrui and H.Meguro,Anal.Lett.,20,797 (1987).
2)K.Akasaka,I.Sasaki,H.Ohrui and H.Meguro,Biosci.Biotech.Biochem.,50,605 (1992).
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9)K.Akasaka,H.Ohrui and H.Meguro,Biosci.Biotech.Biochem.,58,396 (1994).
10)K.Akasaka,A.Ohata,H.Ohrui and H.Meguro,J.Chromatogr.B,665,37 (1995).

コード番号 品名 容量 価格(円)
340-07471 DPPP 10mg 8,500