新製品案内

1)10× MESA
   10× MOPS-EDTA-酢酸ナトリウム緩衝液
   0.4M MOPS,pH7.0,0.1M Sodium acetate,
   10mM EDTA

2)10× TAE
   10×トリス-酢酸-EDTA緩衝液
   0.4M Tris-acetate,pH8.3,10mM EDTA

3)10×TBE
   10× トリス-ほう酸-EDTA緩衝液
   0.89M Tris-borate,pH8.3,20mM EDTA

4)10× TPE
   10×トリス-りん酸-EDTA緩衝液
   0.8M Tris-phosphate,pH 8.0,20mM EDTA

5)10×TE
   10× トリス-EDTA緩衝液
   0.1M Tris-HCI,pH8.0, 10mM EDTA

6)10× TNE
   10× トリス-塩化ナトリウム-EDTA緩衝液
   0.1M Tris-HCI,pH 8.0,
   1.0M Sodium chloride,10mM EDTA

7)20×SSC
   0.3M Sodium citrate,3.0M Sodium chloride

8)20×SSPE
   0.2M phosphate buffer,pH 7.4,
   2.98M Sodium chloride,0.02M EDTA

9)1M Tris HCI
   pH8.00

10)0.5M EDTA
   0.5M EDTA,pH8.0


 遺伝子工学の発展に伴い、数十年前までは極めて特別なものであった核酸を用いた実験も比較的容易に出来るようになってきた。しかし、自然界には核酸を分解する酵素が多く含まれるために、通常の実験で用いるような緩衝液では、目的の核酸を分解させてしまう危険性がある。今回、弊社が提供する緩衝液は、オートクレーブ処理を行っており、核酸を分解する酵素(DNase,RNase)の検出されない緩衝液である。発売する10種の緩衝液はストック溶液であり、使用時に混合もしくは希釈する。希釈する精製水はオートクレーブしたものを使用する。

 TAE,TBE,TPEは核酸、特にDNAの電気泳動に用いる。TAEはアガロースゲル電気泳動に用いることが多く、TBE,TPEはアクリルアミドゲル電気泳動に用いることが多い。これらの電気泳動は核酸のサイズで使い分けされ、一般に1kb以上をアガロースゲル電気泳動、1kb以下をアクリルアミドゲル電気泳動を使用する。

(使用例1)DNAの電気泳動 (1kb以上)
試薬
 10× TAE
 Agarose II
 EB(Ethidium bromide)
  EBを0.5mg/mlになるように溶解させ、冷暗所で保存する。
 色素マーカー
 (0.25% bromophenol blue,0.25% xylene cyanol,30% glycerol)

方法
1.ゲルの作製
 1)目的とするDNAに適した量(下記に参照)のアガロースを入れる。
 2)10mlの10×TAEを入れ、全量100mlになるように精製水を入れる。
 3)電子レンジなどで加温し、アガロースを溶解させる。
  注 突沸する恐れがあるので注意する。また溶け残りがないことを確認する。
 4)液温が60℃程度に下がったら、0.5μg/mlになるように前もって調製したEB溶液を添加する。
 5)電気泳動ゲルの型からゲルが流れ落ちないように、テープで型の両端を貼る。
  (アガロース溶液を入れた時、漏れないようにパスツールピペットでテープと型との境目をアガロース溶液でシールする。)
 6)コームを差し、5)のシールが固化したら、アガロース溶液を型に流し込む
 7)固化したことを確認した後、コームを静かに引き抜き、テープを剥がす。

アガロース濃度と有効な分離能の得られるDNAの関係は次の通りである。


2.電気泳動
 1)電気泳動の泳動バッファーも10× TAEを用いる。10× TAE100mlを精製水で1Lにする。
 2)作製したゲルを泳動槽に装着し、泳動バッファーを流し込む。
 3)サンプルと色素マーカーを5:1の割合で混和し、ゲルのスロットに注入する。
 4)定電圧で電気泳動を実行する。
 5)色素の泳動距離を目安にし泳動を終える。
 6)DNAのバンドの確認はUVを照射して行う。

(使用例2)DNAの電気泳動(1kb以下)
試薬
 10×TBE
 アクリルアミド
 N,N'ーメチレンビスアクリルアミド
 30%アクリルアミド溶液 29gのアクリルアミドと1gのN,N'ーメチレンビスアクリルアミドを精製水100mlに溶解させ、ストック溶液として冷蔵保存する。
 過硫酸アンモニウム
 10%過硫酸アンモニウム溶液 精製水で10%溶液を調整する。用時調整が望ましい。
 EB(Ethidium bromide)溶液
  EBを0.5mg/mlになるように溶解させ、冷暗所で保存する。
 色素マーカー
  (0.25%bromophenol blue,0.25% xylene cyanol,30% glycerol)

1.ゲルの作製(12%アクリルアミドの場合)
 1)スラブ電気泳動用のガラス板を良く洗浄しておき、組み立てておく。
 2)30%アクリルアミド溶液40ml、10%過硫酸アンモニウム溶液0.5ml、10× TBE 10mlを添加し、精製水で全量100mlにする。
 3)0.5μg/mlになるように前もって製したEB溶液を添加する。
 4)TEMED15μlとを添加し、電気泳動の型に流し込む。
 5)コームを差し、固化させる。

アクリルアミド濃度と有効な分離能の得られるDNAの関係は次の通りである。

2.電気泳動
1)電気泳動の泳動バッファーも10× TBEを用いる。10×TBE 100mlを精製水で1Lにする。
2)作製したゲルを泳動槽に装着し、泳動バッファーを流し込む。
3)サンプルと色素マーカーを5:1の割合で混和し、ゲルのスロットに注入する。
4)定電圧で電気泳動を実行する。
5)色素の泳動距離を目安にし泳動を終える。
6)DNAのバンドの確認はUVを照射して行う。

 MESAはRNAの検出やサイズ決定などを行う。Northern Blottingに用いる。その他RNAの分子量決定などの電気泳動に対してもよく使用されている緩衝液である。RNAの取り扱いは特に注意深く行われるべきであり、希釈する精製水はオートクレーブしたものを使用する。また0.1%二炭酸ジエチルを添加してオートクレーブしたものはRNaseを不活性化すると言われている。以下の実施例の精製水は二炭酸ジエチル処理したものを使用する。

(使用例3)ホルムアルデヒド含有アガロースゲルを用いたRNAの電気泳動

試薬 
10×MESA
アガロース
ホルムアミド
ホルムアルデヒド
 注 ホルムアルデヒドの蒸気は毒性を有するので、取り扱いはフード内で行う。
色素マーカー
 (62.5% formamide, 1.14M formaldehyde, 0.2% xylene cyanol,0.2% bromophenol blue, 50μg/ml EB, 1.25× MESA)


方法
1.ゲルの作製
1)アガロースに68mlの精製水を添加し、電子レンジなどで加温溶解する。
2)液温が60℃程度に下がったら、10× MESAを10ml、ホルムアルデヒドを5.5ml添加する。
3)電気泳動ゲルの型からゲルが流れ落ちないように、テープで型の両端を貼る。
(アガロース溶液を入れた時、漏れないようにパスツールピペットでテープと型との境目をアガロース溶液でシールする。)
4)コームを差し、3)のシールが固化したら、アガロース溶液を型に流し込む。
5)固化したことを確認した後、コームを静かに引き抜き、テープを剥がす。

2.電気泳動
1)電気泳動の泳動バッファーも10×MESAを用いる。10×MESA 100mlと50mlのホルムアルデヒドを精製水で1Lにする。
2)作製したゲルを泳動槽に装着し、泳動バッファーを流し込む。
3)サンプルと色素マーカーを混和し、ゲルのスロットに注入する。
4)定電圧で電気泳動を実行する。
5)色素の泳動距離を目安にし泳動を終える。
6)DNAのバンドの確認はUVを照射して行う。

 SSC,SSPEはSouthern hybridizationに使用する緩衝液である。


(使用例4)サザンハイブリダイゼイション

試薬
変性用バッファー
(0.5M NaOH,1.5M NaCI)
中性バッファー
1M Tris HCI (pH8.0)500mlに塩化ナトリウム67gを添加し、1Lにメスアップし、オートクレーブする。
20× SSC
プレハイブリダイゼーションバッファー
(6× SSC,0.5% SDS,5× denhardt's,100μg/ml ssDNA)
ハイブリダイゼーションバッファー
(6× SSC,10mM EDTA, DNA prode0.5% SDS,5× denhardt's, 100μg/ml ssDNA)

方法
1.電気泳動(アガロースゲル電気泳動の場合)
使用例1に準じ、電気泳動を行う。
2.ブロッティング
1)DNAのサイズに合わせてアガロースゲルを長方形に切り出す。
ゲルの方向が分かるように1方向だけ角を落とす。
2)切り出したゲルを変性用バッファーに1時間浸す。
3)ゲルを中性バッファーに1時間浸す。
4)トレイの素焼の板の上部が液面から数mm出るように10× SSC(20× SSCを2倍希釈したもの)を入れ、ワットマン3MMペーパーを素焼の型に切って載せる。
5)アガロースゲルをワットマン3MMペーパーの中央に載せる。
6)ラップをアガロースゲルの部分を除いてトレイにかぶせる。
7)アガロースゲルの大きさに切ったニトロセルロースフィルターを2× SSC (20× SSCを
10倍希釈したもの)に浮かべ、十分に浸透させ、数分間放置する。
8)ペーパータオル、ガラス板を載せ、その上に500g程度の重りを載せ、一晩放置する。
9)ニトロセルロースフィルターを2× SSCで洗浄する。
10)ワットマン3MMペーパーの上に置き、15分間放置する。
11)80℃減圧で2時間乾燥する。
12)6× SSCで洗浄し、ニトロセルロースフィルターをヒートシールバッグに入れる。
13)プレハイブリダイゼイションバッファーを入れ、一晩インキュベートする。
14)プレハイブリダイゼイションバッファーを捨て、ハイブリダイゼイションバッファーを入れ、一晩インキュベートする。
15)ニトロセルロースフィルターを洗浄し、X線フィルムを感光させる

TE,TNEは電気泳動のゲルや動物組織、細胞よりDNAを抽出,精製するのに用いられる。このDNAの抽出,精製は、DNAライブラリー作成や、より良いSouthern hybridizationを行うためには、高純度かつ長いDNAを必要とする。しかし、長鎖のDNAは物理学的にも切断されるので取り扱いは慎重に行われるべきである。


参考文献

J.Sambrook,E.F.Fritsch,T.Maniatis,"Molecular Cloning:A Laboratory Manual",2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1989.