アルツハイマー病の発症前診断へ大きく前進 |
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-MRIでアミロイド斑の可視化に初めて成功- |
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Nature Neuroscience 3/13電子版 掲載 |
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独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)脳科学総合研究センター(甘利俊一センター長) 神経蛋白制御研究チームの西道隆臣チームリーダーと樋口真人研究員は、(株)同仁化学研究所(以下、同仁化学と略) との共同研究によって、アルツハイマー病の発症前診断に大きく前進する研究成果をあげ、その成果をNature Neuroscience に発表しました1)。 西道チームは、同仁化学と共同開発したFSB(既に同仁化学で販売中)をMRIプローブとすることにより、 アルツハイマー病発症の引き金となるアミロイドβペプチド(Aβ)が蓄積したアミロイド斑をMRIで可視化することに 世界で初めて成功しました。 人間の脳は加齢に伴ってAβが蓄積してゆきます。このAβが過剰に蓄積することがアルツハイマー病発症の原因であると考えられています。これまでは患者の死後、脳の神経病理を解析することによってしか、Aβの蓄積を確認できませんでした。脳内におけるAβの蓄積は、実際のアルツハイマー発症の数年以上前から始まっていますから、対象が生きたままの状態でこれを可視化することが出来れば、発症前診断が可能となります。 同仁化学と共同開発したFSBは、Aβが蓄積したアミロイドとの親和性が高く、アミロイド斑を蛍光として可視化できることが 確認されています2)。さらに、FSBは分子内にフッ素(19F)を含有するため、MRIのプローブとなります。 西道チームはAβが蓄積するモデルマウスを用いて、生きたマウスの脳のアミロイド斑をMRIで可視化することに成功しました。 今回はモデルマウスで得られたものですが、将来は人を対象としても可能になると期待されます。 この新しい技術を使うと、これまで出来なかった多くのことが可能となります。 たとえば、アルツハイマー病モデル動物の病理変化を生きたまま継続的に観察することが出来ますので、 新しい診断マーカーの検索が容易になります。また、治療薬候補の効果も経時的に追跡することが可能となります。 今回の研究の最終目標は、生化学的診断マーカーの同定と、MRI技術の発展によって、アルツハイマー病の発症前診断を確立することです。 アルツハイマー病は、発症した時点ですでに多くの神経細胞が死滅しており、これが不可逆的に進行して行きます。 発症前診断が可能となれば、発症潜在期にある人たちに予防的治療(脳内Aβレベルを低下させる薬剤の投与など)を施すことによって、 アルツハイマー病の患者を大幅に減少させることも夢ではありません。 *理化学研究所様のHPにも詳細が掲載されております。 こちら(http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2005/050314/index.html) もご覧ください。 1) Higuchi, M. et al., 19F- and 1H-MRI detection of amyloid-β plaques in vivo, Nature Neurosci., 8(4) in press(2005) 2) Sato, K. et al., Fluoro-substituted and 13C-labeled styrylbenzene derivatives for detecting brain amyloid plagues, Eur. J. Med. Chem., 39, 573(2004) *下記のURLでNature Neurosci.の Supplementary Information-Technical Reportがご覧になれます。 URL:http://www.nature.com/neuro/journal/vaop/ncurrent/suppinfo/nn1422_S1.html |